武満徹作品集
1)武満徹/夢の時(1981)
2)武満徹/ノスタルジア(1987)
3)武満徹/虹へ向かって,パルマ(1984)
4)武満徹/ヴァイオリンとオーケストラのための「遠い呼び声の彼方へ」(1980)
5)武満徹/鳥は星形の庭に降りる(1977)
●演奏
岩城宏之/メルボルンSO
マイケル・ダウス(Vn*2,4),佐藤紀雄(G*3),ジェフリー・クレリン(Obダモーレ*3)
●ABC 8.770006(輸入盤。国内盤は廃盤か?)
●録音 1990年

岩城さんはメルボルン交響楽団の音楽監督を長年務められていましたが,その代表作・集大成ともいえる録音です。1980年代の後半の岩城/メルボルン交響楽団の来日公演では,武満徹の作品だけを取上げたプログラムを取上げていますが,その公演を彷彿とさせる内容となっています(もちろん私は聞いていませんが)。

演奏されている曲は武満徹の1980年代の作品が中心です。前衛的な雰囲気はなく,美しい響きの作品が中心です。「ノスタルジア」と「遠い呼び声の彼方へ」は,ヴァイオリン協奏曲のような曲です。ヴァイオリン・ソロはOEKファンにはおなじみのマイケル・ダウスさんです。その間に挟まれているのは,ギターとオーボエ・ダモーレのソロが入る「虹へ向って,パルマ」という曲です。つまり,このCDの曲目配列は,

オーケストラのみ−ヴァイオリンソロ−オーボエ・ダモーレ&ギターのソロ−ヴァイオリン・ソロ−オーケストラのみ

というシンメトリカルな構成となっています。実のところ,この頃の武満さんの作品の響きは非常に似ており,曲目の区別が付きにくいので,5曲あわせて1曲のように聞えてしまいます。5曲をこのように配列することで,大曲を聴くような構成感を出そうとしているのかもしれません。

このCDでのオーケストラの響きはとても明るくクリアです。メルボルン交響楽団という日本以外のオーケストラが演奏していることによって,武満さんというのは本当にインターナショナルな作曲家なのだな,ということを再認識させてくれます。その一方,ドビュッシーなどフランス音楽との繋がりも感じさせるようなところもあります。