中学校生活も残るところあとわずかまできた。中学三年生の残り一ヶ月というのは、イベントの目白押しである。映画鑑賞、スポーツ大会、そして卒業遠足である。 私達の学校は、卒業遠足で八景島シーパラダイスに行く予定であった。ディズニーランドという噂もあったので、初めてシーパラと聞いた時は多少がっかりしたが、遊園地に水族館もくっついているという、一口で二度おいしいということで私達は了解した。 また、シーパラには多くのレストランがあり、班ごとに分かれて自由に食べていいということだった。これはなかなか有難い。学校から配られたパンフレットを見て、どこで食べるかを検討した。ちなみに私の班はお気楽メンバーで、乗り物に乗る気はさらさらなく、どのような過程で飯を食うか?それだけを考えつづけた。 長い話し合いの結果、「福寿」という名の焼肉食べ放題の店で食べることにした。するとすかさず班員の一人、まさかず君が「俺、タッパー持ってく」と言い出したのである。 シーパラに着くと、私達は真っ先に福寿に向かった。十時頃だろうか。福寿の扉を開けたのだが、店長らしき人に「まだやってません」と言われた。普通に考えれば当たり前である。約一時間半の時間をペリカンを眺めながらすごした。その間にお土産なども買っておいた。なかなか効率がいい時間の過ごし方である。そして昼ご飯の時間となった。 店に入ると、私達の他に人はいない。開店直後に入ったので当然ではあるが。しかし店の人はどうやら一人しかいないようだ。ちなみにその人は2丁拳銃の気持ち悪いほうに似ていた。 早速焼肉をいただく。非常においしい。 するといきなりまさかず君がカバンの中からタッパーを取り出した。班員全員が驚いた。まさか本当に持ってくるとは・・・。すると彼は「ちょっと見張ってて」と言い、物凄い速さで肉をタッパーにつめこんだのだ。肉は大皿一枚の上に大量に重ねられていたのだが、あっという間におかわりとなった。店長さんもさぞ驚いたことだろう。 話は少し戻るが、まさかず君は焼肉をよりおいしく食べるため、ブラブラしている時間に塩を買ったのだ。それを肉に振って食べていたのだが、あまりいい顔をしていない。どうしたの?と聞くと、なんかおいしくない、と答えた。なのでその塩を見てみると、味の素であった。そりゃあ、おいしくはないよね。 そして彼は肉入りのタッパーをカバンに詰め、福寿を後にした。福寿さん、ごめんなさい。 その後、彼の肉入りタッパーは小さな穴から汁が漏れ、カバンが臭くなった。 彼は卒業文集の寄せ書きにこう書いた。 |