〜エッセイ〜
〜コンクールに挑戦!!〜(4)
でもやっぱり人の演奏ってどうしても気になるんです。
私の横で弾いている人、同じ課題曲を弾いているはずなのに当然ですがちょっと違うんです。
「えっ、そこって、そう弾くの?」
他の人はと思ってテーブルを挟んで私の前に座っている人のを聴いてみると、
その人はその人で、また違う弾き方をしているんです。
こうなってくると果たして自分の演奏がこれでいいのかどうか、
だんだん不安になってきます。
練習しようにも自信がなくなってきて、音もあまり出せなくなってしまう有様です。
「う〜ん、これは隣の人が弾いているようにした方がいいのかな?
それとも、もっと別の方法を考えた方がいいのかな?」などと思うになってしまいました。
本番が始まっているホールに行って他の人がどういう演奏をしているのか、
聴いてみたりもしました。でもそんな事をすればするほど、余計混乱するばかりなのです。
もし仮に、ここで演奏方法を変えたとしても、
今までそういう練習をして来たわけではないのですからそれは無理なのです。
人の演奏は気にはなりますがそれは今後の参考にするとして、
私がやらなければならない事は、今日この日のために練習してきた事をすること、
本番のステージで「自分の演奏」をする事なのです。
いろいろ考えを巡らせながらも何とか練習をしたり爪を磨いたりしているうちに、
私の出番も近づき進行係のお声が掛かりました。
演奏者が5人ずつ呼ばれて控え室のある3階からホールのある2階まで、
エレベーターで移動しました。そのエレベーターの中で進行係が、
「皆さん緊張してますよ。普段の実力の7割も出せればいいほうですね。」
などといらぬプレッシャーを掛けてきて、
ますます緊張が高まり手には冷や汗が滲んできます。
エレベーターを降りるとあとは自分の出番が来るまで、ロビーで待つことになります。
その間も音は出さずとも、ギターを構えて指を動かしたりしながら、
最後の最後まで曲のチェックは欠かせません。
コンクールは滞りなく進んでいるようで、
演奏が終ると一人ずつ呼ばれて会場に入っていきます。
一人入って行くたびに「あと三人…」、「あと二人…」とよせばいいのに数えてしまいます。
そして、ついに私の名前が呼ばれました!!
「ああ、とうとう来てしまった…」と思いながら、
まるで死刑台にでも向かうような気持ちになって会場に入って行きました。
ステージの袖で名前を確認されて椅子に腰掛け、前の人の演奏を聴いていると、
また「この演奏でいいのか?」と言う疑問が湧き上がってきました。
でもここまで来たらもうどうする事もできません。
あとは良くても悪くても今まで練習してきた演奏、
「自分の演奏」をするしかないのです。
コンクールの行われた星陵会館ホール
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