及川光博ひとりのビッグショー 1999

「よこしま アリーナ」 on 1999.7.17, at 横浜アリーナ

 

〜本気とは後悔しない事〜

 

 

<セットリスト>

M1:1999(プリンスのカヴァー)

M2:S.D.R

M3:今夜、桃色クラブで。

M4:名器 M5:ロリータの罠

M6:血管と白夜/1999

M7:理想論

M8:意気地なし

M9:ズキズキ

M10:可能(芥川龍之介の詩の朗読)

M11:僕のゼリー

M12:モラリティー

M13:三日月姫

M14:求めすぎてる?僕。

EC1:死んでもいい

EC2:悲しみロケット2号

EC3:ペンフレンド

EC4:バラ色の人生

EC5:SNOW KISS(ア・カペラで少し)

 

<メンバー>

モンテカルロス(メンバー構成については、「私がおじさんになっても」ツアーレポート参照)、

DJ KOJI、レインボーハニーズ、セイントイレブン

<ゲスト>

宍戸留美、YAGGY(前ツアーまでのミッチーバンド「マングース」のメンバー。ギター担当。)

 

 

 

1.はじめに

 

おととしから毎年夏に行われている、「ひとりのビッグショー」が、7月17日、横浜アリーナで行われた。2年連続、野外で催されていたこの企画。今回は、ミッチーにとって初の、横浜アリーナでの公演。年に1度のイベント的コンサート。一体どんなショーになるのか、わくわくドキドキで、会場に足を運んだ。

 

会場のある新横浜駅。駅には、ベイベーと思われる人達があふれかえっていた。駅ビルを通りすぎ、外に出た瞬間、ダフ屋に遭遇。これはすごいなぁと思った。確かに、本公演も、すぐにチケットは完売していた。それだけにダフ屋も、多数出現ということだろう。会場につくと、入場するための人垣が!中に入るのに時間がかかった。会場に入り、真っ先に、グッズ売り場へ向かった。限定グッズが出ていないか確認したかったからだ。グッズ売り場も、ベイベー達で埋め尽くされていた。今回の新商品は、ミッチーの写真付きTシャツ、バックにバラをあしらったTシャツ、サイリュウム付きハート型うちわ(ちなみにこのサイリュウム。場内では、演出に一役買っていて、とても幻想的な空間を作っていた)。Tシャツにもひかれたが、うちわだけ購入。とっても麗しいミッチーの表情が「ドーン」と写っている。

 

開演予定時間も近くなり、席についた。今回の席は、まあ、割とステージには近かった。ミッチーお得意の花道が作られ、大型スクリーンが、中央と左右に設置。場内は、立ち見ベイベーも含め、12千人のベイベー達でうめ尽くされていた。夏ということもあり、浴衣姿もちらほら。勿論、露出度大のベイベーも多数。

 

 

2.DJ&及川光博HISTORY〜秘蔵写真にくぎづけ!〜

 

場内が暗くなり、DJが始まった。いつもと違うオープニングに驚いた。DJ KOJI氏の巧みな手さばきが繰り広げられる。10分近くあっただろうか。DJタイムが終わり、「さぁ、ここでミッチー登場か!」と思った矢先、3台の大型スクリーンに、「及川光博HISTORY」という文字が浮かび上がった。これだけで、客席のあちらこちらから笑い声が。さて、内容は…。ミッチーの生い立ちを写真で紹介。ミッチー誕生から、現在に至るまでのフル内容。結婚式の披露宴でも見かけるようなものだ。赤ちゃん時代、小学校時代、中学校時代、高校時代等の写真が映し出される。写真には、「演劇部スター」、「ハーレム修学旅行」、「はじめてのプリクラ」などのタイトルがついていた。音楽活動時代に入ってからは、写真のみならず、ビデオも少しづつ流れた。個人的に嬉しかったのは、「赤坂BLITZ4days」での映像。ミッチーのドラえもん姿が見たかったので、欲望がここでかなった。そして、画面に「1999.7.17。今夜一夜限りの王子復活!」と出ると、ステージ準備をしているミッチーが、生中継で画面に登場。場内からはさらに歓声が!ミッチーのメイク風景、衣装をまとう風景がそこにはあった。廊下に、画面が切り替わると、ミッチーは赤いじゅうたんの上を華麗に歩き出す。まさに、一夜限りの王子復活という風景だろう。時折カメラに微笑みかけながら、ステージに向かうミッチー。場内には、「待ってました!早く登場して!」という気持ちがこもっているような、歓声があふれかえった。

 

 

3.本編紹介〜静と動のメリハリ〜

 

さていよいよ、ミッチー登場!登場すると、間髪いれずに、プリンスの「1999」を熱唱。プリンス好きのミッチー。1曲目の選曲に驚きを持った私。DJや映像といい、今回は本当に初めから驚きの連発だ。続いて、また驚きの選曲。たいていの場合において、後半に組みこまれることの多い、「S.D.R」。「いきなりこれなの?」と思いつつ、最初から、「盛り上がっちゃうぞ〜!!」という構成で、場内もノリノリ。定番の、間奏部分での振りつけにおいては、上手く言葉で表現できないので割愛。ミッチーいわく「アジアよ〜」ということらしい。

 

この曲の後、長めのMC。客席の隅々まで声をかけるミッチー。そして、「ひとりの!(ミッチー)」、「ビッグショー!(客席)」という、おなじみコールも行う。

 

「名器」は、ツアーで聴いているより、よりエッチさを感じた。「今夜〜」のつながりでこの曲を持ってくるあたり、にくい構成。「今夜〜」は、初めて彼女を家に呼び、どきどきしつつエッチに至ってしまうという曲。「名器」は、いわゆる、ひとりエッチの世界。一夜の出来事を想像して、妄想にふけるという意味合いに取れる(あ〜なんかエッチな内容だ…)。

 

その後も演奏が続く。久々に生で聴いた「理想論」。「血管〜」と上手くつながるようなアレンジで、とても良かった。この曲は好きな曲の1つなので、久しぶりに生で聴く事ができて嬉しかった。

 

続いて、第2回目MCコーナー。ここで、ミッチーはベイベー達を座らせ、アルバム「欲望図鑑」が、9位に入ったことや、堺正章氏に、「天狗になりなさい」と言われたことを話していた。ミッチーは、「高飛車にはなれるけど、天狗にはなれない。」と言っていた。性格的に無理と付け加えて。ただこの天狗という意味。堺氏によると、「天狗になって、堕ちなさい。堕ちて這い上がることができたら、それは本物だ。」ということらしいのだ。果たしてミッチーは、今後天狗になることができるのだろうか。

 

MCの後は、聴かせる曲のコーナー。最新アルバム「欲望図鑑」より、「意気地なし」と「ズキズキ」。どちらも、大好きな曲で、じっくりと堪能。「意気地なし」は、アルバム以上にJAZZの雰囲気が出ていたと思う。ひろりーのピアノがすごく良かった。「ズキズキ」は切ない男心を歌った曲。ミッチーの声が胸に響く。その声と、スクリーンで映し出された映像が、非常に合っていた。ステージの状況を様々な角度から捉え、スクリーンに映し出しているが、この「ズキズキ」では、映像を白黒にし、古い映画を見ているような雰囲気を醸し出していた。ミッチーの表情アップの映像と、全身映像を混在させたりと、とても凝った映像で、細部までのこだわりがあった。12千人のお客さん達が静まり返って、聴きいった時間。静と動がはっきりする瞬間でもある。この静まり返った雰囲気の中、「せっかく静まり返っているので、詩を朗読します。盛り上がっているだけが、ミッチーじゃないぞ。」とミッチー。「欲望図鑑」にも収録されている、「可能」を朗読。読み終えて本を閉じる音まで、客席に届く。それほど静まり返った場内だった。

 

この静まり返った場内を、一転するかのように「僕の〜」のイントロがかかる。中央スクリーン付近に、2枚の影を映し出すスクリーンが。曲に合わせて動く影が、エロティックに浮かび上がる。女性2名(1名はりえベイベーか?)での絡み。本当に、エロスの世界だった。続いて、「理想論」同様に久々の、「モラリティー」。非常に凝った映像に、興味があった。ステージを観たり、スクリーンを観たりと、私の目は動きっぱなし。スクリーンでの映像は、プロモーションビデオの映像と、たった今歌っているミッチーの混在。すごくいいタイミングで、映像が切り替わっていて、とても見ごたえあり。要所要所に、スクリーン上に歌詞が登場。歌詞がスクリーンに浮かぶことで、「何がいいたいことなのか」というのが、はっきりと分かる。「踊っていただけますか?」で始まる、「三日月姫」。ダンサー達は、メイドさん衣装で踊る。この曲は本当に盛り上がる。そのまま、ノンストップで、本編ラストの「求め〜」。ダンサーの衣装が、カルメンの衣装で、すごく目を引いた。そしてなんといっても、こぶし付きで、「たそがれ〜♪」と言うミッチーも印象的。やはり横浜というと、五木ひろしの「横浜たそがれ」なのだろうか。

 

 

4.アンコールその1〜等身大立て看板勢揃い!蘭ちゃん登場!ゲスト出演!重大発表!〜

 

ミッチーチャチャチャコールがしばらく続き、蘭ちゃんこと、花椿蘭丸君登場。はっきりいって、蘭ちゃんの衣装はものすごかった。頭を取り囲む様に、羽が!孔雀の様だ。そして「ミッチーさんに頼まれて…」と告げ、等身大ミッチー立て看板が、ステージの階段に全て並べられた(ミッチーはCDを発売する時に、宣伝用に立て看板も作る)。そして、毎年行われる重大発表コーナー。去年は「王子引退」。さて今年は?というと、「ハリウッド映画進出!エピソード2がだめなら、3。それがだめなら…っていいじゃないの。夢はどんなことでもいいんだ!30代の夢はハリウッド映画進出です!」ときっぱり言いきったミッチー。なんでも、「30代がんばるぞ!」ということらしい。さて、重大発表の後、宍戸留美氏登場。彼女は、るみっちーといって、「悲しみロケット2号」でも登場している。るみっちー登場で、「死んでもいい」。おなじみ、「死んでも!(ミッチー)」、「いい!(客席)」のやり取りで、軽快にスタート。ダンサーも勢揃いで、ステージ一杯に広がったダンサー達が、軽快にポンポンを振っていた。勿論、客席も負けず劣らず。色とりどりのポンポンがゆれていた。ラストフレーズに入る前には、金銀のテープが、センター席の数カ所から上に打上げられ、大いに盛り上がった。

 

この曲の後、ミッチーは「なんか、12千人みんなで打上げやりたいね。ビール飲みたい!全員分僕が出しちゃう!」と一言。ミッチー自身が非常に楽しんでいるからこそ、出た言葉だろう。ぜひともミッチーとビールなんぞ飲んでみたい。そして、るみっちーの他に、YAGGYが登場!YAGGYの登場に、場内から大歓声。実はこの2人。昨日急遽呼ぶことになったらしい。「悲しみ〜」は、この2人を交えて演奏。間奏部分でのおなじみ、名前シリーズのコール&レスポンス。るみっちーの「ししど」コール、YAGGYコール、そして、お客さんの男子「なおき」コールと、ステージから一番遠いベイベーの名前。ミッチーはベイベーに「大きな声で名前いって!」といったが、やはり届かない。そこで、「じゃあ伝言ゲームで僕まで伝えて!」といった瞬間、そのベイベーの周りにいた人達が一斉に、名前をコール!その波が、場内に広がる。ミッチーは「すごい!!」と一言。自然発生的なこの現象。私自身、本当にすごいと思った。この瞬間、12千人のお客さんとステージが一体感につつまれた。そのベイベーの名前は、「みやこ」。みんなで、「みやこ」コールを繰り返した。曲終盤、12千人の「ミッチーの!」に、大満足のミッチー。再び、メンバーはステージを去る。そして、客席からは、2度目の「ミッチーチャチャチャ」が発生。

 

5.アンコールその2〜「本気とは?」の問いに対する回答、そして、急遽披露のア・カペラ〜

 

「バラ色の人生」のプロモーションビデオでも着ている、タキシード姿でミッチー登場。生で観るとより一段と麗しい。タキシードが本当によく似合う。プロモーションビデオ撮影時に、ブロードウェイダンサーが感嘆の声をあげたのも納得できる。

 

ミッチーは登場して、現在行っている「私がおじさんになっても」ツアーの、NHKホール2日目で出た、宿題(「本気で好き」ってよく言うけど、この「本気」というのはどういう意味なのか。よこしまアリーナまでの宿題となっていた)に対する回答を発表。「あの時は、陳腐な回答しか出来なくて。」と前置きをして、「本気で好き、本気でむかつく、本気で○○ってよく言うけど、本気って一体どんなこと?っていうことなんだけど。じっくり考えて出た結論。これはあくまでも僕個人のものだけど。「本気」とは「後悔しない事」だと思う。」とミッチー。この答えに、うなづいた人も多いと思う。私自身も「なるほどな〜」と感じた。何かに対して自分が本気で行動した場合、確かにその結果がいかに悪くても、「本気でぶつかったんだから後悔しない。」と思うだろう。宿題に対して、約束通りに回答を持ってきたミッチー。そして、私自身が、「そうだよな」と思う回答を持ってきたミッチー。こういう、ミッチーがやはり好きだ。ミッチーはやはり、真面目な人物だ。

 

宿題の回答をした後、「ペンフレンド」を感情込めて歌う。アレンジは、ツアーと同じ。高音部がとても苦しそうで、声のコンディションが悪いんだなと感じたが、その苦しそうなフレーズを、数回ほど繰り返して歌った。なんだかとても、ぐっときて、ツアーの時より心に響いた。「みんなで歌おう!」と後半部、バンドが入ってくるサビをお客さんにマイクを向けて、一体となった瞬間。とても、いい一時だった。その後、タキシードをまとったダンサー達が登場し、「バラ色〜」。無条件にハッピーな気分になれるこの曲。なかなか覚えられない振りつけでも、一緒になって踊るのが楽しい。

 

曲が終わると、大きな拍手がステージに送られた。ミッチーは、「もうこれでおわりです。有難う!」と一言。それに対して「え〜!!」と客席。「もう動けないよ。」と、精一杯ステージをやり遂げたミッチー。すると突然、「くちづけ〜はいつ〜で〜も♪」と、「SNOW KISS」をア・カペラで、歌い出した。これは本当に、予定外のことだったようだ。ミッチーの声に合わせるように、ひろりーのピアノが入ってくる。感情のままに、歌うミッチー。そして、途中途中で、自分の呼吸を整え、ワンフレーズ歌った。スクリーンに映し出されるミッチーの表情。そして耳に届く歌声。あまりのすばらしさに、感動せずにはいられなかった。本気で感謝の気持ちを込めている、雰囲気が伝わった。最後に、最高のプレゼントをもらった気分。

 

ミッチーからの最高のプレゼントの後、メンバー紹介。まずは、ダンサー達の紹介から。若い集団の、「レインボーハニーズ」、そして、「バラ色〜」で華麗な踊りを見せてくれる「セイントイレブン」。ダンサー達がステージを去り、「モンテカルロス」と、DJ KOJI、るみっちー、YAGGY。一言づつ言葉を客席に述べた。中でも印象的なのは、フェロモン放出のりえベイベーが発した、「みんなフェロモン出てるじゃ〜ん」だった。これには、思わず笑ってしまった。メンバーは、深々とお辞儀をしてステージを去った。

 

ミッチーだけになったステージ。「本気で今日は有難う。今日はお分かりの通り、バッドコンディションでごめんなさい。僕は若い時は、自分のことを世界で一番器用な人間だと思っていた。でも、年をとるごとに、不器用な人間だと思うようになってきた。」と告げた。そして、ステージの隅から隅、花道の奥まで移動して、客席全員に向かって挨拶。花道そばのベイベーの手に、キスをしたり、客席から、うちわをもらったり、ベイベーからバラを受け取って口にくわえたり(これが本当に似合う)と、長い間客席に感謝の意を表していた。そして、ステージ中央の階段を上り、ステージ後方で、客席に向かって大きく手を振り、最後の挨拶をし、ミッチーはステージを去った。

 

ミッチーが去った後も、なんと凝った演出が。スクリーンには、ステージ裏での様子が映し出されていた。メンバーがミッチーに大きな拍手を送っている。スクリーンに映るミッチーはじめ、メンバー達の笑顔が美しい。チェホフをカメラ越しに、客席に紹介するミッチー。チェホフは、「Fin」と書かれた画用紙を、カメラに向けた(最初上下逆さで、慌てて持ち返すチェホフ。笑いを取っていた彼だった)。そして、「Fin」という文字がアップになり、ハートマークで文字が囲まれ、映像が消えた。その瞬間に、客席から大きな拍手が起きて、年1回の大イベントに幕を閉じた。

 

 

6.さいごに

 

外に出ると、撮影用のカメラが。そのカメラに向かって、コメントを述べてきた私。いろいろな人達を、撮影していた。そういえば、会場内にもカメラクレーンがあったので、もしかしたら、後にビデオ制作を考えているかもしれない。

 

今回のビッグショー。内容は本当に充実していた。人と同じことではなく、自分にしかできないことをやりたい、常に新しいことをやりたいと言いつづけているミッチー。それを見事に、見せつけられた内容だった。DJで始まり、ミッチーの生い立ち、楽屋からステージまでの道のり、ステージ終了後の様子を客席に見せる映像。本当に驚きの連発。最後に歌った「SNOW KISS」も印象が強く、客席が一体となったコール&レスポンス。どれも印象的。ミッチーが力の限りやりつくしたといのも、最後の「もう動けないよ」という言葉で感じとれる。本気でやり尽くしたミッチー。笑顔もとてもすばらしく、客席へのたくさんのラブが、そこにはあった。スクリーンを利用した観せ方は、とても良かった。なかなか間近で生ミッチーを体験することができないので、歌っている表情を今回初めてよく見ることができた。また、後ろ側からの映像もあって、ファンにとっては嬉しい限り。

 

そういえば、本公演は、私にとって記念すべき生ミッチー10本目。気がついたら、2桁突入になっていた。次の生ミッチーは一体いつのことか分からないが、また会えることを楽しみにしている。