ごあいさつ〜本講座について
     「ジャズを聴く〜ジャズ鑑賞講座」受講ありがとうございます。
    本講座は、20世紀のアメリカで誕生し現在では世界中で愛聴されている
    音楽芸術「ジャズ」について解説していきます。
     「ジャズに興味があるが何から聴いて良いかわからない、ジャズはかなり
    聴いてきたが歴史的・体系的に理解を深めたい」という方に、私なりの
    ジャズの楽しみ方を、私の大好きな演奏をお聴かせすることによってお伝え
    しようとおもいます。
     全4回、計10時間の講座です。
 
第一回  ジャズとはなにか   2002.7.20.
 
  私の考えるジャズとは、躍動するリズム(スウィング)を伴う即興演奏中心の音楽です。ジャズは基本的に個人技を楽しむ音楽だと思います。すなわち、演奏者が「いかに素晴らしい即興演奏をするか」を聞き取ると言うことなんですが。「個性的・独創的」であることはもちろん必要ですが、「個性的・独創的」であることは実はそう難しくはありません。問題は、同時に「面白いこと」であることなんです。レコードとして繰り返し聞くに耐える即興演奏を長年にわたって生み出し続けるのは、極端に言えば「天才」だけにできることです。
 極論すれば、ジャズ演奏家の多くは演奏のやり方をジャズの歴史に現れたごく少数の「天才」が行った演奏を「模倣」しているといっても過言ではないと思います。
 この「天才」たちを「ジャズのスタイルをつくった人たち」と仮に呼びましょう。この講座では彼等の演奏を中心に聴いていきたいと思います。
 
ジャズの演奏に使われる楽器
  基本的に伝統的な西洋音楽(クラシック音楽)に使われるものと同じです。リズム・セクションと呼ばれ、基本的なリズムを保つ役割(それぞれソロをとることがあるのはもちろんですが)をするのは、ドラム(オーケストラと違ってシンバル、スネア・ドラム、タム・タムなどがセットになって普通一人で演奏します)、ベース(コントラバスとかダブル・ベースまたはウッド・ベースとも言うオーケストラで使うものと同じです。また、ロックでおなじみのエレキ・ベースも使われます)、ピアノギターなどです。メロディを吹くことが多い管楽器は、トランペット(似たようなコルネットやフリューゲル・ホーンも使います)、サキソフォーン(主にアルト、テナー、ソプラノ、バリトン。音域が異なる種類があります)、クラリネット(普通のB♭管のほかたまにバス・クラリネットも)トロンボーン(いくつか音域による種類があります)、フルート(普通のもののほか音域の低いアルト・フルートもたまに使われます)などで、まれにチューバ、ホルンが使われることもあります。弦楽器は、ギター、ベースのほかはバイオリン、チェロがたまに使われます。ジャズで使用される打楽器の仲間ではヴィブラフォンが有名です。
 
ジャズの演奏方法
  一般的なジャズの演奏方法を説明しますと、だいたい初めと終わりに「テーマ」部分があります。これは「作曲されたメロディー」「指定された和音進行・小節数」「指定されたリズム」で演奏されます。まあ、スタンダード・ナンバー(みんながおなじみの曲)ではメロディーも演奏者が即興的に変化させて演奏する場合が多いですが。そして、「アドリブ」部分に入ります。即興的に演奏する訳ですね。だいたい一人のプレイヤーの「ソロ」を中心に行われ、何人かが順番にソロをとって「テーマ」に戻ることになります。この「アドリブ」部分では「テーマ」の「和音進行・小節数」と「リズム」と同じものが繰り返されるのが普通です。大編成のバンドでは譜面に書かれた部分が多く、その合間にソリストが即興演奏を行うのが一般的です。
 
本日のレコード 
  初回ですので、ジャズの歴史をおおまかにたどりながら、なるべくいろいろなスタイルの演奏を聴いていきましょう。
 
1. "It Don't Mean A Thing If It Ain't Got That Swing" Ruby Braff / Gearge Barnes Quartet                         "Live at the New School"1974
  まず「スウィングがなくちゃイミないよ」というデューク・エリントンの曲から行きましょう。ギターとベースの演奏する強力なリズムに乗って、ブラフのコルネットとバーンズのギターがソロをとります。
 
2. "Take the 'A' Train" Duke Ellington Orchestra "The Popular Duke Ellington"1967
   デューク・エリントンは1930年代から1974年に亡くなるまで、作曲家、バンド・リーダー、ピアニストとして活躍し、20世紀最大の芸術家の一人として取り上げられることの多く、彼の曲は多くの人たちに演奏されています。
 
3. "I Got It Bad" 同上
  同じアルバムから、アルト・サックスのジョニー・ホッジスのソロを中心としたナンバーです。
 
4. "C Jam Blues" Red Garland Trio "Groovy"1957
  続けてエリントン・ナンバーをピアノ・トリオで聴きましょう。ソとドの二つの音しかない単純な曲からいかにすばらしい即興演奏を生み出すか、聴いてみてください。
 
5. "Freckle Face" Count Basie Big Band "Basie Big Band"1975
  エリントンと並び称されたビッグバンド、カウント・ベイシーのバンドも聴きましょう。
 
6. "Star Dust" Lionel Hampton All Stars "Just Jazz Concert"1947
 ジャズと呼ばれる曲で最も有名な曲の一つがこの「スター・ダスト」でしょう。ヴィブラフォンのライオネル・ハンプトンのバンドで同じ和音進行でいかにさまざまな即興演奏ができるか聴いてみてください。ウイリー・スミスのアルトが有名なメロディーを即興的に変えながら吹く冒頭から、トランペット、テナー・サックス、ベース(弓引きとスキャットのオクターブ・ユニゾンによるソロという名人芸)、ピアノ、ギターと続き、最後に待ってましたとばかりハンプトンのヴァイブが叩き出します。
 
7.8. "West End Blues" "Struttin' With Some Barbecue" Luis Armstrong Hot Five 1927-28
  ジャズ史上、最初に特筆すべき「天才」は1920年代のルイ・アームストロングです。微妙なニュアンスを伝える美しい音色による即興的に生み出されるメロディーは彼以降の演奏家たちに多大な影響を与え、ジャズ音楽の土台を築きました。また彼は「ジャズ」ボーカルの生みの親でもあります。
 
9. "Cotton Tail" Duke Ellington and his Orchestra 1940
  1930-40年代には数多くの大編成のバンドが活躍し、スター・プレイヤーが輩出しました。ここでは3人のテナー・サックス奏者を中心に聴いてみましょう。まずは、エリントンのバンドのベン・ウェブスターです。
 
10. "The Man I Love" Coleman Hawkins "Classic Tenors"1943
  次はコールマン・ホーキンス。
 
11. "Tickle Toe" Count Basie and his Orchestra "Lester Young Memorial Album"1939
  3人目はカウント・ベイシーのバンドで有名になったレスター・ヤングです。この3人によってそれまで比較的地味だったテナー・サックスがジャズの花形楽器になっていきました。ウェブスター、ホーキンスの豪快で男性的な音色とヤングの実にスリリングでモダンなアドリブ・メロディーが次の世代の演奏家に大きな影響を与えました。特にレスター・ヤングのフレーズはテナー・サックスにとどまらず、あらゆる楽器の演奏に大きく影響を与え「モダン・ジャズ」の父とも言うことができます。
 
12.13. "When You're Smiling" "Foolin' Myself" Billie Holiday 1937-38
  そのレスター・ヤングと、ジャズ・ボーカルの最高峰というべきビリー・ホリデイの演奏を聴いてください。
 
14. "Foolin' Myself" Lee Konitz "The Real Rea Konitz"1957
  1950年代、「モダン・ジャズ」の時代にレスター・ヤングの影響から出発して自分のスタイルを完成させた一人がアルト・サックスのリー・コニッツです。
 
15. "You'd Be So Nice To Come Home To" Art Peppaer "Meets the Rhythm Section"1957
  1950年代の名盤からもう一つ。アルトのアート・ペッパーを聴きましょう。彼もヤングとパーカーたちから多くを吸収した天才的即興演奏家の一人です。
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