COLUMN THE JIGSAW  SEX

子宮の気持ち 2

精神的M(マゾ) 木村恵子

 SMなんていうと普通道具を使ったSEXを想像する人が多いと思うけど、
「精神的な」SMってちょっと面白いと思いませんか?
男を苛めて上手く操るのが得意な女の子や、
女の言いなりになりながら結局本能のままに生きてるような男っているでしょ。
別に本気でも芝居でもいいんだけど、そういう道具プレイではない
精神的SMの要素って誰の心の中にもある筈で、
SとM両方バランス良く持っている人はとても正常なのです。
どちらかに片寄る人が異常なわけで異常というのはとても素敵なことなんですネ。

 去年の秋精神科へ行って雪の様な真っ白い精神安定剤を頂いていた私。
誰も信じられず自分で自分を傷つける日々……。
こんな時はパ〜ッとパリへでも行っちゃえば……
狂い集めているバービー人形の世界に没入すれば……治るなんてとんでもなくて、
去年の”ドン底”はそんな一時しのぎの逃避が通用するほど甘くはなかったのでした。

 毎日泣いて泣きまくってパニック状態に陥っては物をたたき壊しました。
家の窓は割れるわ電気スタンドは投げるわで、
ガラスの大きな破片が私の足にぶすりっとつきささり、
血がドピュッ!!と飛び散りました。
傷口をなめるとやっぱり鉄の味……ううん痛い。
えぐられるような痛みです。
でもこの鋭角的な痛みは私にとっても優しくて真っ赤な血はとても綺麗でした。
ああ私は生きているんだ!!私は負けないゾ……。
そして気付いたの、この痛みを通して私は快感を得ることに。
そしてそれを世間ではマゾヒズムと呼んでいるのでした。

 マゾは新しい。
なぜなら否定的なエネルギーをすべて体に受けとめ、
その苦痛を取り込んで快感に到達させるこのパワー!
つまり完璧に苦悩を乗り越えて自分のものにしてしまう訳です。
つらいこと、かなしいこと、くるしいこと、どうしようもないこと、
何でもこい!!
それらがくればくるほど良いのだし、全て私という人間の栄養になるのです。

 ところでマゾヒストとサディストは表裏一体であって
サディズムはマゾヒズムの一部だと言えるでしょう。
はたしてマゾヒストの正体とはいったい何なのでしょうか。
徹底的に負けつづける事で最終的に勝っていること。
そして数々の苦難を受けとめるたびに一枚一枚自分の皮をはぎとり、
美しい蝶へと生まれかわっていくマゾヒスト。

 マゾヒストの仮面を被りながら”愛する貴方を傷つけたい”
”ステキな貴方を食べちゃいたい”とニッコリ笑いながら、
心の底の底でひそかに思い続けているマゾヒストの仮面の下はサディスト。

 あぁ可愛い。
あなたの身の回りにもこんな女を見かけたら”オマゾさん”と呼んであげて下さい。


キムラケイコ
 ミュージシャン。
最近、恋にはまってます。
恋すると脳内麻薬が分泌されるので、睡眠、食事、全然とらなくても平気です。