2001/1/4(木)
渚にて
難波ベアーズ

年始一発目のライブが大好きな渚にてだというのも縁起がよい21世紀であります。なお、難波ベアーズの21世紀最初のライブでもあったこの日、たいてい開場時間のおすハコだということもあって、7時開演のところ、6時40分頃のほほんと到着したのでした。が、いつもと様子がちがう…。店の前には誰もいやしねえ。おそるおそる階段を下りてゆき、受けつけからステージの方を見やるとウワッと声に出したほどの客客客。すでに床が見えないほどギッシリ埋まっていました。渚にての人気が高まっているとはいえ、これほどまでとは。

知り合いの方に手招きいただき、運よくかなり前の方へ行くことができました。その後もどんどん人は増えつづけ、ついにはオールスタンディングに。なんと入場を断られたお客さんもいたそうです。私のポジションからでも柴山さんの頭くらいしか見えなかった…。

なにせ、おそらく初のワンマン渚にて。しかも、関西では99年クリスマス以来のエレクトリック編成。そして同じく関西では初のwith ティム・バーンズ氏(ジム・オルーク・バンド/from USA)ということもあって、一部では静かに期待がふくれあがっていたのでしょう。それは私にとっても言わずもがな。

到着してまず目についたのが、ステージに並んだ2台のドラムキット! 柴山さんギター、雅子さんベース、ティム氏ドラムという頭で臨んでいたのでアレアレなんだこれ、一体どんな編成でやるつもりなんだと期待は高まるばかり。ギュウギュウの会場でじっと待つのもつらいまま、7時20分頃メンバーが登場。あ、もう一人(失礼)いる! 誰だか紹介されないまま終盤まで演奏されましたが、メンバー紹介で志村浩二さん(元・ホワイトヘヴン、現・宇宙エンジン)だと判明しました。当日は志村さんがベースを担当。終始安定したプレイで、しっかりとした土台に徹しておられました。かの日本のサイケデリックバンドの代名詞、ホワイトヘヴンのメンバーだったこともあって、通の方は登場の際には気づいておられたことでしょう。ということは、やはり、ティム氏+雅子さんのツインドラム! これは見事に予想を裏切られました! お正月ということもあり、また、ワンマンだということで、柴山さんもリラックスして演奏するつもりだったようですが、この異常な盛況ぶりにはややひき気味。「もし、疲れたら外に出て休憩してください」、と、優しいのだか何なんだかわからないコメントのあとに演奏はスタート。

本当の世界
結合の神秘
Running Away
川を渡る歌の歌
雪のように
A Girl from the east
太陽の世界
走る感じ
星々
〜アンコール
わたしたち

いつものように「本当の世界」で幕開け。有無を言わさぬ名曲、夫婦によるユニゾンボーカルの迫力にはいつも圧倒されます。「結合の神秘」は頭士奈生樹(ずしなおき)氏の名曲であり、渚にてのレパートリーでもあります。数年前まではアップテンポなアレンジで演奏されていましたが、今回はゆったりとした、優しい演奏でした。「Runnin' away」はスライ&ザファミリーストーンのカバー。リリースこそされていないものの、ライブでは定番となっています。原曲のホーンアレンジを柴山さんが「パパパーパー」コーラスで入れます。雅子さんのボーカルが可愛らしい。「川を渡る歌の歌」(すごいタイトル…)、「星々」もライブではお馴染みですが、春頃予定の新作にきっと収録されていることでしょう。「A Girl from the east」は「彼女のはなし」の改題作。ティム氏のガールフレンド、エリカさんが大正琴でゲスト参加。ポップな原曲が、なんとも無国籍な不思議な曲に生まれかわっていました。

静かにイントロのリフが弾かれ始まった大曲「太陽の世界」。歌が魅力の渚にてと言われますが、私の場合、正直に言うとこの曲のような、スケールのでかい歌とサイケデリックサウンドの溶け合った瞬間にたつトリハダにこそ渚にての魅力を感じるのです。99年に見た際はゲスト参加の頭士奈生樹氏がギターソロをとられていましたが、今回は柴山さん。どう考えても一人で弾けないようなギターは、やはり雅子さんがスチールギターを弾いていたからのようですが、直立不動の観客の只中にあって、私一人ノリノリ。宙を仰いですごい顔をしていたことでしょう。1stアルバムのクレジットを真似るならばそれはまさに「Incredible Solo」。柴山さんのあんなプレイを聴いたのは初めてということもあり、昇天。

やはり無茶をしていたのかギターの弦が切れてしまったようで、演奏後、セッティングも含めて会場はしばし空白(長かった…)。復旧後、雅子さんのカウントで「走る感じ」唐突にスタート。雅子さんブチキレ。グイグイ加速していく演奏にのせて、歌いまくる。しかも、ファズギターのソロまでとるというこの驚き。音階などは超越した(笑)もの凄い演奏。会場中の疲れがふっとぶ快演でした。 定番の最終演目「星々」のあと、ベアーズのSEが入るが熱烈なお客さんからアンコール。「なにぶんメンバーが日本とNYで練習時間がとれなくて…。このメンバーでできる曲はあと1曲だけです」との柴山さんのMC後、「わたしたち」。柴山さんと雅子さんのシンプルなかけあいのこのちょっと気恥ずかしい愛の曲で、この日のライブをスッキリと締め括りました。

久しぶりの大所帯編成ということもあって、やっぱり前ドラムの高橋幾郎さん在籍時との比較をしてしまっていたのですが、日ごとにかわるアレンジも含めて、もちろんまったくちがったリズム。刻みが多くて、曲の姿をより鮮明に浮き彫りにするような。昨年1年間はライブのたびに編成を変えながら試行錯誤を繰り返していたように思われましたが、今回のスペシャル編成でのステージで一つ区切りをつけたように思います。春予定の新作発表を経て、渚にてがこれからどのような発展を遂げていくのか、これからも見守りたいなと思っている1ファンのレポもここらへんで締めなければキリがないですね結句。(01/1/14)

戻る