パンク・ロック (punk rock) は、ロックの1ジャンルとして位置づけられる音楽の様式のひとつ。省略してパンクとも呼ばれる。1970年代の商業化され形骸化したロックへの反発から、ニューヨークを中心に発生したスタイルで、後にその影響下の ロンドン・パンクが商業的成功をおさめ、世界的に音楽のみならずファッション面や思想面でも大きな影響を与えた。
音楽的特徴
スリーコード中心のシンプルな曲調を基本とし、ミドルからやや速めのテンポの曲が多い。また、反システムや反暴力、差別の撤廃などを訴える政治的・社会的なメッセージを込めた歌詞、テクニックよりも勢いを重視した攻撃的な演奏も特徴として挙げられる。
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歴史
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ニューヨーク・パンクの誕生
ニューヨーク・パンクは、1960年代中期から後半にかけてアンダーグラウンドで活躍したガレージロック(オリジナル・パンク)バンド(MC5、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、イギー・ポップ&ザ・ストゥージズなど)やニューヨーク・ドールズから派生したものである。ラモーンズ、テレヴィジョン、パティ・スミスなどが有名。ラモーンズ、テレヴィジョンなどのニューヨーク・パンク勢はその音楽的な影響の強さにも関わらず、決して世界的な商業的成功を得ることは出来なかった。音楽的にはポップに分類される要素が大きいものの、最大の商業的成功を収めたのは後追いのブロンディなどである。
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ロンドン・パンク興隆
このニューヨークでのアンダーグランドの動きに注目したのは海の向こうの英国である。ラモーンズのロンドン公演などを機に、ロンドンを中心にニューヨーク・パンクを模倣したバンドが多数結成されるようになる。ロンドン・パンクの特徴としては、初期のロックンロールが持っていた攻撃的で反社会的な面や、スリーコード中心の曲調、前衛的な歌詞などが挙げられる。ファッションにも影響を与え、破れた細いジーンズ、古Tシャツ、革ジャン、よれよれのジャケットなどが若者の間で流行した。イギリスで最も大きな成功を収めたのはストラングラーズとセックス・ピストルズであるが、この2大バンドのアメリカ進出は成功とはいえなかった。むしろ後発のクラッシュがアメリカではそれなりの成功を収めた。
ストラングラーズは、1974年にロンドンで結成される。彼らの斬新さはニューウェーブと呼ばれ次第に人気がでるようになり、アイスクリームバン(アイスクリーム販売用のバン)に楽器を載せ、イギリス中で毎日のようにライヴを行った。反体制のシンボルとして右翼団体の襲撃も受けることもあったが、人気はうなぎのぼり、各アルバムをイギリスのトップ5に送り込んだ。
クラッシュは1976年にロンドンで結成され、翌1977年『白い暴動』でデビュー。1st、2ndアルバムは音楽的にパンク色が強いものであったが、精神的なパンクを追求した彼らはパンクと同じ精神を持つレゲエや、カリプソ、ロカビリーへの接近を試み、1979年に3rdアルバム『ロンドン・コーリング』を発表する。このクラッシュや、ザ・ジャム、ネオモッズ・ムーブメントで、スペシャルズなどの2トーン系バンドが人気を博した。
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セックス・ピストルズ結成
アメリカに渡り準メンバーとしてニューヨーク・ドールズに関わったマルコム・マクラレン(後にアダム&ジ・アンツ、バウ・ワウ・ワウのマネージャーを勤める。)が、ロンドンで、アートスクールの仲間ヴィヴィアン・ウエストウッドの店SEXに出入りしていた若者を集め、店の宣伝のために、1975年、セックス・ピストルズが結成された。テレヴィジョンのリチャードのファッション、破れたシャツ、安全ピン、逆立てた髪を真似、傍若無人な言動を繰り返す彼らはイギリスで話題になり、パンクがアンダーグラウンドから一躍、メジャーなものとなった。それまで大学のキャンパスでしか口にされることのなかった、Anarchyと言うフランス語源の言葉をポップ音楽の中に取り入れた。その後、ジェネレーションXなどフォロワーが次々に生まれイギリス・パンクシーンは一気に盛り上がった。後に巨大な成功を収めるポリスでさえ、デビューアルバムはパンクであった。
特にイギリスでは、失業者の増加と言う社会問題と相まって社会や体制に対する反抗的な姿勢、怒り、乱暴な演奏などによって大きな社会現象となる。後の音楽はもとより、ファッション、芸術、文学に至るまでその波は広がっていくことになる。しかし、話題性とファッションだけが先行し、さらにブームの火付役であったセックス・ピストルズの初のアメリカツアーが失敗に終わり、オリジナルアルバム1枚を残しただけで解散する。それでもセックス・ピストルズ以上に髪を逆立たせ、服を破いたスタイルのパンク・ファッションは世界に広がっていった。1980年代のロンドンでは外国からの観光客向けのパンク・ファッションで街頭に立ち、写真を撮られる度にお金をもらうビジネスもあった。(ちなみに日本ではこういった行為は違法である)
セックス・ピストルズのリードボーカルだったジョン・ライドンは、P.I.L.(パブリック・イメージ・リミテッド)を結成。前衛的、実験的なサウンドや缶のジャケット、45回転のアルバムがなどの新奇・斬新なアイデアは従来のパンク・ロックのファンの間には決して評判は良くなかったが後世の音楽的な評価は高く、またその独特のサウンドはむしろダンス音楽などのミュージシャンに大きな影響を与えている。
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1980年代のパンク・ロック
1978年のセックス・ピストルズ解散により「パンクは終わった」と当時のメディアは書きたてたが、イギリスにおいては、1980年代に入り、よりハードコア(極端)なサウンドをよりスピードアップされたリズムに乗せて政治的なメッセージを伝えるパンクバンドが次々と生まれる。いわゆる1981年から82年にかけて起こった「ハードコア・ムーブメント」であり、ディスチャージ、G.B.H.、ジ・エクスプロイテッドといったバンドが次々に登場、シーンは活性化する。イギリスのハードコアの源泉となったのは、エセックスのコミューン出身のバンドクラスだとされる。クラスは徹底的な反システム、アナーキズムを貫き、パンク・ロックにより過激な主張を持ち込んだ。
また、ハードコアとは別にイギリスでは、ストリートとより密接に結びついたOi!パンクが勃興する。シャム69、コックニー・リジェクツなどを中心とするこのムーブメントは、音楽的にはロンドン・パンクと大差は無かったが、当時のポップミュージックの中心だったニューウェーブに反目する意味合いがあった。
そして84年ロンドンでは、パンク・ロックとケルト音楽を融合したアイリッシュ・パンクの始祖ザ・ポーグスがデビューする。その後、エルヴィス・コステロやジョー・ストラマーなどにプロデュースされ人気を博した。現在活躍するフロッギング・モリーやドロップキック・マーフィーズなど、彼らから影響を受けたバンドはポーグス・チルドレンと呼ばれている。
アメリカにおいても、1970年代後半にニューヨーク・パンクやロンドン・パンクに影響を受けたバンドが次々と誕生、ブラック・フラッグやバッド・ブレインズといった有力バンドにより各地でハードコア・シーンが生まれ、1980年代前半にUSハードコア・シーンは盛り上がりを見せる。1980年代後半にはハードコアは多様化を見せ始め、特にスラッシュメタルとのクロスオーバーが盛んになる。
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グランジ・ブーム
アメリカにおけるハードコア・ムーブメントはアンダーグラウンドな動きにとどまったが、その過程において各地のバンド、インディ・レーベルを結ぶネットワークができあがる。そのような状況下、サウンドガーデンやグリーン・リヴァー、マッドハニーといったバンドがシアトルのインディ・レーベルサブ・ポップより次々とデビューし、シアトルのアンダーグラウンドシーンは盛り上がりを見せる。そして、1980年代初めからニューヨークのアンダーグラウンドシーンで活躍していた ソニック・ユースが、1990年にメジャー・レーベルゲフィンよりデビュー、翌1991年にはニルヴァーナが『ネヴァーマインド』でメジャーデビューし、全世界で1,000万枚を売り上げる大ヒットを記録する。その後パール・ジャムなどが次々とメジャーデビューし、グランジ・ブームが訪れる。
当時のアメリカは1980年代のバブル景気崩壊後の深刻な不況に見舞われ若者が未来に希望を持てない状況であったが、それはパンク・ロックが大流行した1970〜80年代のイギリスと酷似しており、それゆえにグランジは「90年代のパンク革命」といわれる。
しかしながら、1994年にニルヴァーナのリーダーであったカート・コバーンが自殺すると、グランジがオルタナティブ・ロックに呑み込まれる形で、グランジ・ブームは急速に終焉を迎える。
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ポップ・パンク(メロコア)の台頭
1980年代後半にバッド・レリジョンが、パンク的なサウンドをよりメロディックにスピーディーにさせたスタイルを確立。NOFX、スナッフ、ペニーワイズや、イギリス系パンク・ファッションを継いだランシドなどがその音楽性を発展させ、そのサウンドはポップ・パンク(メロディック・ハードコア)と呼ばれるようになる。
そして、1994年、グリーン・デイのメジャーデビュー、オフスプリングの3rdアルバム『スマッシュ』の大ヒットにより、ポップ・パンクが爆発的なブームを巻き起こす。
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ポスト・ハードコアの時代
世界中でグランジが流行する1990年代前半、よりハードコアな姿勢を貫こうとするバンドが現れるようになる。特にストレート・エッジの思想を持つイアン・マッケイ率いるフガジは反抗精神とアンチ商業主義を持ち続け、いつしかその音楽性はエモ・コアと呼ばれるようになる。そして、ポップ・パンク・ブームも落ち着いた1990年代後半から数々のフォロワーが生まれ、現在に至る。
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パンク・ロックが後世に残した意義
現在に至るも英国のミュージシャンにはそのロック、ダンスなどそのジャンルを問わずパンク精神を掲げるものが非常に多いが、ここで言われるパンクとは音楽の形式よりも精神的なものをさすことが多い。この点に置いてパンク・ロックというとハイテンポのポップで激しい音楽を指すアメリカのパンク像とは少々パンクという言葉の意味がことなることに留意すべきだろう。
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主にパンク・ロックに分類される海外のアーティスト・バンド
アディクツ The Adicts
アベンジャーズ The Avengers
アルカライン・トリオ Alkaline Trio
ジ・アンシーン The Unseen
アンチ・ノーホェア・リーグ The Anti-Nowhere League
アンチ・フラッグ Anti-Flag
イーター Eater
イエローカード Yellowcard
イギー・ポップ&ザ・ストゥージズ Iggy Pop & the Stooges
ヴードゥー・グロウ・スカルズ Voodoo Glow Skulls
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド Velvet Underground
ザ・ウォーリアーズ The Warriors
AFI
ジ・エクスプロイテッド The Exploited
X
エックス・レイ・スペックス X-Ray Spex
MxPx
MC5
ジ・オーディナリー・ボーイズ The Ordinary Boys
オフスプリング The Offspring
カオスU.K. Chaos U.K.
ザ・カジュアルティーズ The Casualties
キリング・ジョーク Killing Joke
グッド・シャーロット Good Charlotte
クラス Crass
クラッシュ The Clash
グリーン・デイ Green Day
グリーンランド・ホエールフィッシャーズ Greenland Whalefishers
コックニー・リジェクツ Cockney Rejects
コック・スパーラー Cock Sparrer
サム41 Sum41
G.B.H.
ジェネレーションX Generation X
ジャームス The Germs
ザ・ジャム The Jam
シャム69 Sham69
ジョイ・ディビジョン Joy Division
ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ Johnny Thunders & the Heartbreakers
スーサイド Suicide
スージー&ザ・バンシーズ Siouxsie & The Banshees
スクリーマーズ Screamers
スティッフ・リトル・フィンガーズ Stiff Little Fingers
ストラングラーズ The Stranglers
スナッフ Snuff
スペシャルズ The Specials
311
スリッツ The Slits
セインツ The Saints
セクション5 Section5
セックス・ピストルズ The Sex Pistols
ゼブラヘッド Zebrahead
セレクター The Selecter
ソーシャル・ディストーション Social Distortion
ダムド The Damned
タワーズ・オブ・ロンドン Towers Of London
チェルシー Chelsea
TSOL
ディクテイターズ The Dictators
ディスチャージ Discharge
ディーヴォ Devo
デッド・ケネディーズ Dead Kennedys
ザ・デッド60s The Dead 60s
デッド・ボーイズ Dead Boys
テレヴィジョン Television
トーキング・ヘッズ Talking Heads
ドゥーノッツ Donots
ドッグス (仏) Dogs
ドッグス (英) Dogs
ドロップキック・マーフィーズ Dropkick Murphys
999
ニュー・ファウンド・グローリー New Found Glory
ニューヨーク・ドールズ New York Dolls
NOFX
ノー・ユース・フォー・ア・ネーム No Use For A Name
ハード・スキン Hard Skin
ザ・ハイヴス The Hives
バイブレーターズ The Vibrators
バウハウス Bauhaus
バズコックス Buzzcocks
バッド・ブレインズ Bad Brains
バッド・マナーズ Bad Manners
バッド・レリジョン Bad Religion
ザ・ヴァンダルズ The Vandals
パティ・スミス/パティ・スミス・グループ Patti Smith
ザ・パディントンズ The Paddingtons
パブリック・イメージ・リミテッド P.I.L.
ザ・ビジネス The Business
ビリー・アイドル Billy Idol
ブームタウン・ラッツ The Boomtown Rats
フォー・スキンズ The 4-Skins
プラズマティックス Plasmatics
ブラック・フラッグ Black Flag
ブリーフス The Briefs
ブリッツ Blitz
ブリンク182 Blink 182
フロッギング・モリー Flogging Molly
ブロンディ Blondie
ペニーワイズ Pennywise
ザ・ボーイズ The Boys
ザ・ポーグス The Pogues
ボディージャー Bodyjar
マイティー・マイティー・ボストンズ The Mighty Mighty Bosstones
マイナー・スレット Minor Threat
マッドネス Madness
ミスフィッツ Misfits
ミレンコリン Millencolin
メスト Mest
U.K.サブス U.K. Subs
ユースレス・アイディー Useless ID
ラグワゴン Lagwagon
ザ・ラスト・リゾート The Last Resort
ラモーンズ Ramones
ラッツ The Ruts
ランシド Rancid
ランディー Randy
リチャード・ヘル&ザ・ヴォイドイズ
ザ・リバティーンズ The Libertines
ザ・リヴィング・エンド The Living End
レス・ザン・ジェイク Less Than Jake
レッド・アラート Red Alert
ワイヤー Wire
Angelic Upstarts
Combat 84
Rudimentary Peni
日本のパンクバンドのリストについては、日本のパンク・ロックの項へ。
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関連項目
日本のパンク・ロック
ガレージロック
ニューウェーブ/ポストパンク
ハードコア・パンク
アナーキズム
グランジ
Wikipediaより引用