自分がカテゴライズされるのがすごくイヤなんです

SYOKO

−今回のレコードはどういう感じにしようと思ってたものなんですか?
SYOKO
今度のレコードはかなりキレイキレイに仕上げようと思ってたんです。というのも巷でG-シュミットはポジパンだとか、そういったことが言われはじめててそれに対しての反感があったわけです。イギリスのものをそのままコピーしているようなポジパンが増えてて、そういうのが嫌いだったんですよ。自分がカテゴライズされるのがすごくイヤなんです。日本人の特徴なのかもしれないけれど、何かわかんないものとか新しいものが出てくると、とりあえずカテゴライズして安心しきっちゃうところがあるでしょう?それがすごくイヤだったから、ポジパンで言われてるからけっこうキレイな方で作ってポジパンぽくしないようにしらんですよ。
−レーベル・カラーというのもあるんじゃないですか?オートモッドなんかもいるし…。
SYOKO
オートモッドもちょっと違うんですけれども、そういう傾向はあるから。それでまたレーベルの中でもG-シュミットは違うんだということをもう1度打ち出してゆく必要もあったんですね。かなり一部の雑誌でキレイでポップだって書かれたんですけれども、でもポップだとは全然思っていないんですよ。明るいとも思わないし…。あれは1回暗さをくぐり抜けて浮上してきたから明るい気がするけど、実はホントは暗いと思ってるんです。その辺をわかってほしいのはありますね。
 ただ今回そういった意味合いで作ったので次のレコードというものを考えたときに、ちょっとまた巷でいうポジパンぽい、暗くてドロドロしたものをそのまま出してみたいなって気もちがあるんですよ。とりあえず反抗ですね。あまのじゃくだから。
 サイドAサイドBっていう分け方をしないで、サイド・サングレとサイド・エスプリという分け方をしたんです。それはサイド・サングレっていうのは血液、血のサイド、スタイルとしてのロックでG-シュミットというものを表現してみたんです。B面がサイド・エスプリで精神としてのロック-形は割とポップであったり暗めのワルツであっても-そういったものを表現したかったんですよ。
 はじめ7曲入りにするつもりだったんです。他の3曲を入れちゃうと傾向が違っちゃうんですよね。今回"モダン・ジプシーズ-さまようもの"みたいなコンセプトを明確にするためにはずしたんです。そのうちの2曲を今度シングルで出します。シングルはパンクというスタイルを使ってG-シュミットとしてのアプローチをしようと思ってます。
 スタイルとしてのパンクをやりたいとかポジパン、ポップをやりたいとかじゃないんですよね。そういうことじゃなくて内側の表現衝動みたいなものが、とりあえず聞きなれてきたポップとかロックとかを使って流れ出してくる感じなんです。形態に関してはそんなにこだわってないですね。
−G-シュミットというバンドはそれぞれが持っている感じをそのまま出してきて少しチグハグなイメージをうけたんですが…
SYOKO
それはすごく強かったですね。ただ問題がどんどんかわってくゆく段階で、結局イニシアチブというのが私に移ってきたというのはありましたけど…。結局SYOKOという名前のもとに統一されてきたようで、いい意味でのバランスがとれてると思いますよ。チグハグでした?

形態に関してはそれほどこだわってないですね。

−今回はそうでもないんですけど前のライブなどでそう感じたんです。
SYOKO
とりあえず出せるものは出してみようというところがあったと思います。出しきった後に何かが残って、それを続けてゆければいいと思ってたんですが…。モダン・ジプシーズでそれがわかってきたっていう感じですね。
梅沢
理論的に、SYOKOという核があって、まわりがそれぞれそれなりに光ってゆくみたいな形に持っていこうとは思いますね。
SYOKO
極端ないい方をしてしまえば、SYOKOがこのバンドのカラーであり、そしてそのカラーを理解した優秀な手がある、プレイヤーとしての手が存在しているというのが一番理想ですね。あまり個性のぶつかり合いとかは期待してないです。
−G-シュミットのライブを見るときに静かなイメージがあったんですが。
SYOKO
静かではないですね。レコードに関してはかなりキレイに作っちゃおうという意図があって、それはレコーディングでしかできないことですから。
−G-シュミットのメジャーに対するものとか何かありますか?
SYOKO
メジャーになりたいというのではなし、デカダンにつながるかもしれない。あるいはもっと根源的な愛とかそういったものにつながっていくかもしれない。ヘンに限定しようとは思いませんね。世紀末というのはもちろん背負ってるとは思うんですけども、だからといって表現したいものは世紀末かっていうとそうではなくてもっと身近な恐いものであるとか…。私自身が弱者であるというのかったのですが、インディーズの暗いロックに拒否反応を持っている人が多いわけですよね。そこら辺の人たちにとっても聞き易いようにしたいとは思っていたんですよ。かといってインディーズのファンからソッポむかれちゃうようなものは作りたくないし、その接点というものが見え出してきたんです。結局は自分の表現したいものに集中するっていうことなんですよ。そうしてればその表現というものははずれてこないし、その中でいくらでもコマーシャルになっていけると思うわけですよ。コマーシャルになるってことは単に媚を売るっていうことだったら悪いと思うけれども、そうじゃなくて少し親切になるみたいだけだと思うんです。まだ拒絶しちゃう時期ではないと…。
−G-シュミットのカラーとかイメージ作りというのは今現在どういうふうに思ってますか?
SYOKO
私は今、何のために歌いたいかというと、弱いものとか滅んでいきそうなものに対して歌ってあげたいという気持ちが強いんですね。見捨てられているものとか。ある意味で世紀末というものにつながるかもしれないが先ずあって滅んでゆく自分の時間のためにも歌いたいし…。あるいは私は自分というものしかしらないけれど自分を通しての人間の孤独とかをつきつめていったら万人に共通する感情になるんじゃないかと思っているんです。

G-シュミット=SYOKOってイメージが強いから

−G-シュミットというグループ名からだけ想像している人たちのために何かありますか。
SYOKO
自分が投げ出された存在である、というところを歌いたいなって思ってます。
−サウンド面ではどうですか?
梅沢
サウンドはあまりこだわってないですね。確かにこういう音っていうのは好きじゃないなと感覚的にありますけれども…。割とこちらのサイドから言ってもG-シュミット=SYOKOっていうイメージが強いから、逆にSYOKOが歌ってればG-シュミットになるというところもあるわけです。そういう意味では最近わりと楽だなって思うんです。あんまりスタイルにこだわらずに、その時々にやりたいことができるし…。だからあまりサウンド面でポリシーみたいなものははっきりないですね。
SYOKO
ただどこかでもろさとか弱さとか含んでいる音は好きですね。B級バンドとかすごい好きなんですよ。G-シュミットが永久にB級バンドであればいいいなあって思ってるんです。ふっきれてしまった後のアッサリした音というのはどうも好きになれなくて…。常にジレンマを抱いている人にしかわからないような音を作っていきたいですね。
 同時代性の孤独みたいなものを歌っていきたいなぁっておもってますね。
梅沢
人間っていうのは1人1人自分で考えて自分で動いていかないとどうにもならないと思うんですよ。「こうしなさい」なんていう押しつけは無意味だし…。G-シュミットというのは一旦相手にゆだねちゃって後はみなさん考えて下さいというところがあるから押しつけはないんじゃないですか。
SYOKO
きっかけを作ってあげられたら最高だと思いますね。何かを教えたいとか与えたいとかという気持ちはもちろんあるんですけど、思うような形で伝えられるなんて思っていないし、それほど楽観的にはなれないから、何かを聞いてその中の言葉1つでもひっかかって、生活が徐々に変わっていく、みたいな形で影響を与えてゆくことができれば最高だと思いますね。
−メンバーの問題なんだけれども…。
SYOKO
今は、ドラムとキーボード、ベース、ヴォーカルの4人です。ギター探してるんですけど、とりあえず仕方ないですね。合わないとか、ついてこれないとかでね。自分たちでやるしかないんだなって最近やっとわかってきました。動いていかなければ自分たちの聖域というものはなくなってしまうし…。だからギターがいなければギターなしでやってもいいと思う。それによって音楽的に価値が下がってくるとかもちろんあると思うけれども…。私は音楽はどうなってもいいから、音楽なんていつでもやめてやろうと思っているしね。手段の1つでしかないと、そういうときにはつっぱってしまうと思っているから。あまり形にこだわりすぎちゃうと一番重要なものが見えなくなってしまうから…。
梅沢
メンバーがかわるともちろん音は変わりますけど、さっきも言ったようにサウンドに対するこわだりっていうものがないんです。音がかわってもやりたいことができればいいと思うんですよ。

いかにきれいな遺跡を復元してみせるかっていうことですね

−G-シュミットとしてやりたいことというのは何ですか?
SYOKO
外から吸収することじゃなくて自分の中を発掘してっていかにキレイな遺跡を復元してみせるかっていうことですね。それで自分の中に何もなかったらあきらめましょっていうことなんです。そういうことだったら誰でもできるでしょう?なかったら何かを作ろうっていう気にもなるだろうし…。
−今後の予定は?
SYOKO
ライブをやります。ライブはジレンマを完全にぶつけまくって、スタイルとしてのパンクバンドよりも非常に強力じゃないかと思います。強力というかヘビイだしヒステリックだしエキセントリックなステージをできると思います。
 レコードも来年あたりミニアルバムを出そうと思ってます。ミニアルバムという形態を非常に気に入ったので…。毒のある内容になると思うし、ひとりよがりにならないように気をつけたいと思ってます。聞いて下さい。

出典:IND'S NO.2 1985 AUG