「本田宗一郎語録」
「勇気とは」
勇気というのは、強いからとか勇ましいから勇気があるというのではない。たとえ、自分にとってどんなに不利な結果になろうとも、自分が真実であり、妥当であると考えたことを認め、それに賛成することこそが勇気である。
人間は所詮、私利私欲もあり好き嫌いもある弱い存在である。堅さ一点張りでやっていけないところに人間らしさがあるのだ。しかし、いつ、どこで、誰でもが納得できること、そういう理想を生き方の中で追っていくことが、とても大切なのだと思う。そうした理想が、本当の勇気によって欠かせない考え方であり、勇気とは、その理想や目標を通して表れるものである。
「やってみもせんで……」
簡単にギブアップするということを、われわれはやらなかった。まだ工場も小さくて設備も乏しかった頃、薄暗い明かりのもとで私の助手をしてくれた人など、電灯で手元を照らしながら、外科手術の医者に次々とメスを渡す看護婦よろしく、いろんな道具を渡してくれる。少しでも手暗がりになると、私はビシリとスパナなんかでその手を叩いたものだ。また、私が道すじをつけたものを頭をフル回転させムダなく大量に生産してくれた人たちの努力も並大抵のものではなかった。
「それはムリでしょう」「おそらくダメでしょう」といった言葉は、
「やってみもせんで何をいっとるか」
という一喝でけしとんでしまったのだ。
2001/06/27