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モーツァルト:フルート協奏曲集 モーツァルト/フルート協奏曲第1番ト長調K.313 モーツァルト/フルート協奏曲第2番ニ長調K.314 モーツァルト/フルートと管弦楽のためのアンダンテ ハ長調 K.315 ●演奏 高木綾子(フルート) 金聖響指揮オーケストラ・アンサンブル金沢 ●録音/2009年7月7,8日 石川県立音楽堂コンサートホール ●発売/Avex(2010年1月20日発売) \3,000(税込) |
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Avexから出ている,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と「若いアーティストとの共演」シリーズ(勝手に私が呼んでいるだけですが)の1枚。この共演シリーズでは,協奏曲と器楽曲の組み合わせというケースが多かったが,高木綾子と共演したこのCDは,オーソドックスにモーツァルトのフルートとオーケストラのための協奏曲的作品をまとめている。 どの曲も演奏も非常に緻密で,フルート,オーケストラともども,しっかりと抑制の効いたバランスの良い演奏を聞かせる。金聖響指揮OEKの演奏は,ノン・ヴィブラート主体で,フレージングもすっきりと引き締まっている。高木のフルートは,オーケストラとのバランスが良く,十分なしなやかさを持ちながらも,華やかさだけを狙った浅薄さとは無縁の室内楽的なまとまりの良さを持っている。 第1番の第2楽章も中庸のテンポで,しっとりと演奏されている。ただし,音楽に浸るというよりは,上品な歩みを感じさせる運動性を持っているのが特徴である。高木のフルートの音は,”透き通った”というよりは,常に微妙な陰影や湿り気を持っており,音自体に意味深さがある。第1番の第3楽章なども,落ち着いたメヌエットのように,慌てず上品に聞かせてくれる。 第2番の方も基本的に同様である。十分に滑らかに歌われているのだが,流麗に歌いすぎることはなく,フルートとオーケストラが語り合っているように聞こえる。天真爛漫というよりは,知性を感じさせる安定感がある。第2楽章は,さらりとしているけれども,温かみが染み出てくるようなノン・ヴィブラートの響きが特に美しい。第3楽章は,落ち着いたテンポで歯切れ良く演奏されている。フルートとオーケストラがピタリと息が合っているのが気持ちよい。随所に出てくる,高木さんのフルートの非常に伸びやかな歌との対比も素晴らしい。 アンダンテは,比較的さらりと演奏されているが,その中に落ち着いた運動性がある。全曲を通じて,常に深い陰影が漂う辺り,各協奏曲の第2楽章と同様の気分を持っている。 なお,カデンツァは,第1番が金昌国によるもの,第2番とアンダンテは,高木綾子自身によるものである。 (2010/06/19) |