スズメの埋葬

私は道を歩いていました。そうしたらすずめの御遺体が歩道に小さく倒れていました。しゃがみこんでじっと見てみると、目をつむり、きちんと羽をたたんで冷たくなっていたもので、少しちょんちょんとやってみたのですがやっぱり完全に亡くなっている様子でした。倒れていたところはコンクリートでしたが、すぐそばには歩道と車道をわける垣根がありまして、土の部分がありましたので、私はその土の部分で柔らかい所を手で掘り起こし、穴を作って、そのすずめを埋めたのでした。すずめを埋めたのはこれで3回目です。1、2度は小学生と中学生の頃で、飼っていた猫が捕まえて死に至らしめたものです。猫がすずめを捕るのは習性ですから致し方ない。申し訳ありません、成仏してくださいね、と言いつつ土に埋めてやりました。そんなことを思い出しながら、このすずめはどこにも傷がなく、綺麗にただ寝ているだけの様に見受けられたので、寿命だったのかな、などと根拠のないことを考えながら一応手を合わせ、埋めたことがわからないように土を直してその場を立ち去りました。

次の日、また私はその道を通りました。実は、埋めたことはすっかり忘れていたんです。これは本当です。実際思い出すと、埋めてからその道をまた歩き始め、郵便局に着いたあたりにはもう、埋めたことはすっかり忘れていました。私の日記をよく読んでいる方はもうお分かりのように、私はよく忘れるんです。ま、それはいいとして。。

次の日もその道を通りましたが、歩いている間は全く忘れていました。しかしですね、この感覚を言葉で説明するのはとても難しいのですが、なんだか知らないが突然、植木に目をやったんです。とその瞬間に目に入ったのは私が昨日土を掘り起こしてすずめを埋めてまた元に戻した、その部分でした。そこで初めて、あ。ここにきのうすずめを埋めたんだった。と思い出したんです。不思議だと思いませんか?思わない?心理学的に説明するとすればこうです。すずめを埋めた時、無意識に視界に入っていたまわりの景色が頭に残っていて、なおかつ埋めた後、その行為自体を顕在意識上では忘れたものの、無意識には残っていた。次の日またその場所を通り過ぎる時、同じ景色を無意識がキャッチし、すずめを埋めた事をしっかり意識する前に、自然と埋めたその場所を見る事になった。というわけで、言ってみれば忘れていたことを脳が勝手に思い出した、ということですか。

だがしかし。私はここで、あくまで霊的に考えるのです(笑)。心理学科の異端児と呼んで下さい。すずめを埋めたことなんてすっかり忘れてしまっていたけれども、そこを通る時、埋められたすずめが、「私はここにいます。ありがとう。」と言ったんです。きっとそうです。それで私はここにすずめが埋められていることを思い出し、「成仏しろよ。」とつぶやいて通り過ぎたのでした。他人が見たら、まさに新宿のイッちゃった人ですな。雑踏を歩いていたら突然見知らぬ人との通りすがり、「成仏しろよ。」と言われた。こんなことを自分が経験したら、怖いです(笑)。通りすがりにその言葉を聞いてしまったあのおじさん、あなたのことではありませんので、今頃気にしていたらすみません。