地獄の給食

脅威的な権力を持つ担任の前に、二人の戦士が挑戦状をたたき出した・・・

 給食。なんていい響きだろうか。給食のおばさん達によって作られた給食は、給食当番という名の生徒達によってよそられる。彼らは自分達の給食を大盛りにできるという特権を持っているばかりか、嫌いな奴の給食に大量のタバスコをかけることだってできる。まさに至福の時間。

だが人生そんなに甘くない。給食を一口でも残そうものなら担任の雷が落ちる。「世の中には食べたくても食べれない人達がいるのよ!」とマニュアル通りのセリフから始まり、食べ終わるまでその生徒を監視する。監獄である。そんな担任に挑戦状を出した二人がいた・・・

一人目は「浅ちゃん」という少年である。彼は非常に頭がよく、現在有名私立校に通っている。しかし彼のイメージは優等生というより史上最悪の悪ガキである。
二人目は「星也」という少年である。彼は勉強ができないまた、落ちているものを拾い上げ、自分のカバンに入れるという習性を持っている。ちなみにこの二人はこれからも活躍すると思われるので、名前はよく覚えていてほしい。

さて話を戻そう。ある日、給食にものすごいデザートが出た。マンゴーである。珍しいデザートにざわつく教室。どんな味がするのだろうか・・・?興味津々でマンゴーにかじりつく・・・

「まずっ!!」
なんか裏切られた気分になった。教室中に怒りの声が飛び交う。そこへ信じられない担任の一言が発せられた。「残さないでね。」

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浅ちゃんはその言葉を聞き俺にこう言った。 「便所に捨ててくる」と。しかし給食中に便所に行く時は担任に断わってからでないと駄目というルールがあった。今考えるとものすごいルールである。 そして彼はマンゴーを手で隠し持ち、立ちあがった。
 「トイレ行っていいですか?」 うなずく担任。教室に緊張が走る。・・・次の瞬間!
「ちょっと!何持ってんの!?」
ばれた。浅ちゃんは手に持っていたマンゴーを差し出し、二度怒られた。だが彼が怒られている間にみんな急いでマンゴーを捨てたのだ。彼はクラスの犠牲になったのだった。
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星也に好き嫌いはなかった。魚も食べるし野菜も食べる。彼にとっては給食の時間担任に怒られることなどあり得ないことだった。
給食にはスープがよく出る。一応スプーンがあるのだが、面倒なのでみんな直接飲んでいた。星也も例外ではなかった。

あくる日の給食、星也がスープを飲んでいると、急に咳きこみ出した。いわゆる気管に入った、というやつである。だが次の瞬間、おびただしい量の鼻水が彼のスープの中に投入されたのだ。
目撃したのは自分と浅ちゃんだった。初めは腹を抱えて爆笑したが、本人を見ると深刻そうな顔をしていたのでどう対処するか真剣に考えることに。しかし考えつく前に担任がやってきた。
「星也くん、スープ飲んでないじゃない」  「えっと、その・・・」
「ほら、早く飲まなきゃチャイムなっちゃうよ」   「あの、鼻水が・・・」
「え?何?もっと大きい声でいって」   「鼻水が・・・ですね・・」
鼻水がなんだって?」  
「スープの中に入りました。」
「自分の鼻水?」   「・・・はい」
「・・・自分のだったら飲みなさいよ」   「!!!」(クラス全員の心境)

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この事件以降、担任に立てつくものは皆無となった。


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