御挨拶

1993.4.11第8回定演ザ・コンサートホール

電車にマンドリンケースを持ち込むと、興味が有るのに無関心の振りをする大人の視線や、こちらに聞こえるように何気無く“何かなー”と独り言を呟く子供に出会います。又、人とのふれあいが起こる事も有ります。例えば“何やってるの?”“それ琵琶ですか?”とか、うとうと寝ている私を起こして、“君、ヴァイオリンやってるの?”“わし、若い頃にギターを弾いて居たんだよ”“大正琴ですか?”とか。

また、電車内で何の違和感もなく私の楽器ケースを支えにして”今日はええ日だねエ”とおばあさんに話し掛けられたりもしました。はじめて声を掛けらられた時は、まだマンドリンという楽器を持ち歩く照れ臭さと、それが知らない人からであったと云う事に驚いて、ただ“マンドリンです。”と小さな声で応えるのがやっとでした。マンドリンの楽しさに浸り、又、不思議そうな視線を向けられる事にも慣れた今では、“これはマンドリンという楽器で・・・。”と乗車している間中めいっぱいに話し込むこともしばしばです。

“あれ何?”と尋ねた子供に“大きなメトロノームよ。”と母親が答えました。聞こえない振りをしながら心の中で叫ぶ私、
“これはマンドリン!

一人でも多くの人にマンドリンと云う楽器をケースの外から見るだけでなく、その音を聴いて貰えたらなぁと思っています。

本日の演奏会、どうぞ最後までお付き合い下さい。
御来聴有難うございました。

優・Asa