FMナイトストリート 1990.8.30 XTC 4日目

 

はい皆さんこんばんは伊藤銀次です。いよいよ、私の講義も今日が最終回でございましてですね。XTCの第四回目ですが、今日はXTCの隠れプロジェクトですね。デュークス・オブ・ストラトスフェアの周辺に迫って、これを初めて聴いた人は何のことかさっぱり分からないと思いますが、その辺については中に入っておいおいと語っていきたいと思います。2枚のアルバム、今は1枚でCD化されておりますが、全部で16曲、この16曲の影に、数々の60年代のイギリスとかアメリカのロックが隠れているという、これを暴いてみせようということで、よろしく、Beat Goes On!

はいそれでは曲を聴く前に、デュークス・オブ・ストラトスフェア、「成層圏の公爵たち」という、何のことかというと、公爵っていうのは男爵、伯爵のあの公爵ですよね。こういう意味のバンドで、これは実はXTCが1970年代にヘリウム・キッズというバンドから名前を変える時に、XTCと、もう一つのバンドの名前候補だったのが、このデュークス・オブ・ストラトスフェアだったわけです。その時はXTCという名前が選ばれて、デュークス・オブ・ストラトスフェアというアイデアは眠っていたんですが、1984年ですね、アンディ・パートリッジがミキサーのジョン・レッキーと「メアリー・マーガレット・オハラ」というカナダ人のシンガーのLPを手がけるんですが、3日でお払い箱になりまして、まるまる一ヶ月暇になったと。そこでちょうど、アンディがサイケデリック・プロジェクトのために温めていた3曲があって、その3曲をレコーディングしようかということになったんです。ジョン・レッキーと共にね。残ったXTCのメンバーと。それが「25 O’clock」の製作だったわけですがね。それがきっかけとなったわけで、発表された時は、デュークス・オブ・ストラトスフェアは、あくまでも変名、全員が名前を変えて、例えば、アンディ・パートリッジは「サー・ジョー・ジョーンズ」、ベースのコリンは「ザ・レッド・カーテン」、デイヴは「ロード・コーネリアス・プラン」という、非常に変わった名前でスタートしたわけです。最初、このアルバムの製作の時にはヴァージンは全然乗ってなかったんですが、1枚目が売れて、2枚目が結構また売れたので、ようやく認めてくれたということです。1984年に「25 O’clock」、1987年に「ソニック・サンスポット」と、この2枚しか発売されていませんが、この全部の16曲が、のちに「チップス・フロム・ザ・チョコレート・ファイヤーボール」という形でCD化されて、これが今僕たちの手に入るわけですがね。それでは、まず、この中からタイトル曲ですね。「25 O'clock」を聴いていただきましょう。

♪ザ・デュークス・オブ・ストラトスフェア「25 O’clock」

このアルバム、全体に、1960年代後半のサイケデリックとか、フラワーサウンドとか、いろんなグループのパロディーというか、非常にオリジナリティーにあふれたパロディーといった色彩を帯びているわけですが、どういう曲を元にしているかというのを、今日は暴いていきたいと思います。それによって、XTCの音楽的な造詣の深さと、構成力のすごさというのをじっくりと分かっていただきたいですが、まずこの「25 O’clock」の全体の曲調、これは多分これをもとにしているのではないかという曲があります。エレクトリック・プルーンズ「アイ・ハッド・トゥ・マッチ・トゥ・ドリーム・ラスト・ナイト」これはもう、クリソツという感じがありますけどね。でもよく聴くと、エレクトリック・プルーンズもローリング・ストーンズの「黒くぬれ」に似ている雰囲気がしますけどね。ということでこれをベーシックにして「25 O'clock」を作ったわけですが、まだこれだけではないんですよね。「25 O'clock」のオープニングの柱時計の音、これはどっかで聴いたことありませんかねー。あれですよ。あの、プログレの大グループ、ピンク、フロイド「狂気」のアルバムの中の時計の音をパクってるんですよね。この辺がなかなか分かりにくいですが、さて、それから「25 O’clock」の間奏なんですけど、これ非常にサイケですよねー。これ、最初にペラペラのオルガンが入ってきます。そして途中でバトンタッチして、ギターになるんだけど、このなんかラーガ奏法と言うかね、この辺の感じ、どっかで聴いたことあるんだよね。ドアーズ「ライト・マイ・ファイア」の間奏、最初にキーボードから始まって、そしてギターに渡していくという、ということで1曲目からこういうふうな具合になっているわけですが、どんどんいきたいと思います。

2曲目の「Bike Ride To The Moon」という曲は、ぱっと聴いた感じ、僕はザ・ムーヴの「ファイアーブリゲード」かなと思ったんですが、これちょっと確証がありません。

はい、飛ばしてですね。その次、「My Love Explodes」という曲ですけど、イントロがちょっとくせものなんですよ。これがどう聴いても、ヤードバーズにしか聴こえないんだ僕は。歌い方といい、イントロのフレーズといい、このイントロのフレーズ、非常にジェフ・ベックっぽいんですが、いったい何に似てるのかなと、いろいろ聴いてみたんですが、はっきり似てるものってないんだけど、なんとなくこの辺に似てるんだよね。ヤードバーズの「まぼろしの10年」のイントロ。フレーズは全く同じではありませんが、精神的には全く同じものですね。それにしてもやっぱりイギリス人てのはいいですよね。歌い方がまるっきり同じだという気がしますよね。これは、キース、レルフというヤードバーズのボーカルですが、もうアンディ・パートリッジと同じような歌い方をしてます。さて、もう一曲、ヤードバーズの「ハートフル・オブ・ソウル」という曲ですが、この2曲を足して割ったような雰囲気がデュークスの「マイ・ラヴ・エクスプローズ」のイントロという気がするんだけど、ね、なんかそういう感じがするでしょ。非常に2つの感じが合成されたような、この辺が手が込んでるんだよね。ま、全体的に、デュークスの16曲、どれがどれとも言えないところ、だから深いところで非常に音楽をつかんでて、雰囲気を、うまく合成した感じで出しているところがなかなかXTCはすごいなと思いますけどね。さてこのエンディングです。ピンク・フロイドの「狂気」のある部分を聴いてみましょう。狂気という曲は1曲目からずーっとつながってるんですが、途中で飛行機が墜落して爆発するようなシーンがあるんですね。これと同じようなエンディングなんだよね。ということで、けっこうピンク・フロイドってのはこのアルバムに非常に影を投げかけている感じがしますけどね。

次は「What In The World?」を聴いてみましょう。さて、この雰囲気の曲は、ビートルズにありましたね。ビートルズの「レイン」この、ポール・マッカートニーのベースランニング、この雰囲気、このオケ、というかリズム隊ね。このリズムに、同じビートルズの曲で、「トゥモロー・ネバー・ノウズ」という曲があるんですが、「レイン」と同じ頃ですよね。テープの逆回転とか、いろんな電子音を使ったということで、この当時は話題になりましたけど、これをさっきの「レイン」のベーシックに使うと非常に「ホワット・イン・ザ・ワールド」っぽくなるんです。もう一個エフェクト類としてはローリング・ストーンズの「2000光年の彼方に」という曲のエフェクトが近いんだよね。後ろのヒュ〜っていう、メロトロンだと思うんだけども、もうメロトロンっていう楽器は今は。全く使われておりません。禁止になっちゃったんだよ、メロトロンは。クラシックのほうから苦情がついてですね。ま、そんな話はどうでもいいんですが、というふうに、非常に何曲も合成してあるわけですが、このエフェクト非常に感じ近いよね。非常にサイケデリックっぽいというわけですがね。

さて続いて今度は5曲目の「Your Gold Dress」という曲ですがね。このイントロと全くと言っていいほど同じのがあるんだよね。キンクスの「キング・コング」ちょっとT−レックスっぽいですけど、こっちのほうが先ですね。非常にこの雰囲気しますよね。それと「ユア・ゴールド・ドレス」のピアノの部分が非常に、ローリング・ストーンズの「シーズ・ア・レインボー」に似てるんですが、これ、ニッキー・ホープキンスという人が弾いています。が、これが、「ユア・ゴールド・ドレス」の中に登場します。

さて、続いて今度は、「The Mole From The Ministry」という、6曲目ですが、ザ・モールっていうのはモグラですよね。ま、動物の名前が出てきてますけど、これに関係のある歌は、実はビートルズの歌の中にありますが、これも同じく動物が出てきます。これ結構2つの部分からなってますよね。後半のリズムが入ってきたところの部分ていうのはビートルズの「アイ・アム・ザ・ウォルラス」私はセイウチ)、さっきのデュークスのほうはモグラですよね。この辺なんかもちょっとこう、掛けてあるような気がするのですがね。さて、この「ザ・モール・フロム・ザ・ミニストリー」のエンディングでもさらにビートルズのトリックを使っております。それはですね。最初の逆回転になって戻ってくるのは「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」のエンディングですね。テープ逆回転とかいろんな音を入れて、しかも声をピッチ高く取って落として聞かせたりとかですね。デュークスの場合はそれにさらに、細かいこと言いますけど、ナポレオン14世のハハヒヒというものも加えているという、こんな細かいこともやってますけど。そして、1回なくなってから、しばらく沈黙があって出てくるやつは「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の一番最後の曲「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のエンディングですよね。この2つを使ってるんですよね。これなかなかすごいですよね。これだけでもすごい時間かかったと思うけどね。この2つ再現するだけでもね。

はい、ここまでで、いちおうオリジナルで発売された6曲入りミニアルバム「25 O’clock」が終わったわけです。いや〜、なかなか要素濃かったですね。これが結構売れたんですよ。ヴァージンレコードの予想に反して。XTCのオリジナルアルバムよりも売れたという噂もありますけどね。

そして続けて今度は、3年後に発売された「ソニック・サンスポット」これにいきたいと思いますがね。

1曲目に入っていたのが、「Vanishing Girl」という、これ結構ポップな曲なんですよね。これは、彼ら自身のコメントがあるんです。「これは、ホリーズの線を狙った」と。僕は、何の曲かわかんなかったんだけど、いろいろ聴いてみたんですが、そういわれてみればこれかなと思う曲があったんですがね。じゃあまず、「バニシング・ガール」のイントロを聴いてみましょう。なかなかいい曲ですよね。非常にポップ、チューンですが、これにもいろんな要素が絡まってて、もちろんそっくり真似して作ろうという精神ではなくて、なんとなく精神的にホリーズ的だというところで作ったんだと思うんですけどね。一番近いかなと思ったのは「ルックス・ルーウェニー・ウインドウ」という曲なんですけどね。ギターのイントロで始まるところとか、この歌の感じは非常に近いですよね。ただ「バニシング・ガール」の場合ってのはなんとなく「ライオンが寝ている」に似ているんですが、これはまあ、偶然の一致だと思いますけどね。

さて、続いて今度は、「Have You Seen Jakie?」という曲ですが、これは実は貴重な彼らのコメントがあるんです。これは実はもともと「シドニーを見たかい?」というタイトルだったそうですね。「ハブ・ユー・シーン・シドニー」つまりこれはピンクフロイドのオリジナルメンバーのシド・バレットのことなんだそうです。で、ここにはいろんな曲が混じっているというふうなことが書いてあるけど、特に詩に関してはですね、キース・ウエストやらいろんなそういうものが混じっているそうですが、僕自身は聴いてみたんだけど、これは結構初期のころのピンク・フロイドの感じがするんだけど具体的にどれということは指摘できませんでした。

さて、続いて今度は「Little Lighthouse」という曲にいきたいんですが、これは笑えます。これはさっきの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」と「ストロベリー・フィールズ」と同じくらい細かいことをして喜んでおりますが、まず、「リトル・ライトハウス」のイントロを聴いてみましょう。「小さな灯台」というだけあって、港のボ〜ッというふうな汽笛の音が入ってますが、これ俺初めて聴いた時に、どっかで聴いたことあるなーこれと思って、いろいろレコード探してみたら、あったですよ。なんと1960年代の後半に出たスティーヴ・ミラーバンドの「セイラー」というアルバムのオープニング。こんなことやっても誰もわかんないと思いますがね。でもXTCはイギリスのグループなのに、イギリスでそんなに人気のなかったスティーヴ・ミラーバンドのレコードをコレクションしているというのは、これはすごいですよ。しかもこの、デュークスの2つのアルバムを1つにしたCDのジャケット、これに波目模様の、サイケ何ていうかな、サイケデザインみたいなのを使っているんですが、これは実はスティーヴ・ミラーバンドのファーストアルバム、これのサイケデザインと全く同じなんですね。こういう細かいことをやってるというのはなかなかファン泣かせでですね、ウルウルきちゃいますけどね。

さて、続いては「You’re A Good Man Albert Broun」アルバートブラウン、おまえさんはほんとにいい男だね、というタイトルです。これは割とキンクスとかが得意とするパブ・ナンバーというのかね、パブなんかで古ぼけたピアノでおじさんが歌ってみんなでワーッて歌うような曲ですがね。この曲が始まるまでに、短い、ストーリーみたいな、女の子がなんか喋ってるんですよ。女の子と、妖精くんかなんかの会話みたいになってるんですが、それをちょっと聴いてみましょう。なんとなく不思議の国のアリスみたいですよね。アリスと虫が話しているような感じがしましたが、さて、これのイントロで流れてた雰囲気の曲があるんですよ。実はトラフィックというグループがあったんですが、非常にサイケデリックとかに貢献しているグループ、ま、サイケというよりはウエストコーストの、フラワーっぽいんですよね。このトラフィックの「フォーリン・マイ・シュー」という曲があるんですが、これは同じように非常にきれいな、マシュマロっぽいようなお菓子のような世界というかね。エレファントが出て来たりとかするファンタジーな世界なのですが、これの間奏で、今と同じような少女のトーキングが入ってるんですよね。非常に不思議の国のアリス的光景ですけどね。このあたりからインスパイアされてるのではないかと思います。ま、「You’re A Good Man Albert Broun」自体はキンクスとかの曲じゃないかなと思うんだけど、僕はどれだかわかんなかったです。

さて、今度は11曲目ですね。「Collodeascope」この曲はモロですね。ザ・ムーヴの「ブラックベリー・ウェイ」これもいい曲ですけどね。本人たちのコメントでは、「これは、ムーヴみたいに聴こえるけど、実は(ビートルズをパクったムーヴ)という雰囲気でやった」というふうに言ってますけどね。これがなかなかひねくれてて面白いよね。

今度は続いて12曲目「You’re My Drug」なんかヤバそうなタイトルですけどね。これをちょっと聴いてみようかね。非常にラテンっぽいていうかね、これは最初聴いた時にすぐに分かりました。ザ・バーズの「So You Want Be A Rock’n Roll Star」ですね。これの感じですよね。イントロの12弦ギターのフレーズとか、これはモロ、XTCがバーズをやったという感じです。でもなんとなく、「You ’re My Drug」にはもうちょっとマイナーな雰囲気がしたよね。あのマイナーの感じは一体何なんでしょうね?実は、あるんですよ、これが。アニマルズというグループが、バーズをパクって作った、あ、こんなこと言っちゃいけない(笑)アニマルズ「モンタレー」という曲なんですよ。これは、エリック・バートン&アニマルズというグループのですね。この人たちは「観光ロックグループ」とも言われています。そんなことないか?こういうサンフランシスコとかモンタレーのことを歌で宣伝して回ったグループですけどね。モンタレー・ポップ・フェスティバルの非常にすごい光景を説明してるわけだよね。というふうにアニマルズのベースランを「You ’re My Drug」で使っていると。つまり、アニマルズは、なぜこのバーズの「So You Want Be A Rock’n Roll Star」を持ってきたかというと、この日、バーズが出てたわけだ、モンタレーにね。だからバーズのこの曲をベーシックに使いながら「モンタレー」を作ったわけですよ。その2つ、元祖と、そのあとの両方をこの「You ’re My Drug」に使うという、手の込んだことをしているわけです、XTCはね。これなかなか大滝さんが喜びそうな手口ですがね。大滝さんもそうです、いつも3,4曲混ぜるわけで、これはなかなか憎いところがありますが。

さて、続いては「Shinycage」という曲ですがね。この曲の雰囲気はビートルズ「I’m  Only Sleeping」でしょう。実はこのエンディングも特にすごいんですが、エンディングに、シタールのフレーズが出てくるんですよね。これが、「Shinycage」のエンディングで同じなんですよ。

♪伊藤銀次「ミスター・グレイマンの憂鬱」

ぜひ、これを機会に、教科書のほう、デューク・オブ・ストラトスフェア、こちらを購入していただいて、自分の耳で実際に確かめていただくと、このへんのXTCのすごさがさらに分かるんじゃないかと思います。今日のはあくまで皆さんの音楽的なガイドとして聴いていただければ、何しろ生放送でやるっていうのは本当大変なことでね、シッチャカメッチャカになってますけどね。何とかこの熱意が伝わっていただければ、向こうでスティーヴ(←ディレクター)も、平身低頭しておりますがね(笑)。ということで、このあと補習が待っておりますので、よろしく。


はい、これは14曲目になりますね。デュークスの「Braniac’s Daughter」ですね。これは、どう聴いてもビートルズの曲ですよね。特にポール・マッカートニーが作りそうな曲です。彼ら自身の、アンディとデイヴの曲目解説によると「イエロー・サブマリンや、サージェント・ペッパーズのころのポールマッカートニーが曲を書いているという感じ」だと、’67年か’68年くらい、「わざとマッカートニー的な要素をいっぱい盛り込んである」と。「ピアノの軽いタッチとか、コードがどんどん下りていく感じとかね、それからファルセットのボーカルが入ってたり、非常に意味のない、どうでもいいようなナンセンスな歌詞とか、そっくりだろう」と言って、だからまあ、具体的にどこかなってことないんだよね。僕も今このインタビューを読んで、サージェント・ペッパーズとか、イエローサブマリンとか聴いたんだけど、具体的にこれっぽい曲ていうのはない。強いて言うならば、「マーサ・マイ・ディア」とかね、このあたりが一番雰囲気が近いんだけど、まっ、でも何ていうのかな、ポール・マッカートニーにデュークスがなりきって新曲を作ったというところでは非常によく出来た曲ですね。これはね。イントロにもさっき聴いてた例の女の子のね、トーキングみたいなのがありましたね。これもまあ、「フォーリン・マイ・シュー」あたりと同じでしょうね。

さて、どんどんいきたいと思いますが、続いては15曲目、「The Affliated」という曲ですけどね。これはまあ、僕はどうってことないような曲だと思うんですが、2つの部分からなって、途中でテンポチェンジしてですね、間奏みたいなところでいきなりラテンっぽいのが出てきますが、それを聴いてみましょうかね。この途中からいきなりテンポ変わりましたよね。この途中から変わったところが、ユニット・フォー・プラス2の「コンクリート&クレー」というのに非常によく似ています。ギターのフレーズとか、よく似ているんですが、これはまあ意図的にやったというより、偶然そうなったんじゃないかなという気がしますけどね。この辺がなかなか面白いですよね。

さて、いよいよ最後の曲ですけどね。これが結構いい曲なんですよ。どういう意味でいい曲かというと、今から言っちゃいますけど、ビーチボーイズに対するオマージュなんですよね。ビーチボーイズを、これだけ好きだぞと、俺たちは。なぜかというと、ビーチボーイズっていうのは大体、普通一般的にはサーフィンのグループというふうに思われていますよね。夏になると出てくる男たちと思われています。ところが、本当にビーチボーイズを好きな人はそうじゃないんですよ。もっと違う曲が好きだったりするわけで、それは、ビーチボーイズが後半、結構実験を始めたりとかですね、特にブライアン・ウィルソンがステージをしなくなって、スタジオにこもっていろんな音楽的実験をやるようになったころの音楽っていうのは、非常にまあ、どっちかというとポップじゃない、あんまり売れ筋じゃないんだけど非常に面白いものがあったんですよね。その辺を、俺たちはよく聴いてるぞ、というのをこの1曲で表しているんですよね。じゃあ、デュークスの一番最後の「Pale And Precious」を聴いてみましょう。これは本当もう、ビーチボーイズがやってるんじゃないかと思うくらいいい曲ですよね。まっ、これと同じ曲っていうのはないんですが、彼らが素にした、つまりちょっと教会音楽みたいだったり、バッハみたいな雰囲気だったりとかするコード進行の曲は、「グッド・バイブレーション」の入っている「スマイリー・スマイル」という名盤があります。この中に入っている「ワンダフル」という曲が雰囲気近いので、聴いてくださいね。メロディーの感じは違いますけどこのオルガン、そしてちょっとけだるい、教会音楽的なコード進行と、この歌の感じは、非常にビーチボーイズの感じを「Pale And Precious」のほうは採ってますよね。

という感じで16曲お届けしてきましたけどね。いかがでしたでしょうかね。というふうにですね、デュークス・オブ・ストラトスフェアはXTCの分身であるわけですね。同じ人たちが、別プロジェクトでやっているわけですが、XTCの本チャンのほうよりも売れちゃったというのが、これが面白いですよね。自分たちでもびっくりしたと思うんですよ、きっと、XTCはね。たぶん本当に遊びの精神でやったことが、世界的に結構評価された。なんかこれってね、オリジナリティーって一体なんなんだろうということをすごく突いてるような気がするのね。だからよく一般にコピーだとかものまねだとかというふうに言われちゃうけど、その真似る行為自体が悪いのかいいのか、つまり必ずしもオリジナルでないような中途半端な曲をオリジナルとして作り続けることのほうがよっぽど馬鹿げてるんじゃないかということを僕たちに教えてくれるような気がしますね。それは形式をもってきても、例えばこの曲なんかそうだけど、ビーチボーイズみたいにやってみようと思って、でもビーチボーイズにも作れなかったような新しい曲が出来ちゃうようなね、そういうことをデュークス・オブ・ストラトスフェアのアルバムは、僕たちに教えてくれてですね、また創作意欲がわいてくるんだ、こういうのを聴いているとね。はい、お勉強シリーズでしたけどいかがでしたでしょうかね。


さて、ちょっと時間が押しましたがね、XTC拾遺集に入りたいと思います。今日はまずこの曲からです。ドクター・アンド・ザ・メディックス、覚えてますか?あのグループね、いたんですよ、まだね。これ新曲?’85年ですね。すみません、大ボケかましてしまいましたが。アンディ・パートリッジプロデュースです。それじゃあ、いってみましょう。

♪ドクター・アンド・ザ・メディックス「ザ・ミラクル・オブ・ラヴ」

いや〜、なんか俺、まだデュークスの特集やってるような気分になってきちゃったよ。もういいよ(笑)。しばらく夢見そうだ俺。ということでですね。メディックスも本当にプロデューサーが変わるともう全部音が変わりますよね。本当に主体性のないヤツらだと思いますが、アンディ・パートリッジのカラーぷんぷんでしたね。

さて、続いては、これすごく珍しいというか、僕このシングル買った時それほど珍しいとは思わなかったんですよ。のちのちこれが珍しくなってしまったのはですね、実は、日本とオーストラリアしか出てないんです、これは。XTCの貴重なライブですね。日本で発売された時は、「がんばれナイジェル」のB面に入ってたんですよ。これね俺、まだXTCのアルバム買うのどうしようかなと迷った時に、たまたまこのシングルがあったんで、パイロットとして聴いてみようと思ってこれ買って、あ、なかなかいいなっていうんで、あとでアルバムも買ったというやつで、とってあったんですが、非常に貴重なものです。

♪XTC「This Is Pop?〜Are You Receiving Me?」(メドレー)

私の保管状態が若干悪かったために、針パチがありましたね。ごめんなさいね。でも聴けただけでもよかったと思えよコノヤロ。(笑)

ということでですね、ずーっとお届けしてきましたけどもね、もうあと1曲でXTC拾遺集も終わりで、XTCの4回にわたる、大お勉強シリーズは終わりに近づいてきたわけですが、今回持ってたもの、それから無いものはですね、友人とかに電話をしたりしてかき集めましてですね、どうしても集まらなかったのが、「スリー・ワイズメン」という、これもXTCの別名義のバンドですが、これの「サンクス・フォー・ザ・クリスマス」という、これがかける事が出来ませんでした。それと、コリン・ムールディングとテリー・チェンバースの2人のグループ、名前が「ザ・コロネル」というんですが、これのシングルもかける事が出来ませんでした。残念で仕方がありませんがね、まっ、でも、みんなもこれをきっかけにに探してみてはいかがでしょうか。絶対手に入んないと思いますけどね。(笑)でも私は絶対探すぞ!(注・これは現在、「ラグーン・ボーン・バフェット」というCDに収められています。)

さてXTCこれだけいろんなね、XTCだけのアルバムとか、シングルとかあるにもかかわらず、それから別名義のものもありました。それからプロデュース作品もありました。それだけでは飽きたらずにですね、XTCのコレクターってのがいるわけですが、この人たちはデモテープをどっかから入手してきたという、これどこから漏れるんだろうね、デモテープなんかね。どうせだってこんなの、自宅でね、みんな保管しているわけだから出るわけがないんですが、まっ、僕たちなんかでもよくありますけど曲を人に渡して、そのデモテープをたいていみんな捨てちゃうわけですが、持ってたりするんですよね。僕も佐野元春の、ピアノとメトロノームのみで歌っている、「ハートビート」とか持ってますけどね。そういうのをどっかからワーッと門外不出のものが出てしまうわけですが、実はXTCのデモテープっていうのも結構出回っております。いくつか入手してきたので今日はその中から1つお届けしたいんですが、「メイヤー・オブ・シンプルトン」とカップリングになっていた曲なんですが、これのデモテープを聴いていただきたいと思います。

♪XTC「Living In A Haunted House」(デモテープ)

いかがでしたか、デュークス。これを機にデュークスのアルバムを買って、ぜひ聴いていただけたらうれしいなと思います。

あ〜、私も今日はよく眠れそうですね(笑)。ということでここまで聴いてくれてどうもありがとう。

 

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