曲の解釈のしかたって一通りだけじゃないと思うんですよね

SYOKO

−初のフルアルバム『ガーネット』がこの5月に発売されるわけですが、5月にレコード、6月にCD、7月にCDシングルというふうに順を追って発売していくってことですが、これは何か特別な意図とかがあるんですか?
SYOKO
それはまあ、そうですねえ……LPが限定なんですよね。LPを出して、売れちゃったら、まあテイクも違うことだし、CDが一応メインって感じで、(音の)おとしなんかそれを考えてやってるし。まあ、先行してまずLPが出ますって感じですね。
−どうしてそういう形をとったんですか。
SYOKO
ミックス・ダウンのやり方でけっこう曲って変わりますよね。こういうやり方で面白いけど、このテープも面白いね、なんてことが今までけっこうあったんですよね。もうちょっとこれをこうした方がいいんじゃないかみたいのが。いくつか案があったりとか。で、どうせだからいろんなの出しちゃおう、みたいな感じで。CDシングルも出すつもりですし。そういうのはダンサブルにリズムを強調したりとか。そういう形でいろんなテイクが出て行けば、こっちの意図っていうか、こんなふうにもできるんだよみたいな所が分かってもらえれば面白いんじゃないかな。
−どの程度変わるんですか?
SYOKO
曲によっては全然変わらないのもありますけど。
YU
リズムがけっこう派手になったりとか。
SYOKO
コンガが入ったりとか。パーカッションの類いで、LPなんかでは抜いたやつを入れたりとか、打ち込みのタイコとかがけっこう出てくるかもしれない。場合によっては歌のテイクも違うとか。何テイクか録っていって、これは繊細だけど力がないとか、これは力があるけどちょっと粗いとか。どっちが良いか悩んだ時に、CDにはこれが合うとかね、あると思うんですよ。
−そうやっていろんなヴァージョンを出すことで、バンドのイメージを広げようとか思ったわけですか?
SYOKO
いや、あまり考えていないんですよ。ただこういうものもありだなって、ただ単純に、それだけだから。ただね、曲って、正解が一つだとは思わないのね。自分たちがやってる曲に対しても、もしかしたら自分たちが一番理解できていないのかもしれないし。だから、そういったところでもうちょっと違うやり方しても面白いんじゃないかなぁと、ただそれだけ。その辺をあんまり、例えばLPとCDとCDシングルと、まあ当然違うし違うことやりたいんだけど、あまり拡大して考えられちゃうと、こっちの意図するところではないんですよ。
−深読みされるのは迷惑みたいな……。
SYOKO
て言うかね、こっちがこれも面白いねってノリでやってるのに、あんまり考えすぎちゃうのも何か違うんじゃないかなって、ただそれだけ。
−ああ、そうですか。
SYOKO
まずLPが出るでしょ、それで大体曲のイメージをリスナーがとらえた時に、CDで違うのが出てきて、これも面白いじゃない、あっちのが好きだ、こっちが好きだみたいな、そういう違う拘わり方ができるっていうのが面白いんじゃないかと。録音特性がどうとか、私は全然分からないですから。エンジニアは面白がってやってるとは思うんですけど。
−曲数とかはLPとCDで違うんですか。
SYOKO
CDでは増えるかもしれない。まだ分かんないけど、CDの編集は終わってないんで、そこら辺はノリでいくらでも変わるから(笑)。

次の可能性、方向性が提示されているアルバムだと思ってくれれば

−初のフルアルバムなわけですが、ここ数年間の活動の集大成ということじゃないみたいですね。
SYOKO
集大成するも何も、前にレコードを出した時からメンバーも3人変わっちゃってるから、それもレコーディングに入ってから抜ける抜けないみたいなことがけっこうあって。そんなこともあって、今とりあえず現状はこうだよ、みたいなところですね。集大成するにはメンバーいないもんねえ(笑)。
YU
一応、残ったメンバーでやりたかったのが今回のレコードですから。全部を出してはいないんだけど、残ったメンバーでできる範囲のことを、って感じですね。
SYOKO
バンドは変わって行くし、次の可能性って言うか方向性が提示されてるって見てくれればそれでいいと思います。曲を書く人間もどんどん変わってますから、G-シュミットをここで集大成だってまとめちゃう気は全然ないし。
−今はもういないメンバーがいた頃のG-シュミットは区切っているというか…。
SYOKO
うん。
−こだわってないっていうか…。
SYOKO
こだわるこだわんないっていうか、うち、わりと、レコード1枚作る毎にメンバー1人抜けてるから、今回2人抜けたから(笑)、けっこう変わってますよね。曲書く人間と演る人間が変わればどんどん変わるのは当然だし、私は基本的に言葉の人だし。あとリズムが残って。上ものが、ギターとかキーボードが変わるとだいぶ印象って変わると思うから。
−リズム隊が残ったってのが面白いですねえ。
SYOKO
そうだね。
−何ですかね。本人としてはいかがですか?
YU
上の人があんまりハッキリしなかったから……。
SYOKO
いや、人柄でしょう(笑)。
−どういう意味ですか(笑)。SYOKOさんのしごきが厳しいとか(笑)。
SYOKO
しごきませんよ、私(笑)。やっぱりね、アイデアがある人間が残るって感じ、うちは。
−イマジネーションがあったり?
SYOKO
うん、そう。イマジネーションが問題。
−このアルバムはギターが4人、キーボードに2人がゲスト参加してますが、ギタリストが変わっても全然違和感がないですね。
SYOKO
まあ、曲によっては2人・3人使ってるっていう、弾いてもらったので、いい所だけぼんぼん出してくみたいな形もあって、けっこう贅沢な使い方をさせてもらって。でもまあ、今回のレコーディングに関して、ギターとキーボードっていうのは、おまけって言っちゃあ何ですけどね、芯の部分ではないなって感じですね。
−誰かギタリストをメンバーに入れる予定はないんですか?
SYOKO
1人訓練しているのがいるよ。
−若い子ですか?
SYOKO
今回のレコーディングにも参加してますよ。うちのカラーに合えば、いつでも入ってもらいます。

出典:IND'S NO.18 1988 JUN-JUL