今はなき遊園地での体験そしてうつりゆく世

今はもうない、かつては繁栄した、遊園地に行ったことがありますか?

私は、とある遊園地で今も忘れられない面白い思い出があります。そしてその遊園地は、その時予測した通り、数年後に倒産しました。

実名を出す事はできないので(笑)X市のY遊園地とします。ただ、この遊園地での思い出は私にとっては大切な思い出で、倒産した理由を追及したりするものではありませんので、予めお断りしておきます〜。

どうして遊園地のことを思い出したかというと、先日インターネットでバンドが演奏できそうなイベントなんかを探していたんです。そうしたら色々ヒットする中に、遊園地のスペシャルイベントデーとかも出て来て、繰り返し色々検索しているうちに、「今はなき遊園地」などという言葉が目に入ったんです。あの遊園地を思い出し、今はどうなっているのか知りたくなって、入ってみたんです。

ありました。案の定、もう閉鎖していました。そして閉鎖直前の写真なども掲載されていました。

やっぱり潰れたか〜。そうだよなあ。やっぱなー。とかつぶやきながら見ていたのですが(この時点で水木ノアAND認知の営業は忘れている)、ある意味楽しい思い出となっているあの遊園地がなくなってしまったことは、やはり悲しく感じました。でも、その遊園地の思い出は爆笑です。

----------------

約10年前のことになりますか。久しぶりに地元の友達と遊園地に行きました。子供の頃に行ったきり、遊園地は久しく行っていなかったのでわくわくしながら向かいました。

駐車場に着くと思ったより車は少なかったのですが、秋口の、肌寒い土曜日だったので、今日はちょっと曇っているからお客さんは少ないのかな〜と思い別段気にもせず入場。

受付には私達の前に一人男性がいて、チケットを購入していました。

遊園地に男が一人?ちょっと不思議には思いましたが、あ、待ち合わせしているのかも〜、と思い別段気にもせず私達も購入。

音楽は鳴っていたので遊園地に来たな〜!という感じがあってやっぱりわくわくしました。

少し進むと、観覧車があったのでとりあえずは観覧車でせっかく来た街の様子を見ようと観覧車の受付へ行ったのですが、ボックスの中には誰もいない。あれートイレにでも行ったかな?と思いつつしばらくそこで待っていたらおじさんが走って来て、「乗るの?ごめん!今動かすよ!」と行って、観覧車専用のミュージックをいきなり爆音スタートさせました。

へんなのー!でもなんかシュール〜とか思って観覧車へ乗り込みました。

まあそこは田舎なので、上に上がったら、田んぼと道路と、ぽつぽつとある民家しか見えず、実家でいつも見なれている風景なので、フツーに、「やっぱりここもあまり変わらないね〜」とか言いながら持って来てたお茶をすすって終わるまで待ってました。

降りてからさてどうするかなーと思い周りを見渡したときに、他の遊園地とはちょっと違うことに初めて気付いたんです。

お客さんがいないわけじゃないんです、でも、お客さんがいる、という言葉もちょっとあてはまらない。そんな感じの、微妙な雰囲気。そして不思議に思ったのは、アトラクションが、全て動いているわけではなく、半分くらいは、お休みなんです。

で、よく見るとお客さんはアトラクションに乗ることよりも、そのへんでぶらぶらしている人の方が多くて、子供連れも、親はベンチに座って、子供がその辺で走り回って遊んでいる。普通、遊園地に来たらまず、遊園地にしかないものを乗るのが目的では?

でも、お客さんは全体的に、「散歩」の雰囲気。。。

ここに来ている人たちのほとんどはおそらく近場の人達で、アトラクションがちゃんと動いていないことも知っているのか、全然平気で、動いているアトラクションだけを選んで乗っていて、クレームしている人などもいない。

なんだあ?今日は半分だけ休業?なんだそれー。とか思いながら、すごく大きなものや怖いもの(ジェットコースターとか、船が左右に揺れて怖いやつ(名前を忘れた))などが動いていないんだけど、全てが動いていないわけでもないため、何か事情があるのかもしれないと思ってしまうような様子なもんだから、クレームするにも微妙で。。。

で、とりあえずコーヒーカップに乗りました〜。隣の子供がぐるぐる激しく回すもんで私もつられて廻り。げーこんなもんでもやっぱり気持ちわる〜と思い。

友達に「やっきになって回すからだよ」などと言われながら終わって降りて来て、その次は遊園地内部を通っているサイクリングに乗ったら、後ろから来た超速のガキにあおられ、疲れてハヒハヒ言って、とりあえず休むか、ということで売店みたいなところを探しました。

ホットドック、ソフトクリーム、と書いてある小さな売店に行くと、おばちゃんが椅子に座ってこっちを見ていました。ここはたばこ屋か!

この時点で、ここはかなりショボい遊園地だということはもう気付いていたんですけど、こういう状況を逆におもしろがる私達ですから、他の意味で楽しんでいました。

ソフトクリームが食べたいと思い、売店の前に立つと、厚紙に毛筆ででっかく書いたメニューがぶら下がっていました。

バニラ チョコ バニラチョコミックス ストロベリー ストロベリーチョコミックス バニラストロベリー とかだったと思う。メニューの記憶は定かではないのですが、私とおばちゃんの会話からして、こんなメニューだったはずと推測。

私    「スロトベリーチョコミックスください。」

おばちゃん「それは今やってないんだー。」

私    「あ、そうなの。。うーん、じゃあチョコだけでいいです。」

おばちゃん「チョコもないよ。」

私    「え?チョコもないの?じゃあストロベリーチョコミックスもチョコもできないんじゃん!」

 

おばちゃん「そうだよ、チョコのあるやつはできないよ。」

私    「なんだー二つも消えた。じゃあストロベリーだけ。」

おばちゃん「ないよ。」

私    「へええええ?ストロベリーもないの??

じゃあ、なに、結局バニラしかやってないってことじゃん?!」

おばちゃん「そう、バニラだけだよ。」

私    「それを先に言ってよおばちゃん!」

おばちゃん「わはははは!そだねー!」

故意に私をからかったのか、天然なのか知らないがとりあえずしぶしぶバニラソフトクリームを買ってベンチに座り休憩。

 

友達が異なものを発見。

「動物園」

ナニ?動物園??ここに?

 

スロープがあって、動物園というでかい看板のある建物へ続いている。これは行かなければ。遠目にも異常事態に気付く。プレハブ小屋なのである。

動物園にプレハブ小屋はミスマッチ。しかし余計に興味をそそられ、早速向かう。特別入場料はとられないらしい。受付もないのでそのままスルー。

。。。。誰もいない。動物はいない。そして薄暗い。

なんだここは。。。と思いながらぐるーと建物の中を見渡すと、壁一面に、水槽とかガラスケースが置いてあるのがわかりました。

なんかいるのかな?と思って近寄ると、なんとそこには「サソリ」の文字が!

なぬ!サソリがいるのか?この中に?!

ガラスケースに顔を近付けたんだけど、砂ばっかりで、サソリらしきものは見当たりません。なんだあ〜いないのかあ〜?四方から覗いてみたんだが、サソリは発見できず。

そしてその隣には、なんともはや、「タランチュラ」の文字が!

なぬ!タランチュラがいるのか?この中に?!

ガラスケースに顔を近付けたんだけど、やっぱり砂ばっかりで、タランチュラらしきものは見当たらない。その上、上の蓋がありませんでした。。。

なんてシュールなところなんだ。もう既にやる気をなくしているんだきっと。

頑張って立て直そうとする時代も通り過ぎ、倒産を待つだけの状態になったところへ、私達は来たのかもしれない。ある意味貴重な体験かもしれない。。

そんなわけで、このY遊園地に午前中に到着して、店員を催促してムリムリ観覧車に乗り、コーヒーカップに酔い、敷地内サイクリングコースでハヒハヒ疲れて、おばちゃんにバニラソフトクリームを無理やり買わされ、入れ物だけの動物園を見て廻り、腹が減ったんだけど遊園地内には食事ができそうなところがないので(レストランは閉鎖)、デニーズでも行くか、ってんでおよそ3時間の後に昼飯を食べるため遊園地をあとにしました。。

デニーズでは案の定、盛り上がりました(笑)。

Y遊園地が完全に閉鎖したのは数年前でした。そうすると、私が行ってからも後数年は営業していたことになる。それ自体も驚きです。。

ノアの、とっても楽しい遊園地の思い出です。

------------

ここで少し話が飛ぶけど、せんに書いたニューオリンズの例にもあるように、私はかつてそこにあったもの、かつて建っていた建物、に弱いんです(笑)。それらはもうないものだから、目にすることはできないんですが、写真などがあるじゃないですか。遠い昔の写真などを見て、かつてはここにはこんなものがあった、かつてこの街はこうだった、ということを知ると、とってもノスタルジックになるんです。なので、あの遊園地が、閉鎖、ニュースを知った時には、当時のY遊園地の写真を食い入るように眺めたものです。

写真が出回り始めた明治初期から、昭和の写真なんか特に。そしてそれが今よく知っている場所だったりすると、ほんともう、何時間でも見入ってしまう。

今の新宿って、昔はこうだったのか!とか、あの建物が立つ前は長屋があったのか!とか、そういうのを見るのって、本当に好きなんです。

目まぐるしく建物や町並みが変わって行く現代こそ、それはとても多い。

最近の例でいうと、私は5年くらい前に高円寺に住んでいたのですが一度引っ越して高円寺を離れました。そして今は阿佐ヶ谷に住んでいるのでいつでも高円寺に行けます。引っ越ししてから久しぶりに高円寺に行ったら、あると思っていた店がもうなくて、別な店になっているんです。そしてその建物も立て直されていたりすると、もう私はそこでしばし呆然とします。

そして、かつての様子を、事細かに思い出しては、感傷に浸るんです。特に自分が住んでいたアパート、その周辺、街は、本当に感傷に浸れます。

あの遊園地もなくなってしまった。ニューオリンズもかつての状態はなくなってしまった。高円寺もどんどん変わるんだ。

ああ、うつりゆく世、さだめなき水木ノア。