ニューイヤーコンサート!
シュトラウス.J./喜歌劇「こうもり」序曲
シュトラウス.J./ワルツ「ウィーン気質」op.354
シュトラウス.J./ワルツ「春の声」op.410
シュトラウス.J./アンネン・ポルカ,op.117
シュトラウス.J/新ピツィカート・ポルカ,op.449
シュトラウス.J/ワルツ「ウィーンの森の物語」op.325
シュトラウス.J/ポルカ「狩にて」,op.373
シュトラウス.J/皇帝円舞曲
シュトラウス.J/ポルカ「雷鳴と電光」,op.324
シュトラウス.J/ワルツ「美しく青きドナウ」
シュトラウス.J.I/ラデツキー行進曲
●演奏
マイケル・ダウス(ヴァイオリン)指揮オーケストラ・アンサンブル金沢
●Warner WPCS-11464 \1,000(税抜)
録音:2002年1月13-15日,石川県立音楽堂

2003年1月のOEKのニューイヤーコンサート後のサイン会でもらったダウスさんのサイン。
2002年1月に石川県立音楽堂で行なわれたオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のニューイヤーコンサートのライブ録音CD。ワーナー・ミュージック・ジャパンでは,OEKの演奏会をライブ収録し,2003年2月以降1枚1000円で発売していくシリーズを計画している。そのシリーズ開始を記念する1枚である。国内オーケストラの新譜を廉価で発売していく,という試み自体過去に例がなかったものであり,OEKファンのみならず,クラシック音楽ファン全体から注目される企画になると思われる。このCDは,約78分という長時間収録だという点もセールスポイントである。解説書にはレコーディングに参加した参加したメンバー表がついているのも嬉しい点で,「廉価版だから...」という手抜きのない作りとなっている。

プログラムは,シュトラウス・ファミリーの有名曲を11曲収録している。1曲ごとに拍手が入り,ライブの雰囲気がよく伝わってくる。こういうコンサートにつきものの効果音も生々しく収録されている。

演奏の方は,全体に弦楽器の編成の小さいこととワルツのテンポが遅目であることが特徴となっている。冒頭の「こうもり」序曲では,この辺の薄さがちょっとギスギスした感じとなって聞こえ,甘さがもっとあると良いかなと感じるが,プログラムが進むにつれて,ゆったりとした気分に浸ることができるようになる。特に「春の声」では,ティンパニのリズム感がとても気持ち良く,軽さととゴージャスな雰囲気とを味わえる。

このCDは,OEKの名誉コンサート・マスターのマイケル・ダウスが指揮も兼ねている点がセールス・ポイントである。ダウスとOEKとの10年以上に渡る信頼関係が音に反映している。元ウィーン・フィルの首席コントラバス奏者だったブルクハルト・クロイトラーが参加している点も注目点である。そのせいか,ワルツなどにはリラックスした雰囲気が漂う。室内オーケストラらしい軽い音ながら聞きごたえも十分ある。

「ウィーンの森の物語」はオリジナルのチター独奏の部分を,独奏ヴァイオリンが演奏している。今回のようにコンサート・マスターが指揮を兼ねる場合,序奏の後,おもむろに独奏ヴァイオリンがウィーン情緒のあるメロディを弾き始めるというこのスタイルも良い。ダウスの気持ちの良い独奏は,「ウィーン気質」でも聞くことができる。この「ウィーンの森」は,繰り返しをきちんと行い,テンポもゆったりしているので,15分近くかかっている。妙な緊張感がないので,脱力した気分で幸福感に浸れる。序奏の室内楽的な雰囲気にはOEKの持ち味が出ている。首席チェロ奏者のカンタ氏による”おいしいメロディ”のソロは「皇帝円舞曲」でも楽しめる。

「美しく青きドナウ」は,OEKのニューイヤー・コンサートでは,毎回,コーダをすっぱりとカットしてしまう短縮版で演奏されてきたが(オリジナルの合唱曲版か?),今回のCD録音に際した演奏会では,立派なコーダの付いた通常版で演奏された。こちらも繰り返しをきちんと行っているが,主部の方は快適なテンポで流れている。

ポルカの方は,小編成のオーケストラにもともと合った音楽である。どの曲も軽快な味を持っている。速いポルカの「狩にて」,「雷鳴と電光」はともにリズム感が非常に良い。ピストルの音にはライブ的な楽しさが漂う。新ピツィカート・ポルカでは,最後の一音だけピツィカートではなく弓で弾いているのを強調している。この辺のユーモアもとても良い味を出している。

プログラム最後のラデツキー行進曲は,行進しやすく,手拍子もしやすい,じっくりとしたテンポとなっている。金管楽器の音がとても楽しげに入っている。演奏後には,団員が隠し持っていた「クラッカー」の音が収録されている。ただし,この音は正直なところ「ショボイ」音となっている。演奏会に行かなかった人には何の音かわかりにくいだろう。ここは,ライブ収録用に「狩にて」と同じピストルを使ってもらった方が良かったかもしれない。

(追記)このCDの収録曲のうち,「春の声」と「雷鳴と電光」は2002年1月の金沢の演奏会では取り上げられなかった曲なので,これらの曲は別の会場での収録と思われる。(2003/02/09)