願書を高校に提出する。私の受験番号は70番であった。孫悟空が初めて天下一武道会に出場したときの番号と一緒である。確かあの時クリリンの奴が、悟空と同じブロックに入ってる!悟空となんか戦いたくないぞ!みたいなことを言ったり、結局戦わなかったり、ヤムチャが準優勝もあぶないぜ・・・とか言ってた割には一回戦でやられたりと、様々なドラマが生まれた大会であった。また、悟空の大食いにちなんで、ご飯を多くよそることを「悟空盛り」と呼ばれることがしばしあった。ちなみにそのもう一段階上は「日本昔話盛り」である。意味がよくわからない方は、日本昔話を見れば一目瞭然だと思われる。
私は一般を常に重視していたが、受けるからには推薦だって手が抜けない。先日も友人とどのような傾向の質問が出るかを話し合った。
「俺の担任さ、なんかの資格試験の面接で、隅田川の深さはいくつでしょう?とかって聞かれたみたいよ。結局わからないって答えたらしいけど、受かったんだって。つまりさ、応答の態度やらなんやらを見るんだよ、きっと。内容はそんな重視されないって」
「そっか。でもやっぱいろんな質問に答えられるようにしとかないとね」
「じゃあさ、ジョジョにもあったじゃん。お前は今までに食べたパンの数を覚えているか?ってやつ。あれどうやって答えたらいいかな?」
「パンの種類とかも関係あるんじゃないかな。例えば食パン1斤を丸ごと食べれば1斤食べましたってことでしょ。けど、1斤の食パンを何枚かに切って食べればさ、例えば8等分すれば8枚食べたってことになるじゃん。そこら辺重要だね、きっと」
「まあそれも重要かもしんないけどさ。問題はそんなの覚えてないってことなんだよね」
「いや、けどこれは覚えてませんじゃすまないよ。君の担任の場合は隅田川だろう?実際あまり接する機会がないじゃないか。それに比べてさ、パンっていうのは人間が生きる上で隅田川以上の関わりを持ってるだろう。だからでたらめでもちゃんと答えなきゃだめだ」
「・・・じゃあどのぐらいがいいかな?」
「そうだね、まず逆に質問し返してやるといいかもしれない。質問が漠然としていて意図が伝わりにくいから具体的にどういうことですかって」
「試験管に質問するなんて聞いたことないよ」
「いや、その掟破りの行為こそが合格の秘訣なんだよ。確実に印象に残るキャラクターとして試験管の脳裏にこびりつくはずだって。そうすればこっちのもんだね」
「結局パンの数はどうすんの?」
「いや、こっちが質問し返してやればその時点で面接終了。試験管全員号泣」
「じゃあパンの質問の答えは別に重要じゃないわけだ」
「まぁ、平たく言うとそうなる」
「矛盾してるね」
「・・・そうだね」
「たぶん、今言ってたことは聞かれないだろうし、絶対質問し返さないと思うよ」
「俺もそれを勧めるよ」
まったく無駄な時間を過ごした私は、家に帰ってよくある質問の答えを準備し、丸暗記した。そして来る1月30日、いよいよ推薦入試の日となったのだった。
10へ続く
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