玉川上水に入らないで下さい

私は先日、用事があって三鷹に行った。懐かしい。私は20〜23才まで三鷹に住んでいた。今はもう1年に2、3回しか行かなくなっていたので、あまりに変化しているのに驚きながら、ちょっと懐かしいので散歩をすることにした。三鷹ってのは非常に文学的な街だ。シブリの森美術館の近辺を歩いていると、ある立て看板が目に止まった。

「玉川上水に入らないでください」。

 

この文字を見たら、私の予想では、ほぼ大半の日本人の大人が、太宰治を思い出すんじゃないかと思うが。え?思い出さない?三鷹に住んでいるころはこの立て看板を見つけることはなかったのでちょっとした発見だったんだけれども、「玉川上水に入らないでください」という文章それ自体に、なんだか太宰を思わせるというか、思い出せ、という三鷹市の意図を感じるのは私だけだろうか??

もしそうだとすると、三鷹市と太宰の関連を強調したい三鷹市として、玉川上水近辺に、「太宰治は玉川上水で入水自殺をはかりました」と書くのは直接的すぎるので、「玉川上水に入らないで下さい」という言葉によって、「ああ太宰は入って死んだんだよな...」と、人に思い起こさせる、という効果を狙っているのかもしれない。

やいこら、そんなことは考えてなかったぞ、お前の考え過ぎだ!というならば、単純に今でも玉川上水に入ろうとする人がいるから、「入らないで下さい」と書いたのかしら。とにかくね、玉川上水=太宰治という図式が、もう自然になている。少なくとも私は。

 

ちなみに太宰が入水自殺をしたのは昭和23年(1948年)6月13日夜半です。山崎富栄さんと共に入り、遺体は19日に発見されたそうです。