光田健一公開レコーディング
at 三郷市文化会館小ホール on 2000.11.16
〜固唾を飲みこむ異空間体験〜
<公開中のレコーディング曲> |
1:THANK SONG 2:里の秋 3:A HAPPY NEW YEAR 4:若者たち 5:子供と大人 6:HE 7:かえる 8:1998 9:The September Song 10:SAME NAME、ANOTHER GIRL 11:空が好きだった君に 12:冬の星座 13:ありがとね |
◆ はじめに
初の試みの、公開レコーディング。チケットは、電話予約で入手。思いのほか、チケットの電話は7分程度でつながり、参加できる事に。お土産CDも楽しみだったし、レコーディング風景を、生で観るという初体験も、楽しみだった。会社は、この日は休めないので(1週間前に休みを取る必要があったため)、遅刻覚悟での参加。「入退場自由」の文字が、参加を決めた要因。
◆ 当日の個人行動
当日、三郷駅から近い場所に、直行で向かう(勿論仕事)。武蔵野線で、三郷駅を通過する。「健ちゃんは、もう入っているのだろうか」と、思った。「午後なら都合がもっと良かったのにな」と、当然のごとく思ってはいたが、仕事なので仕方ない。そこでの仕事を終え、その足で、大宮に向かう。もう1件、客先に向かう。お昼も挟んでいたので、大宮での用事は、3時ちょっと過ぎに終わる。ここで悩む。「さて、このまま御茶ノ水の会社に行くか、どうするか」と。用事があるので、5時に上がると宣言してはいた。今戻っても、仕事するほど時間は余っていないし、今仕事を終えると、早退扱い(この場合、有休処理にしないと、賞与時は、欠勤で計算されてしまう…)。コアタイム完了まであと数十分。かといってそれまで、電話を掛けずに、帰りますというのも、なんかねぇと葛藤。結論としては、有休処理でも良いから、帰ってしまおう!で、三郷に出向く決意。そもそも、御茶ノ水まで行くのなんて面倒くさい。ここから三郷に向かえば、予定よりだいぶ早く着くし。ということで、「用事の都合上、帰ります」と、電話をいれて、お茶を飲んでから三郷へ(すぐ行っても良かったんだけど、どうしても暖かい飲み物を飲みたかったので、ドトールに吸い込まれてしまった)。
三郷駅から、会場に向かう。地図を見ての私の目印は、「早稲田公園」。その為、「早稲田公園入り口」の、信号で左に曲がる。が、ちょっと歩いても会館が無いので、「おかしい」と思い、団地のお子様連れの女性に、尋ねる。どうやら、曲がるところが早かったようだ。団地内を突っ切って、早稲田公園内を通りぬける。17:00頃といえども、既に暗い。この公園、夜歩いたら危険…と思いながら、歩く。しばらくすると、光が…。「あれだ!」と確信を持ち、光を目指す。会館は、右半分側しか電気がついていなかった。
◆ 三郷市文化会館に着いて
会館のエントランスに入る。どれが小ホールなんだ?と思い、ちょっとうろちょろ。入った正面が、小ホールという事に気付く。入り口には、「光田健一公開レコーディング」と、書かれていた。そして、扉には、「締切」と書かれた紙が貼ってあった。「う〜ん、録音中だから入れないのか。きっと合間には、あの扉が開くんだろうなぁ」と思い、くそ寒いエントランスでしばらく待つ。「入退場自由という割には、私以外、このレコーディング目的の人が、外にいないのは何故?」と、ちょっと不安。小ホールと思われる、扉を他にも探すも、見つけた扉には、「関係者以外立ち入り禁止」の文字。ここで、より不安が漂う。「もしや、実は、入退場自由じゃなくなった?ある程度の時間が決められている?あれ?このまま入れない?」と。まさに、どうしよう状態に置かれた私…。寒いし…。とりあえず、再度正面の扉に目を向ける。やはり、「締切」。ここで、扉のそばに近寄るか…と思い、近づく。そうすると、扉は3枚あったらしく、ちょうどエントランスから死角になっていた1枚の扉に、「入口」と書かれた紙が…。「なんだよ〜」扉の中がすぐ、会場ではないのね…と思った私。すっかり、最初に見えた、「締切」の文字で、思いこんでしまっていたのだ。多分この時点で、そばに寄らなければ、私の入場はもっとずっと後だったかな…。といっても、そんなに長い時間、エントランスにいたわけではないのだ。ただ、寂しいエントランスで寒かったので、体感時間が長かっただけ。実質は、10分くらいなのかな?
入り口の扉を開けると、見慣れたジェントルハーツの山口さん。チケットを切ってもらい、CDを受け取り(来られなくなってしまった友人の分も合わせて)、一緒に渡された注意事項を読む。中のロビーで、待っている人が何人か…。「もしかして、勘違いヤローは自分だけ?」と、思ってしまう。録音中につき、しばし、ロビーで待つ。
◆ レコーディング風景
ホールの扉の向こうから聞えてくるのは、「A HAPPY NEW YEAR」。実は、しばらく、この曲タイトルなんだっけ?と考えてしまった。何度も何度も同じフレーズを繰り返す。扉1つ隔てた場所にいても、緊張感が伝わりそう。納得いくまで何度も繰り返している様子が、伺える。時折、クラシック曲を奏でる、ピアノの音が。気分転換だろうか。はたまた指ならしだろうか…。ロビーでしばらく待つと、扉が開いた。
ホールの中に入り、ようやく友人たちと合流。今回の席は、後ろから数えた方が、早い列である事は間違いないが、位置的には程よい場所。ある種の休憩時間だろうか。私が会場に入った時には、「緊張感」は、漂っていなかった。
健ちゃんはというと、休憩中に、ステージにいたかどうかは覚えていないが、しばらくして、高級グランドピアノ、「ニューヨーク・スタンウェイ」(なんと推定、1500万円もするらしい)の前に座り、再始動の姿勢。気合を入れつつ、「A HAPPY NEW YEAR」。おそらく、この曲、結構時間をかけて録っている様だ。ピアノ、声と、納得いくまで、同じフレーズを繰り返す。そして、時折、クラシックの曲。私の好きな、「主よ人の望みよ喜びを」を、弾いてくれた。嬉しかったな。まあ、短いフレーズのみだったけど。以前、インストアライブで、これを弾いた事もあるようで、その情報を会報で見た時に、「いいな〜羨ましい…」と思っていて、やっとちょっと念願かなった。繰り返し繰り返し、納得行くまで演奏する健ちゃん。ようやく、この曲のプレイバック(録音したものを再生)。
プレイバック中は、ステージ上を行ったり来たり、ちょっと客席に話しかけてみたりと、緊張感をほぐしている健ちゃん。客席も実は、緊張から解かれている時だったりする。そう、実は、客席も固唾を飲みこみながら、見守っている状況。拍手したくても出来ない空間なのだ。まあ、レコーディングなので、全くいつもと違う雰囲気が、客席にも漂っている。
「若者たち」は、「「若者たち」やっていい?」と、客席に問いかけて演奏をはじめた。さらっと1回演奏して、キーをあげたバージョンも、演奏。ちょうど良いキーを捜しながら、演奏開始。ちなみに、合唱曲にもなっているこの曲。頭の中で、コーラスを付けてしまったのは、私だけだろうか。
「子供と大人」は、「お!なんか良い感じ!」と、1回目に思ったものの、どうやら歌詞を間違えたらしい(たしかこの曲だったと思う)。健ちゃんも、「良かったのに〜1箇所間違えた…意味通じないよねぇ」と悔しそう。その後、この曲で、はまって行く健ちゃん…。結局この曲は、「う〜ん。いいか。昨日もやったし…」という具合になった。
ここでかな?休憩時間があったのは(「若者たち」の後かも知れないけど)。この時間、ロビーに出ていると、ビデオインタビューを、やっていた(ひっそりとなのか、目立っていたのかは知らない)。まあインタビューはされなかったけど、されていた人はちょっと照れ気味。ちなみに、今回のこの模様は、ビデオ部隊が入っていた。どうやらメモリアルで、ビデオ撮りということらしい。公開レコーディングの模様を、記録している様だ。
再び、場内に入る。そして、先ほどからずっと続いている空気が、戻る。健ちゃんの演奏が始まると、固唾を飲む雰囲気。健ちゃんの緊張感、客席の緊張感。ある意味、1つの空間であるが、ステージと客席が、異空間であるかのような錯覚にも陥る。音は生なのに、ステージ上の出来事が、テレビの画面や映画のスクリーンを見ているようだった。コンサートでは、めったに感じないであろう、雰囲気。
「HE」は、録音予定曲の書かれた、ホワイトボードにタイトル付け加えてから、演奏に入ったかと思う。
「かえる」が始まったのは、19:00を回った頃だと思う。ちょっと時間を気にしてきた感じの健ちゃん。エンジニアさんに、「自由な感じで良いですね」と言われる健ちゃん。「さ、皆自由にしていいよ〜」と、若干、力が抜けたような健ちゃん。若干緩和の模様。
「自由とか言っておきながら、ちょっと重い曲やっちゃおう」と、始まった、「1998」。「自由に…」と言われも、そんなことは、出来るわけもなく、曲と同時に、独特の雰囲気に飲みこまれる、場内。そして、「The September Song」。
「SAME NAME,ANOTHER GIRL」は、勿論新曲。新曲は、やはり緊張気味。
「意外な曲やっちゃおうかなぁ」と、健ちゃん。イントロ、どうも思うように行かず、「意外なイントロにしちゃえ」と、イントロを奏でる。「空が好きだった君に」だ。終わった後、「びっくりしちゃったな」と健ちゃん(なんでだっけ?覚えてないけど)そして、時間は刻々と、20:00に向かう。
「どうしようか?なにやろうか。時間もあれだね。8時に終わんないといけないんだよね?」と、健ちゃん。エンジニアさんから、「冬の星座」と、声が入る。「新曲かぁ。はまっちゃうパターンが多いんだけど…」ということで、この曲を演奏。「お!」と思っていると、納得のいかない健ちゃん。確か、「Bメロが上手くいかない…」と言っていたような?表現の仕方に納得行かなかったよう。強弱の着け方がどうのこうのと言っていたし。エンジニアさんは、「そうですか?こっちでは良い感じですよ」と、言っていた。「なんか切羽詰ってきたんだけど。時間もだけどさぁ(笑)」(この時既に、20:00)。「まあ、いいや。もう1回やって、だめだったらそこで演奏止める」と言い、再度演奏。最後まで、演奏しきる。
「じゃあ、最後にもう1曲」と、「ありがとね」。実はこれは、最後にやるかなぁと、ちょっと思っていた。健ちゃんの、嬉しそうな顔。実際に、お客さん付きでのレコーディングは、どうだったのか。健ちゃんの笑顔が、その解答なのかな。最後の1曲は、ようやく、拍手が出来る状況。「気をつけて帰ってね!解散!今からピアノ解体します!」と、にこやかな健ちゃん。なんと、スタレビで定番の、「めぐり逢い」をピアノで弾いてくれる。20:15頃、全終了。
◆ さいごに
2時間ほど遅れて、三郷入り。ひょっとしたらライブが出来るかも?と、告知にはあったが、予想通り、ライブは無し。ただ、とても普通には体験できない事が出来たと思う。
この空間は、緊張と弛緩の両極面を持ち合わせた不思議な雰囲気だった。健ちゃんの、緊張と、安堵の表情。お客さんの、緊張。そんなとても不思議な空間。正直、参加出来て良かった。健ちゃん自身は、どう感じたのだろう。誰もいない方が、良いと思った時もあるのではなかろうかとも、思ってみたり。
髪の毛をかきむしりながら、演奏を続ける健ちゃん。納得行くまで続ける、集中力。物凄いなと思った。気迫も含めて。演奏の合間に見せる、緊張から解けた、健ちゃんのホッとした表情。客席に話しかけたり、水を飲んだり。そういえば、「冬の星座」の時は、「星座といっても、こうじゃないですよ」と、いすの上に正座したりと、笑いを誘う一面も(「こんなことすると思ってなかったでしょ〜。でもやるんだよ」というようなことを言っていたと思う)。
エンジニアさんとのやりとりも、そのまま聞こえるので、そのやり取りも面白みの1つ。時折、笑いを誘うようなやり取りもあって、楽しかった。
休憩中には、ロビーでのインタビューの他、ステージから客席の写真を撮ったりもしていた。
私が、見る事が出来たのは、「A HAPPY NEW YEAR」の収録途中からだが、この曲の前の、公開中のレコーディング曲目は、友人から聞いたもの。
今思えば、健ちゃんとファンの信頼関係の間に成り立った企画だと思う。これがなければ、健ちゃんは、企画を立案しなかったと思う。健ちゃんの頭の中には、ファンの人達は、きっと自分の意向をわかってくれて、様々なお願い事も必ず守ってくれるに違いないという、ある種の自信があったのではないだろうか。参加出来た人も、出来なかった人も、「成功して欲しい」という願いは、一緒だったと思う。もちろん、演奏者である健ちゃんを始め、健ちゃんを支えるスタッフの方々も、その思いは一緒だったはず。健ちゃんを中心とした輪は、とても良い円(縁)を、築けているのではないだろうか。今回の企画の成功が、それを物語っていると思う。お互いの信頼関係こそが、大きな問題も起きずに、無事に、企画を遂行出来た要因だと思う。(「成功」と言っているが、私の頭の中では、成功した企画だと思っている。思ったように出来なかったとか、あるかもしれないので、健ちゃんの中では、どうなのかはわからないけど…。)
お土産CDも不思議な雰囲気。単に、曲だけではなく、ピアノの弾き直しやら、話声、譜面をパラパラめくる音も入っていて、ピアノの前にいる健ちゃんがイメージ出来る作り。聴き応え十分。これだけでも、とてもお得感満載。
この企画は、この後もあるのかどうか分からないけど、本当に貴重な経験が出来た。きっと、レコーディングというものは、誰もがあのような、緊張と緩和を繰り返した中でやっているんだろうなぁと、感じた時間だった。