エッセイ







     ♪♪♪♪♪私の楽器物語り(5)♪♪♪♪♪






 
製作家ハウザー家のV世とはいえ、

世界的銘器の名を持つ楽器を手にしてしまった私…。

 今だから話せるのですが、

実は「本当にこれで良かったのか?」と言う不安もありました。

 ギターを本格的に始めてからまだ56年、

やっと曲らしい曲を弾くようになったばかりで、

こんなにいい楽器を購入してしまって、本当にこれでいいんだろうか…、と。

 でも、もう手元に来てしまった以上、どうする事もできません。

自分で納得して購入したので責任を持って使っていかなければなりません。

 明日からこの楽器との付き合いが始まるのです。

もうあんまりくよくよ考えるのはやめにして、練習していくしかないのです。

 

今考えると当時はバブル経済の走りの頃で、

世間では皆が中流意識を感じ始めていた時だったんですね。

 ご多分に漏れずこの私も、仕事も収入も安定していて、年も若く、

まだまだ勢いで物事が出来た頃だったような気がします。

 周りの女の子たちはブランド物やジュエリーを競って買ったりしていましたが、

私はそういった物にはあまり興味がなく、

その代わりに毎月のように一流演奏家のコンサートに出かけたり(時には月に
3回も)、

海外のオーケストラのコンサートのチケットに平気で
15,000円も出したりと

(チケットは常に
S席かA席を購入していました)、

音楽に関しては「金に糸目は付けない」優雅な生活をしていました。

 ですから、今回のハウザーV世購入も、

世の中の風潮と若さがなせる業だったとも言えるのかな…と思います(おお怖っ!!(-_-;))

 

 話を元に戻します。

 新しい楽器は小振りではあるのですが弦の張りがきつく、

弦高も少し高いように感じたので、

先生にお願いしてブリッジを「これ以上は無理」と言うくらいまで、

紙やすりで削って弦高をギリギリまで低くしていただきました。

 ネックの横から見ると、弦がもう少しで1フレットに着きそうなくらいです。

 でも、これで少しは弾き安く感じるようになりました。

 木曜日にレッスンに行くと、必ずと言っていいほど先生とは楽器の話になります。

 「ハウザーは音を出すのが大変だよ。なかなか出ないからね」と、

(今更そんな事言わないでよ)って思うような事を言われたり、

でもそのあとには「思ったとおりの音が出たときは本当に気持ちがいいんだよ」

「スコーンと抜けるような音が出た時は、これが本物の楽器の音だって感じがするね」

とフォローも入ります。

 要するに、「時間をかけなければいい音楽は作れない」と言う事を言いたかったのかも知れません。

 確かに買ったばかりのハウザーは、

そう簡単に言う事を聞いてくれそうな感じではありません。

 本当の意味で「自分の楽器」になるまではかなりの時間がかかりそうです。

 それでも新しい楽器を手にした嬉しさで、練習は毎日欠かしませんでした。

 しかもこの時はちょうどスペインギター・コンクールの一次予選に応募して、

その結果が出るのを待っていた時で、

楽器を購入して半月ほどして合格通知が届いた時は、

何となくではありますが「運が向いてきたかな?」という気持ちにもなりました。

 予選通過と楽器購入とは直接何の関係もありませんが…。

 





                        
                ヘルマン・ハウザーV世                








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