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オーケストラ・アンサンブル金沢1000 第1期 ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」・第7番 1)ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調op.67「運命」 2)ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調op.92 ●演奏 岩城宏之指揮 オーケストラ・アンサンブル金沢 ●発売/ワーナー・ミュージック・ジャパン WPCS 11501(2003年2月26日発売) ●録音/第5番:2002年9月12日,第7番:2002年5月23日,石川県立音楽堂コンサートホール \1000(税抜) |
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オーケストラ・アンサンブル金沢1000第1期の中の1枚。このシリーズはオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期演奏会のライブ録音を中心とした新譜を1枚1000円で発売するという画期的な企画である。その第1期の1枚目は,ベートーヴェンの奇数番の交響曲2曲の組み合わせである。第1期では岩城宏之音楽監督の指揮の演奏を3枚含んでいるが,その曲目が現代日本の作品とベートーヴェンであるところが岩城さんらしい。私自身もそうなのだが,岩城さんにも「クラシックといえば,まずはベートーヴェン」という気持ちがあるのではないだろうか? 岩城指揮OEKのベートーヴェンには,1995年頃に浜離宮朝日ホールで行われたライブによる全曲盤がある。基本的にはそれと同じ解釈の演奏だが,録音の方は今回の方がクリアである。そのこともあって,いかにも室内オーケストラによるベートーヴェンらしい,精緻さを感じさせる演奏となっている。 このことは特に第5番の方で強く感じられる。弦楽器の音が薄く,曲の骨格が見えるようである。有名な「運命のモチーフ」も威圧的ではなく,古典的なたたずまいがある。全然騒いだところはなく,曲の輪郭がはっきりわかる。各楽器の音にも精彩がある。特にホルンの音が素晴らしい。レガート,スタッカートといった弾き分けも明確で気持ちが良い。曲全体の設計のバランスも良いので,4楽章がとても立派な音楽に聞こえる。演奏時間は29:34で,非常にすっきりとした演奏になっているが,ライブ独特の緊張感や厳しさも感じられる。それに加え機械的な演奏ではない人間味も感じられる。曲の最後の部分でティンパニがクレッシェンドするのも特徴的である。 第7番の方も,岩城OEKが特に好んでよく取り上げる曲である。手のうちに入った安定感と躍動感が同居した見事な演奏となっている。リズムの歯切れ良さが特に印象的だが,曲全体を一気に聞かせようとする流れの良さもある。岩城さんは,以前この曲を取り上げた時のトークで「第1楽章と第2楽章を続けて演奏してみます」と語ったことがあるが,この録音もその解釈で演奏されている。第1楽章最後の長調の和音の後,急に第2楽章の短調に和音に切り替わるという鮮やかさを狙ってのものである。第1楽章の序奏から主部への移り変わりも一気に流れ込むようである。ライブの熱気と合わさって,曲全体の勢いを感じさせてくれる。 この曲は,リズムの祭典のような曲である。特に第4楽章が聞きものである。今回の録音ではトランペットの鋭さとコントラバスの迫力のある音の動きがとてもよく聞き取れる。第5同様,明確に曲を再現した演奏だが,リズムの執拗な繰り返しが迫力につながっている。 これらの曲は,岩城指揮OEKがたびたび演奏してきた曲だが,両方とも演奏時間がとても短く,タイトで凝縮されたベートーヴェンとなっている。贅肉のない引き締まった演奏の典型といえる。 ■録音データ 第5番の方は,2002年9月12日の録音。この演奏会は当初ギドン・クレーメルが登場するはずだったが,急遽キャンセルになったものである。 第7番の方は,2002年5月23日の録音。この演奏会の前半ではサルヴァトーレ・アッカルドが登場している。第5番のコンサート・マスターはマイケル・ダウス,第7番のコンサート・マスターはサイモン・ブレンディスである。どちらの曲もティンパニはトム・オケーリーが担当している。 ■演奏時間の比較 岩城さんは,「運命」を4回レコーディングしている。ライブ録音の場合,拍手が入ったりするので単純な比較はできないが,今回のレコーディングが非常に速い演奏だということは確かである。「速い演奏の典型」であるフリッツ・ライナー指揮の演奏よりもさらに速い演奏となっている。
第7番の方は,3回レコーディングしている。運命同様,かなり速い演奏だということがわかる。40分ぐらいかかる曲を34分代で一気に演奏している。
■参考ページ オーケストラ・アンサンブル金沢第121回定期公演PH(2002/05/23) オーケストラ・アンサンブル金沢スペシャルコンサート(2002/09/12) (2003/03/06) |