移動教室の危険

移動教室は夜遅くまで遊ぶと・・・

  小学校六年生になると、移動教室というものがある。今まで遠足だけでは物足りなかった私にとって、2泊3日というのはとても長旅に思えた。
 そしてなんといっても夜が楽しいのである。班員でトランプをしたり、暴露話したりするのである。当時の私はとにかく楽しみにしていた。
 だがそこへ水を差すような話題である。消灯は9時だというのだ。このご時世、幼稚園児だって9時には寝るまい。しかも当然のごとく先生による見回りが永遠と続くらしい。
 だが、そんなのいちいち気にしていたらやってられない。なんとかなるだろう、と班員の一人が言った。確かにその通りだと思ったが、班長は私だったので、極端な話私が寝ていても他のメンバーが遊んでいれば私が怒られるのである。この班員はそのことを知っていたのではないかと今でも疑問が残る。
 
  さて、夜になった。時間は9時半。その時私は他の部屋へ行ってトランプをするという、班長にあるまじき行為をとっていた。そろそろやばいかな・・・と思い、部屋に戻ろうとしたその時である。ばったりと先生と出会ってしまったのである。私は妙な踊りでごまかしたが、すぐに連行されてしまった。この時の私の踊りは場の空気を和ませてくれた、と当時の友達は語る。
 「ここで待ってなさい」と私は廊下に置いてけぼりにされた。どうやら先生は他の部屋の見回りを続けるそうだ。(その間に私は自分の部屋のメンバーに危機を知らせ、私の班は無事だった)
 しばらくすると、一人連れられてきた。彼は名前を上原君といった。
 彼について説明すると、クラスでも非常にリーダー性が高く、目立ちたがる性格である。 だが、どんな場合も空回りし、逆にクラスの反感を買うことが多かった。また、「100億円玉があったらいいな」などの失言も多い。彼がこれを言った時、浅井君はキレた。他にも彼が「北風〜小僧のハゲ太郎〜」と歌ったとき、星也はキレた。 また彼は、家庭科室を掃除している時、勝手に冷蔵庫を開けたのを担任に見つかり、一年間教室の雑巾がけという偉業も成し遂げている。
 そんな彼と私は一緒に説教をくらうことになった。まぁ黙って聞いてればすぐ終わるさ、と自分に言い聞かせた。
 先「他の部屋の人もみんな起きてたけど、ちゃんと布団を敷いて横になってました。」
 上原「はい、トランプをやってました。」
 私「・・・・・!?」
 えーと、会話が成り立ってない気がするんですけど。別に彼はふざけてるわけじゃなくて、ものすごい神妙な顔して言っている。それがおもしろさを倍増させる。
 先「みんな遊びたいの我慢してるのに、君達だけ遊んでてずるいと思わない?」
 上原「すいません、すいませんでした。」
 私(なんで二回言うんだよ・・・・)  
 こんな調子で説教は続いた。私は途中で、これはコントかな?と錯覚したほどに楽しめた。
 そして説教もクライマックスを迎える。
  先「じゃあ、もう部屋に戻りなさい。」
 上原「はい、すいませんでした。」
 私「 すいませんでした。」
 やっと部屋に戻れる・・・。そう思ってふと横を見ると、上原君が土下座していた。
 
ものすごい楽しい説教だった。


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