ポエム/松井直
フォーレ/ヴァイオリン・ソナタ第1番イ長調op.13
プーランク/ヴァイオリン・ソナタ二短調
ショーソン/詩曲op.25
●演奏
松井直(ヴァイオリン),松井晃子(ピアノ)
●PAU PAU-7001
●録音 2004年1月27〜29日入善コスモ・ホール(富山県入善町)
\2625(税抜\2500)

オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のコンサートマスター松井直さんと奥様の松井晃子さんによる2枚目のデュオ・アルバム。前作はフランクのヴァイオリン・ソナタを中心にしながらもヴァイオリンの小品を集めたアルバムとなっていたが,今回のアルバムはフォーレ,プーランク,ショーソンの作品3曲だけを集めており,フランス近代のヴァイオリン曲集というコンセプトが強く打ち出されている。

アルバム全体の色合いは非常にすっきりしたものでさらりとした感触が残る。荒々しさや雑然としたところがなく,透き通るような一本の音がすっきりと流れて行く。松井晃子さんのピアノにもそういう感触があるので,大変まとまりが良い。

標題となっているショーソンの「ポエム(詩曲)」では,バロック〜古典の曲を聞くようなシンプルなたたずまいがある。繊細な高音の重音の美しさが素晴らしい。松井さんの演奏は表情づけの起伏が大きくないが,それが単調さとはならず,押しつけがましさの少ない”粋”な気分となって響く。

最初に演奏されているフォーレの演奏には,より感情の動きがある。繊細な表情の絡み合いがあり,曲の内側から静かにわき上がってくる気分が心地良い運動性を感じさせる。それでもハメを外し過ぎることはなく,古典的な趣きを持つ。

プーランクの作品はより現代的な雰囲気のある作品である。荒々しい音型ではじまるが,基本的には他の作品同様,折り目正しさがあり,アルバム全体としての統一感を作っている。

選曲の面でも演奏の面でも,少々地味なところはあるが,それだけに聞けば聞くほど味わいが増す,つつましい雰囲気のあるアルバムとなっている。大騒ぎせず,洗練された響きをしっとりと聞かせる演奏はフランスの室内楽の演奏には相応しい。

PS.このCDのジャケット写真は,OEKの首席チェロ奏者のルドヴィート・カンタさんが撮影したモノクロの写真を使っている。コントラストの大きい独特の陰影の深さはカンタさんの写真ならではである。これからもカンタさんの写真を使ったCDジャケットを見てみたいものである。