ヴォカリーズ:松井直ヴァイオリンリサイタル
フランク/ヴァイオリン・ソナタイ長調
ラフマニノフ/ヴォカリーズ
エルガー/愛の挨拶
シモネッティ/マドリガル
バルトーク/ルーマニア民俗舞曲
ラフ/カヴァティーナ
マスネ/タイスの瞑想曲
●演奏
松井直(Vn),松井晃子(Pf)
●PAU PAU-5002
●録音 2000年1月19〜21日入善コスモホール(富山県入善町)

OEKに最初期から参加しており,コンサート・マスターとして活躍している松井直さんによるリサイタル盤です。この曲はライブ録音ではありませんが,CDが発売された頃,リサイタルも行っています。このCDを通して聞いて,最後にタイスの瞑想曲が出てくると,リサイタルを全部聞いたような充足感を味わうことができます。

松井さんは,OEKのヴァイオリンの音色を作っている中心的存在ですから,演奏全体にもOEKの弦楽器の特色がそのまま表われているような気がします。全体的にとても流麗でさっぱりとした感じで,大変品良くまとまっています。小品などではもっと情熱的な方が良いかなと思う曲もありますが(好みの問題です),メイン・プログラムのフランクなどは,穏やかで優しく慎ましやかな演奏で曲想に相応しいと思います。荒っぽいところのない品の良さは,松井さんの人柄を表しているような気がします。

バルトークの曲は,フランクとは全く別の雰囲気があります。短い曲が集まった舞曲集ですが,しっかりと演奏されており大変聞き応えがあります。確かこの曲はOEKの定期公演でもオーケストラ版が演奏されたことがありますが,その時のコンサート・マスターが松井さんだった記憶があります。

ピアノは,OEKの一員として,OEK合唱団の伴奏者として,そしてOEK団員との室内楽演奏でもよく登場されている松井晃子さんです。その名のとおり松井さんの奥様で大変息が合っています。ベルリン・フィルのコンサートマスターの安永さんの奥様の市野さんもピアニストで2人でリサイタルをされていますが,松井さん夫妻にも共通する雰囲気があると思います。このCDの解説は,松井直さん自身がお書きになっています。曲やプログラミングに対する思いが分かり大変素晴らしい内容になっています。これからもデュオの演奏を聞かせてもらいたいものです。