譜面台の陰から






                     >緊張について・・・(二)<
  






 発表会が目前に迫ってきた。
今回は大曲に挑戦する生徒が多く、
極めてレベルの高い曲が並んでいる。
緊張といういかにも足を引っ張りそうな、
得体の知れない敵もそれだけ大きいものとなる。

緊張するということが、
一体どういう現れ方をするのだろうか・・・。
個々同じということはまずない。
しかし、現れる現象は似通っていることが多い。
ギターを弾くという行為が同じなのだから、
それはそれ当然だだろう。

緊張の現れ方を少しまとめてみよう。
そこから具体的な対策を考えてみたい。

まず一般的なのが、
ステージに出て椅子に座ったとたんに、
手足がに震えが来るパターン。

もう少しタイムを下げて、
椅子に座って構えるまで平静でありながら、
弾こうとしたとたん右手が震え始めるパターン。

もう少しタイムを遅らせて、
曲の途中まで無事に弾いてきて、
いきなり手が震えだすパターン。

手が震えるだけでなく足も震えて来るパターン。

だいたいこんなところが緊張の現れるパターンだと思う。
これらをどうしたら防ぐことができるのか・・・。
あまりひどい緊張を起こしてしまうと、
演奏が破たんしてしまうのは火を見るより明らかだ。

この種類別の緊張で一番怖いのが、
流れもよく演奏してきて、
いきなり緊張が走って手が震えるパターンだ。
これはまずその後も演奏を続けることが困難になる。

一番被害が少なく収まるのが、
最初緊張して思うように手が動かない状態で初めて、
徐々に落ち着いて来るパターン。
これは最初ミスが多くなる欠点はあるが、
後半持ち直すことがほとんどだ。
始末のいい緊張の仕方と言える・・・。

大きく分けるとこの二つが叩かないといけない、
緊張の仕方だと思う。

曲の途中で緊張が走る場合の原因の一つに、
演奏が意外によく弾けてる場合がほとんどだ。
聞いてる方も流れに酔ってしまうような演奏だ。
なぜそこで余計な緊張が走るのだろうか・・・。

まず手が震える直前に余計なことが頭をよぎるのが原因だろう。
演奏がうまくいってれば、
そこに意識の空白が生まれる。
これは難しいことなのだがうまく流れていると、
うまくいっていることへの不安というのだろうか・・・。
そこに少し意識から遠くなっていた危機感が一気に襲いかかってくる。
曲が流れよく進んでるだけに、
まったく無防備になっている意識の空白に、
それが飛び込むと全く抵抗することができなくなる。

一瞬忘れていた危機意識が具体的になると、
人間というのは一気に筋肉は緊張状態に入る。
筋肉の収縮は手の震えとなって具体化する。
この場合はまず演奏に復帰することは不可能だ。
短時間に危機意識を平静に戻して、
また演奏する時間というのは舞台にいる本人には、
耐えられない長さとなってしまう・・・。
結局、そこで演奏は終了となる。

ここまで具体的に分かっていれば、
そこに対抗措置があるのではないか・・・。
完璧というのは人間の意識に関してはないわけだが、
防ぐための手を尽くすことはできる。

これはもう舞台に出る直前のことでは防ぐことはできない。
これは本番が始まる前からのトレーニングが必要だ。

まず暗譜して弾けるようになるのが前提なのは当然だが、
自宅でできることに、
イメージ方がある。
これはギターの演奏に限ったことではないが、
演奏する前に舞台の左手から出るのであれば、
その通り左手から数歩歩いて、
椅子の横に立ちお辞儀をする。
前に人がいることを意識して演奏を始める。

このとき録音装置のスイッチをオンにして、
一回限りの演奏だというのを強調しておくのもいい方法だ。
一回限りと限定されるとそれだけで緊張するものだ。

最後まで無事に弾きとおせればまずまずの結果だ。
このとき演奏をやり直しては絶対にいけない。
なにがあっても最後まで弾きとおすことが重要な意味をもつ・・・。

この方法でミスなく弾きとおすことができれば、
まずまずの結果は出ると思う。
さらに発表会本番前にリハーサル会が用意されているので、
そこを最大限に利用する。

では、リハーサル会ではどうするのか・・・。
まず人が目の前で聴いていることをよく意識して、
ゆっくり歩いてしっかり一番後ろを見てお辞儀。
この時点ですでに大体緊張している。
椅子に座って足台と椅子の高さが、
自分に合っているかどうかを確認。
これが合っていないのに弾きだすと、
まずうまくはいかない。
演奏するというのは微妙なものなのだ。

こういうことは会が始まる前に、
必ず確認しなければならないことの一つだ。
足台と椅子の高さが自分に合っているかどうか、
始まる前に確認しておくことだ。
その行動をきちんとするだけで、
ずいぶん気持ちは落ち着いてくるものだ。

会が始まってから気がついたのでは、
単にプレッシャーになるだけで、
もうそこでその演奏はほぼ終わってしまう。

緊張そのもの自体をどうするのか・・・。

緊張というのは基本的には止めようとしてはいけない。
無理に止めようとすればするほど、
反応は大きくなってしまう。
気持ちの揺れが大きくなってしまうということがある。

緊張はあるものだということをしっかりと認識して、
多少震えていようが構わず演奏することだ。
このとき何を最も注意するのか・・・。
それはテンポを自分でびっくりするほどゆっくり始めることだ。
練習してるときと違うじゃないか・・・、
と、思ってもゆっくり弾くことをためらってはいけない・・・!!
指が震えていてもゆっくり過ぎていても、
ある程度弾き進めていけば曲に流れが出て来て、
曲に流れが出てくると気持ちは落ち着いてくるものなのだ。
気持ちが落ち着いてくれば自然とテンポも出てくるものなのだ。
緊張してる状態で曲を無理に引っ張りまわしてはいけない・・・!!

テンポがどうであれ曲として流れて終わることができれば、
その結果は自信となってかえってくる。
この自信は次に弾く時には余裕という心理になって出現する。
この余裕こそ緊張を押さえる大きな力となる。

不幸にも途中で止まってしかも演奏が終わってしまうと、
自信喪失となって、
次にはつながら結果となってしまう・・・。

要するにいろいろ書いたところで、
緊張というのは消えることはない人間の絶対的心理だということだ。
これを意識的に無理やり押さえつけることは、
100パーセントできない。

しかし、少しでも自信を積み重ねた曲は、
余裕という心理的援護を得て、
次に弾く時には、かなり緊張からは解放されることになる。
もちろん完全に緊張が消えることなど完璧にはないが・・・。
しかし、少しの余裕が出るか出ないかは、
演奏することにおいては実に大きい・・・!!

この小さな自信をどうのように手に入れるかが今日書いたことだ。
結局、最終的に緊張を押さえる最大の武器は、
小さく積み重ねた自信ということになる。

発表会で結果を求めるというのは当然のことだ。
曲の出来を少しでも高得点に近づけたい・・・。
もちろんそれは重要なことだろう。
それを目標に練習してきているわけだ。
しかし、それよりももっと重要なことがあると思う。
それは次につなげるべく小さな自信を確実に得ることだと思う。
この小さな自信を積み重ねるというのは、
ギターをより自分のものとして、
自在に操るために最も必要なものだと思う。
緊張を押さえるだけにとどまらないと思う。

緊張を恐れず小さな自信を得るために、
今日、書いたことを実行してみてほしい。
ボサッと弾くだけでは、
演奏というのはなかなか結果が出てきにくいものだと思う。
緊張を少しでも抑えるためには億劫がらず実行あるのみだ。
この精神が一番緊張に強くなれるのではないだろうか・・・。
そして緊張の先にある小さな自信をしっかりとつかんで欲しい。






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