POPEYE ポパイ 1981 3月25日号 270yen 平凡出版株式会社 P143
オレたちは
退屈なジイさんには
なってない!
  文●増渕英紀










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いまや、伝説のスーパーグループとして名前だけは誰でも熟知している バッファロー・スプリングフィールドのメインメンバーであり、 これまた70年代初めの超スーパーグループでもあったクロスビー・スティルス ・ナッシュ&ヤング、そして解散後マナサスというグループを結成した スティヴン・スティルス。その彼が、本当にフラリと突然、日本にやってきた。 もちろん、彼はマナサスをやめ、最近はソロアルバムとか、再結成したCS&N (つまり、ニール・ヤングだけ加入していない)で現在なお、 第一線で活躍しているわけだが、そのスティルスとインタビューの時間を 持つことができた。

Q 今回の来日の目的は?

スティルス-多くのミュージシャンが日本でコンサートを開いているけど、 僕だけはまだだから今年こそ日本でコンサートを開きたいと 思ったのさ。丁度CS&Nも再結成したことだし、CS&N としのて来日公演のセットアップのために来たんだ。

Q 再結成後のニューアルバムの予定は?

- ニューアルバムの曲はもうすでに16曲完成していて、 クロスビーの休暇が終わり次第、ハワイのオアフ島で レコーディングすることになっている。発売は早ければ6月、 遅くても夏までには実現するはずだよ。

Q 最近はCS&Nも含めて60年代のベテラン勢がまた活発な 動きを見せているけど・・・・・・。

- 70年代はとにかくエラク退屈な時代だったからね。そこで 面白くしなくちゃというわけで古手のミュージシャンの復活になった わけだ。ティーンエイジ・バンドもたくさん出てたけども、 結局僕らが前にやってたことを焼き直しでやっているだけさ。彼らは 我々をジジイと呼んでいるけど、確かに歳ははとったが 僕らは決して退屈なジジイにはなっていないつもりだ。

Q 前のソロアルバム『スルーフェアー・ギャップ』を聴いて 感じたんだけど、音楽的にはよりソウルっぽく、反面ギター・ソロ はジミ・ヘンを思わせるほど力強いうねりがあったけど、CS&N の新作もそういった要素が強くなるんだろうか?

- 再結成のCS&Nは昔と打ってかわって、ロックンロール、 ソウル色が強くなることは確かだ。ヘヴィでエレクトリックな サウンドだよ。ギターに関していえば、リードギターの弾き方を 教えてくれたのはジミ・ヘンドリックスだったんだ。だから当然 その影響も強く出てくるんだと思うよ。

Q ところでさっき70年代が退屈だったという話が出たけど、 何故つまらなくなったんだろう?

- ビッググルーップの多くはひとりよがりになって自分たちだけの トリップと楽しんだり、友人にテープを聴かせて悦に入ったり してたからな。一番大切なコミュニケーション、お互いの 考え方、思想の交換とか意志の疎通を欠いていたんだ。つまり 創造的なプロセスを吹くことを忘れていたんじゃないかな。

Q レコーディング技術の発達も拍車をかけたんじゃ なかろうか。TOTOとかBOSTONといったメカニックで無味乾燥な グループの登場はその象徴のような気がするんだけど・・・・。

- そう、要するにスタジオワークに懲りすぎるあまりを忘れたんだ。楽器は自分の意志や完成で弾くものだということを 忘れて、反対に楽器に振り回されてしまったというわけさ。でも、 また歌に帰ってくるよ、80年代はね。

36歳の人間で、父親だ

Q ところでその80年代の初頭にレーガン大統領になった ことにかんしてはどう思う?

- (笑いながら)またプロテストソングを歌わなくちゃ いけないかな。おかげで風刺マンガ家の仕事も増えるだろう。

Q 先に来日したグレイトフル・デッドのミッキー・ハートが ロックミュージシャンにとって、
やりにくい時代 がクルかもしれないといっていたけど・・・・。

- ひとついえることは、我々も60年代に比べるとしたたかで 多少頭も使うようになったから、決して簡単には弾圧を受けない ということさ。最近はスーツを着て人種、権利の平等問題、 原子力問題、パナマ運河、キューバのことなど、政治的な問題に 関してワシントンに足を運ぶこともあるんだぜ。ミュージシャンよりも 以前に人間として36歳の父親として、何かできることをやりたいと思っているからさ。 そして、何よりもまず人々がお互いに理解し合うことが大切と思う。 例えば日本に関して、第二次大戦と、アメリカよりイイ車を造って いるというイメージ以外のことも知るべきだよ。経済的にも つながっている日本とは、国と国の間ではなくて、文化芸術の分野での コミュニケーションがもっと必要だと思うね。日本の哲学、 歴史などに関しても、もっとアメリカ人は勉強しなくちゃ。僕が最近ラテン音楽に 関心を持っているのはそのこともあるんだ。音楽は心の伝達手段としては 最も効果的さ。

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