数ある伊東友香さんとの歌の中でも、もっとも情緒豊かで、ちょっと寂しさと懐かしさのある作品です。まず、この歌は、歌詞がすばらしいのです。短いので、ここに載せてみます。
星 作詩 伊東友香 宝石箱にひとつ 星がひとつ 輝きが消えないように 煌きが消えないように 空へ返さなくちゃ 寂しいな 星がいないと 近くにいないと寂しいな 空へ帰る涙がひとつ その隣に星がひとつ copyright Yuka Itoh Limit.2000 この詩は、彼女のホームページ「utatatane」の中のコンテンツ「ひとりごと」の中にあった詩でした。感銘を受けた私は、曲をつける許可をもらい、2〜3日でオケまで仕上げた記憶があります。(2000年9月)それまでは、長めの「詩」というコンテンツの中から曲を作ることが多かったのですが、これ以降、「ひとりごと」のほうから、生まれる曲も多数出てきました。福井誠さんの「ラストノート」「スノーホワイト」と言った名曲もそうです。私の作品でも多数ありますが、「夢ポケット」「動物達の井戸端会議」「口笛を吹こう」「おはよう」といった童謡系のものは「ひとりごと」が多いようです。最近の作品では、「時空の奇跡」や、「月の神話」もそうです。それらの多くは、大変、短い詩なのですが、その内容は、非常に豊か。幻想的であったり、哲学的であったり、諧謔的(ふざけていること、風刺)であったり。無駄な言葉を排斥しているだけに、深みは逆に増しているものが多いと思います。詩というのは、ある意味、言葉を凝縮する作業ではないか、と思いますし、伊東さん自身、そういうことを、おっしゃっていました。極一般的な歌詞ですと、状況や、人間関係の説明に多くが費やされていますが、伊東さんのこの「ひとりごと」を基にした作品には、そういう「説明」的部分が無く、もっと、ダイレクトに心の奥、つまり人の心象風景や、潜在的な感情に訴える作品になっていると思います。その分、伊東さんの作品は、「難解」であると思われることもないとは言えません。しかし、詩を何度も読んで頂ければ、そこにある深い情緒や幻想が、きっとわかるのでは、と思います。この「星」は、伊東さんにとっても、お気に入りの作品のひとつで、ライブでも、歌う機会がある作品です。また、2001年の1st album 「Angel berath 」収録時には、ボーカル、オケ共に、再レコーディングしています。程塚繁樹 記 |