72 Medallion (1st Reissue)
最初の再生産は72年にかけて行われた。これは69年に百万ドルのギタリストとしてデビューしたジョニー・ウインターの活躍と前後する。彼は3枚目のヒット作「ジョニー・ウインター・アンド」を発売した70年ごろにはすでにオリジナルのFirebird Xを使用していた。最初の再生産モデルは2プライのネック、ニッケルメッキのロングバイブローラを含め、ほぼ100%63年のオリジナルFirebird Xを再現していたが、PUカバーにはギブソンの刻印が入っていた。

ベースカッタウェイにリミテッド・エディション・ナンバーの入った円形のプラークが釘で打たれていることからメダリオンモデルといわれ、サンバーストモデルのみ合計350本の限定生産といわれていたが、実際には72年に351本73年には15本の366本が出荷されている。メダリオンモデルはフライングVにも存在し、そちらは72年に350本出荷された他に1本のカスタムメイドがあり、Firebirdの366本のうち16本も通常の仕様とは異なるモデルだった可能性がある。また65年に中止されたニッケルメッキの復活も正確な復元のためとは考えにくく、他のモデルに流用のきかないペグを含め60年代レフトオーバーパーツが使われた可能性も極めて高い。この年代のモデル特徴として、ネックが65年モデル並みに細く、トレブリーなサウンドがさらに強調されていた。


76 Firebird Bicentennial (2nd Reissue)
二度目の再生産は1976年に行われた。これはアメリカ建国200周年を記念して発売されたもので、当時の輸入代理店であるヤマハがかなりの数を輸入したこともあり、日本国内でも比較的簡単に目にするようになった。ヤマハが設定した定価は342,000円と高額だったため、店頭でデッドストックになっていたものもよく見かけた。

リバースモデルではTの特徴であったドットマーカー指板ノンバインディングネック、V、Xの仕様であった2ピックアップ、XUのみの使用されていたゴールドパーツという複雑な構成ながら、マホガニー2ピースのネックスルーボディは63年以来13年ぶりの復活となった。ブリッジはナッシュビルチューンOマチック、テイルピースはストップテイルピースを採用することでモダンなバランスを生み出していた。建国記念ということでピックガードの鳥のマークにも赤と青の星条旗と’76という数字があしらわれている。またベースカッタウェイがそれ以前のモデルに比べ若干なで肩なのも概観上の特徴である。

ピックアップは横置きWコイルとノンリバース後期の縦置きWコイルのミニハムバッカーがそれぞれフロントとリアに搭載され、ファットなフロント、よりブライトなリアと明確な使い分けがされている。特にリアは金切り声とも言える強烈なサウンドで、出力も低く、まるでシングルコイルのようである。またネックはナット部分ではそれほど太くないが、ボディに向かうに従ってかなり太くなっており、なれないプレイヤーには辛いかも知れない。

ヤマハのカタログ上はタバコサンバースト、エボニー、ナチュラル・マホガニーの3色が設定されていたが、この頃のサンバーストはトップにかなり明るい色のフィラーを使用しており、周辺部はほとんど黒い近い色だったのでその年代独特のカラーを醸し出している。本国では77年以降にホワイトのモデルが出荷され、80年製のチェリーレッドのモデル(通常の鳥マーク)も存在する。76年のサンバースト、ナチュラルのモデルではLIMITED EDITIONの文字とシリアルナンバーが同じオーバルのステッカーに印刷され、シリアルは00229000番台から00249000番台を確認している。77年以降といわれるホワイトのモデルは627000という刻印のみで、星条旗鳥はついているものの、LIMITED EDITIONを表すものは何もない。いずれにしても日本では建国記念モデル、アメリカではと呼ばれるこの年代のモデルは、77年以降は普通の鳥マークをつけられ80年ごろまで出荷されたが、日本向けの78年2月のカタログからは姿を消している。余談だが、ちなみにこのアメリカで印刷された78年の「日本ギブソン」のカタログにはディストリビューターの名前として、日本楽器、神田商会、荒井貿易の3社の名前が併記されている。

76年から79年までの出荷記録は2847本。メダリオンの項でも指摘したが、64年と寸分たがわぬサイズのペグやPUカバー、マウントリングはゴールドのレフトオーバーパーツの可能性も高い。63年から73年まで約5000セット使用されたニッケルメッキのペグに対し、63年から65年まで使われたゴールドメッキのペグはわずか300セット。3000セットぐらいのパーツが残っていても不思議はないのだが。


81 Firebird U
81年に発表されたFirebird Uは形こそ似ているが、全く異なるモデルといっても過言ではない。ボディ&ヘッドのフォルムは大きく崩され、カーリーメイプルトップ、ロックメイプルバックのヘヴィなボディに3ピースメイプルのネック。ハードウェアには当時ムーグ博士のプロデュースと話題になったRDモデルのものをそのまま移植しており、シリーズWハムバッカー、エクスパンション/コンプレッションスイッチ、ブライトモードスイッチとマスターベースコントロール、マスタートレブルコントロールを備えたアクティブ回路のギターだった。L-6SやRDを踏襲したカリカリの音もさることながら、おそらく5kg近くはあると思われる重量。決して人には勧められないモデルだが、もし愛用中または音をチェックされた方がおられたら感想をお聞きしたい。


82 Firebird 82 (3rd Reissue)
これは最近までその存在が確認できなかった82年製のモデルで、正確なモデルネームすらわからず、正式なプロダクションモデルだったのかどうかも不明である。日本へは正規輸入されていなかったので、国内で見かけることはまずない。基本的には76年の建国記念モデルを踏襲するスペックだが、大きな特徴としてヘッドが一回り小さくなり、重たいバンジョーペグの代わりにギブソンの刻印のあるシャーラーのM6(ゴールド)が一列に配置されていた。スモールヘッドながらバンジョーペグが付いたものもある。また76年ほとんど同じ材が使用されているが、トレブルカッタウェイ部が若干細身なのも外観的な特徴である。76年モデルではフロントのみにつけられていたWマグネットのファットなPUがリアにも搭載されたとともに、Firebirdとしては初めて脱落防止型のストラップピンGibson Posi-Lockが装着された。これはピンの頭の部分がダイヤ型に張り出したいたって簡単なものでシャーラー製といわれている。ちなみにストラップピンはこの82年モデルまで2個しか装着されておらず、それ以前のモデルでヒール部分に装着されているものは後付けである。それゆえヒールのピンの位置がまちまちで、ボディサイドのピンがはずされているものも多い。シリアルナンバーはこのモデル以降、ギブソンのレギュラー品にならい8ケタの製造年月日がわかるものが採用されている。

ロトマチックタイプとはいえペグが軽量になったことで演奏時のバランスがよくなり、リアのPUが変わったことでトレブルが抑えられたが、それ以降の変遷を考え合わせると、音質変更のためのモデルチェンジではなかったようだ。76年モデルに使用したパーツの在庫処分のために、企画したものの、ペグの在庫が底を尽き、ヘッドを小さく仕立て直し、手に入りやすかったシャーラーペグを使用したモデルであったことが想像される。


ブランク
82年モデルを最後に再びFirebirdは市場から姿を消してしまう。ギブソンは80年代に入って経営悪化が顕著になり、86年にヘンリー・ジャスコヴィッツ率いる経営共同体に売却された。この間、人気モデルであるレスポールなどは途絶えることなく生産されていたが、Firebirdの再生産にはペグやPUなど新たな金型を起こす必要が生じ、コストと手間の問題から開発は後回しになっていた。87年には新生ギブソンを象徴する126ページの有料フルカラーカタログ(本国のみ)が製作されたが、その中にはFirebirdの姿を見ることはできない。しかし10年ぶりに再生産が決定したThunderbird Wの写真がFirebirdファンの胸を躍らせ、久々に復活した9プライのネックのラインに、よりリアルなFirebirdの復刻を大いに期待した。この時期に日本総代理店となった山野楽器が同じ87年に製作した価格表には「ファイアバードV(ヒーサーポリー、サンバースト)」とその価格が明記されていたものの、ユーザーが現品を手にするには、さらに3年の歳月を待たねばならなかった。


90〜 Firebird V Reissue(4th Reissue)
1990年遂に現行のモデルがデザイナーコレクションシリーズとして復活を果たした。レギュラーモデルとしてリイシューされたのは64年スタイルのVのみだったが、マホガニーとウォルナットによる9プライのネックまで忠実に復刻され、76年モデル以降なで肩だったボディシェイプもオリジナルにより近いものとなった。バイブローラこそストップテイルピースに置き換えられ、メッキもクロームに変えられたが、ブリッジにはABR-1がおごられ、現代の使用に十分耐えうる仕様となった。ペグも日本のゴトーにより複製され、その精度は格段に向上した。ちなみに当時ギブソンが承認した日本製ブランドであるオービルは、同じペグを使用してセットインネックのコピーモデルを発売している。ネックは90年代ギブソンのスタンダードとも言えるスリムなネックで、初めて正式にヒール部につけられたストラップピンの効用もあり、演奏性は格段に向上した。ちなみに発売当時の日本での定価は20万円。円高により実売価が年を追って低下していた時期で、他のモデルに比べ複雑な構造にもかかわらず、安価で販売されていたFirebirdに複雑な思いをしていたもの記憶に新しい。

再発売当初のカラーとして日本ではヴィンテージサンバースト、エボニー、ヘリテイジチェリー、クラシックホワイトの4種と紹介されたが、フェラーリレッドと呼ばれる鮮やかな赤色のモデルも存在する。山野楽器のカタログでは92年からフェラーリレッドが追記されたものの、カラーモデルの入荷が少なかったためカタログ上は95年からはヴィンテージサンバースト1種となっている。60年代はサンバーストとカラーモデルにより使い分けられていたゴールドとブラックのメタルトップノブだがブラック1種類しかない。

事実上4度目の再生産となったFirebird V Reissueは、90年以来途絶えることなくカタログ・モデルとしてラインナップされ、新しい世代のギタリストに指示されながら、2002年の現在までギブソンのスタンダードモデルとして大きな変更もなく生産が続けられている。なおHistoric Collectionとの混同を避けるためか90年代後半にはReissueの文字が外され、単にFirebird Vと表記されるようになった。


90〜 Gibson Custom Shop
90年の現行モデル発売以降、98年にヒストリックモデルが発売されるまで、様々なCustom Shop製のFirebirdが出荷された。ギブソンカスタムショップ(以下CSと略す)の前身は、通常の生産ラインから独立して、限定発売の特別仕様のモデル、ショーモデル、プロトタイプ、特別な顧客のためのモデルなどを製造していた文字通りのカスタムショップで、80年代前半に限定発売された様々なリイシューレスポールなどにより一般にも知られるようになった。5、60年代のビブラートアーム装着ギターのテイルピースアンカー部分にCustom Madeと刻まれたプレートを目にするが、この頃はまだ明確な区別はなかったようだ。レスポール80や82、3年の’59Vintageなどには明確な表示はないが、83年のレスポール・スポットライトにはシリアルナンバーの上にCustom Shop Editionのデカールが貼られている。 その後93年にHistoric Collectionシリーズが発売され、CSの存在が注目を集めたが、その頃にはすでにGibson Custom Divisionとして独立した一部門となっていた。2000年にはGibson Custom, Art and Historic Divisionとなり、ヒストリックコレクションシリーズはもちろん、50th Les Paulなどのアニバーサリーモデルやアーチストモデル、豪華な絵や彫刻の入ったOne of a kindのアートギターなどを生み出している。


90 Firebird I Limited Edition
90年代のCS製Firebirdについて特筆すべきは何といっても24年ぶりのオリジナルFirebird Iの復活である。CS製といっても木部はレギュラーモデルからの流用であるが、ドットインレイ指板、ノンバインディングのネック、1PU、テイルピースブリッジなど、オリジナルFirebird I の特徴を余すところなく再現している。Firebird I は60年代後半から70年代前半のエリッククラプトンやステファン・スティルスのステージフォトでも目にする機会が多く、シンプルなデザインゆえファンも多い。オリジナルとの主な相違点は金属パーツがクロームメッキであること、ストラップピンがヒールの部分に追加されたこと、テイルピースブリッジがサドル付きタイプでないことである。ちなみにオリジナルに装着されていたテイルピースブリッジはスタッガードサドル付きのTPBR-8513というパーツである。発売当初、正規輸入されたものはヴィンテージサンバーストのみだったが、本国ではフェラーリレッドやクラシックホワイトのモデルも存在した。93年にはライトグリーンやレッド(フェラーリレッドの可能性も高い)のモデルがある楽器店により並行輸入されているが、これは後述するJimmy Wallaceのコレクションだったものだ。


91 Firebird I with ABR-1 (CS)
前述のFirebird I と同様のモデルではあるが、テイルピースブリッジがABR-1とストップテイプピースのコンビネーションブリッジに変更されている。より正確なイントネーションが得られるものの、需要のあるモデルとは思われず、ルーティングミスのボディをそのまま商品化した可能性も高い。カスタムカラーモデルも存在する。


90 Firebird V with Custom Color (CS)
90年代前半に複数本生産されたもうひとつのCS製Firebirdモデルはいわゆるカスタムカラーモデルである。これは基本的にはレギュラーモデルのFirebird Vのカスタムカラーフィニッシュで、色とヘッド裏のCustom Shop Editionのデカールのみ異なるものとパーツがチェンジされているものがある。前期のカラー変更のみのモデルは、ゴールドメタリックのものが確認されている。シリアルナンバーは現行品と同じ8桁のタイプだ。Firebird Vのカスタムカラーモデルは後述するYCS(ヤマノカスタムショップ)を除くと、そのほとんどが90年から93年の製造に集中している。


90 Firebird V with Perloid Pickguard (CS)
カスタムカラーのFB Vにパーロイドピックガードが装着されたCS製Firebirdである。白いパーロイド柄のピックガードは1プライでレギュラーのものよりも厚めであるが、鳥マークもしっかり刻まれている。デビュー時にFBを使用していたICHIROが一時期所有していたゴールドのFBもこのモデルである。ボディカラーはゴールド、ブルーグリーン、ライトブルーなどメタリック系が確認されている。


90 Firebird V with Gold Hardware (CS)
カスタムカラーのFB Vであるが、ハードウェアにゴールドパーツが装着されている。ギブソンのソリッドギターの場合、ゴールドパーツへの変更はペグ、PU、ブリッジ、テイルピース、SWリング、ジャックリング、ストラップピン、各スクリューのみなのだが、細かいところではコントロールノブのメタルトップもゴールドである。同じゴールドハードウェアのFirebird Vである76年モデルと比較すると細部の違いが顕著となり、76年モデルがいかに独特の雰囲気を持っていたかがわかる。ブルーメタリックのみ確認されている。


90 Firebird V with middle PU (CS)
FB V、Iのリイシューモデルが出揃った90年以降、さらに様々なバリエーションモデルが発売された。まず90年にはFirebird VIIを彷彿とさせる3PUのVが発売された。これはFirebird Vのカスタムカラーモデルに単純にミドルPUが追加されただけで、クロームパーツ、ディッシュマーカー付きの指板など他のスペックは全くレギュラーモデルと同じであった。ただし後年のものにはゴールドパーツのもの、パーロイドピックガード付きのモデルも確認されている。


91 Firebird VII without Vibrola (CS)
次に発売されたのがI同様20数年ぶりに復活したFirebird VIIである。ブロックインレイをエボニー指板に配し、ゴールドパーツが奢られたFirebird VIIは、シリーズの最高機種であるが、この時点ではまだバイブローラが復刻されていないため、ストップテイルピ−ス仕様となっている。そのため前述の3PUのFirebird Vと見分けがつきにくく、全体の雰囲気はオリジナルのVIIと異なっていた。76年以降バイブローラなしのFirebirdを見なれた目にもVIIだけは別格でゴールドメッキのバイブローラがいかに独特のアピールをしていたかがわかる。


9? Firebird V with Vibrola (CS)
同時期に発売されたFB Vのテイルピースの替わりにNOSと思われるデラックスマエストロバイブローラが装着されたモデル。やはりFB Vにはバイブローラが似合う。まさしくOne of a kindのスペシャルオーダーだろう、今までゴールドのもの1本しか確認されていない。またこのモデルに限りゴールドのメタルトップノブが装着されている。


Jimmy Wallace
自らの名を冠したレスポールやストラトキャスターで有名なジミーウォーレスはFirebirdフリークとしても知られている。やはりこの時期にJWのサインのあるFirebirdがJWモデルとして流通した。JWが細かい仕様を含めてオーダーしたものか、カラーリングだけのモデルか、本人の所有品にサインしただけのものなのか現在となっては不明である。一説には90年代前半に出回ったカスタムカラーモデルのほとんどがJWのオーダーだったという話もある。


91 Firebird V Celebrity
このように90年にレギュラーラインとしてFirebird Vが復活して以降、様々なモデルが発売されたが、Tに続いて明確な仕様が定まったモデルが、91年に発売されたFirebird Celebrityである。何を記念してのモデルかは不明だが、エボニーに塗られたFirebird Vのナット裏にはシルクハットとステッキをあしらった金色のデカールが貼られ、CELEBRITY SERIES(LIMITED EDITION)と明記されていた。ゴールドメッキのハードウェアがおごられ、1プライのピックガードにもCelebrityと装飾文字で書かれている。鳥のマークは黒。またロッドカバーやボディバックのコントロールパネルも白の1プライで統一されており、メタルトップタイプのボリューム&トーンノブも目盛の数字を除いて白で塗装されるという気合の入ったモデルである。ちなみにコントロールノブはオリジナルではサンバーストモデルにゴールド、カスタムカラーモデルにブラックのメタルトップノブが装着されている。再生産モデルについては82年まではゴールドのメタルノブのみ。90年以降は逆にブラックのメタルトップノブのみで、ゴールドのノブが復活するのは01年のヒストリックコレクションまで待たなければならない。


92 Firebird I Candy Apple Red (CS)
92年製のFirebird Iのカスタムカラーモデルである。Candy Apple Redは60年代のデュポンの車両塗色にもなく、フェンダーの専用色と思われていることも多いが、実は60年代にはES-335などのカスタムカラーとして設定されていた。FirebirdのオリジナルモデルにはCARの設定はなく、伝統的なカラーではあるがFirebirdには初めての採用となる。塗装はTom Murphyにより行われおり、ピックガードは前述のパーロイドのもの。ヘッドのギブソンのロゴはゴールドではなく、赤で入れられており、何らかのOne of a kindなスペシャルモデルであることが伺える。


93 Firebird V Black Beauty
93年に発売されたこのモデルはOne of a kindではないが、正規輸入されていないので、まず目にすることはないはずだ。レギュラーラインのエボニーモデルに、ゴールドのハードウェアとブラックのピックガードが装着されただけのモデルだが、独特な雰囲気が他のモデルを圧倒する迫力をもっている。ピックガードはブラックの1プライで、やはりレギュラー物より1.2mm程厚く、ゴールドの鳥マークが箔押しされている。これだけ特徴のあるモデルだが、カスタムショップ製デカールはどこにもない。何本か確認されているので、パーツ変更だけのショップオーダーなのだろうか。ちなみにBlack Beautyというニックネームは通称で、正式なモデル名ではない。


93 Firebird I Turquoise Blue (CS)
93年のダラスギターショーを記念してJimmy WallaceがオーダーしたといわれるOne of a kindなモデル。ベースはクロームパーツのFirebird Iで、ターコイズブルーのソリッドカラーという塗色もさることながら、ピックガードにはインディアンの伝統的な工芸品を思わせる幾何学模様が5色のペイントでほどこされており、Firebirdの中でもっとも凝ったピックガードである。またロッドカバーはシルバーカラーのメタル製でテキサス州の刻印が入れられていた。今は日本のオーナーのもとにある。


93 Firebird V Tricolor Sparkle (CS)
「筆舌に尽くしがたい」というのはまさにこのモデルのためにある言葉だろう。レギュラーラインのFirebird Vのカスタムカラーモデルといえば何ということはないが、Firebirdのボディ形状を十分に生かしたカラーリングがほどこされている。6弦側のウイング、ネックスルーボディ、1弦側のウイングの順にレッド、シルバー、ブルーの順に塗り分けられているのだが、そのすべてスパークルカラーという徹底ぶりで、ラッカーで上塗りされているその塗膜も1mmはあるかと思われるほど異常に厚い。ハードウェアはゴールド、コントロールノブにはゴールドのトップハットノブが装着されていた。このモデルも日本の楽器店により並行輸入されたが、高額だったゆえになかなか買い手がつかず、しばらく在庫されていた。数ヶ月の後にケースから出したときには、その厚い塗膜のいたずらか、ボディ&ネック全面に渡りガラス細工のように細かなチェッキングを生じており、通常なら不良品になるところだが、あまりにも見事なチェッキングのため最初から意図されたものかと思われるほど壮観だった。トップコートのラッカーもあめ色に変色しており、まさに空前絶後、幸せなオーナーの方、もし本サイトを見ることがあったら是非ご連絡いただきたい。


94 Firebird VII Centennial
1994年はギブソン社の創業100周年目にあたり、フェンダーはストラトキャスター発売40周年を迎え、キャンペーンや記念モデルの発売で楽器市場は大いに賑わった。ギブソンは創業100周年を記念して、毎月1モデル各100本の完全限定品という形で12のモデルを発表した。レスポールやES-335、エキスプローラ、フライングV、L5といった人気モデルとともにSeptemberモデルとして9月に製造されたのがFirebird VII Centennialである。100周年だけあって、22金メッキのロッドカバーには11ptのダイヤモンド、同じく22金メッキのトップハットノブには5ptのダイヤモンドが入れられるという豪華なモデルとなった。テイルピースには純銀で飾られた1984-1994のシリアルナンバーが刻印されており、インレイはマザーオブパールで12フレット上にも100周年記念ナンバーマークがほどこされている。またヘッド裏には22金メッキのオーヴィルギブソンの記念コインが貼られている。ボディ&ネックはレギュラーと同じ構成で、ゴールドパーツ、3PU、ストップテイルピースなどの仕様は前述のVIIと変わりない。ピックガードはパーロイドにゴールドで鳥マークが入れられていた。ヘッドカバー、レザーケース、証明書、フレーム付きのギターの写真など付属品にも凝ったものが用意された。


96 Firebird V with Aged Pickguard
91年のCelebrity、93年のBlack Beautyに続き、90年代3機種目のエボニーカラーのLimited Editionである。96年当時Vintage Sunburstのみの設定あったレギュラーモデルの単なるカラーバリエーションであるが、エイジドピックガードが装着され、ヘッド裏にはLimited Editionのデカールが貼られていた。エイジドといってもヒストリックコレクションの各モデルのようにエイジング加工されているわけではなく、フェンダーの60年代パーツのレプリカに見られるような、いわゆるミントグリーンのピックガードである。日本にも正規輸入されており、Aged Ebonyという名称で呼ばれていたこともあるが、正式な名称は不明である、


9? Firebird V with Mirror Pickguard
このモデルも何らかのショーモデルと思われるが、Web上で確認しただけなので詳細は不明である。フェンダーのカラーチャートにあるアイスブルーメタリックに似たカラーリングであるが、ブルーミラータイプのピックガードとロッドカバーが装着されている。ギブソンのロゴとトレードマークもレギュラーモデルとは異なるカラーで入れられていると思われる。同じ画像の左端に移っているFirebird Tは90年頃のゴールドのTと思われるが同じく詳細は不明である。

97 Firebird V YCS (Yamano Custom Shop)
上記のようにおびただしい数の限定モデルが発売された90年代ではあったが、レギュラーモデルのFirebird Vは95年にはVintage Sunburst一機種になっていた。一方マニアの注目を集めたHistoric CollectionシリーズはL-5、Super400CES、ES-295などのフルアコやレスポールの生産が中心で、当初企画されたFlying VやExplorerなどのコリーナモデルはショーモデルのみの製造にとどまり、Firebirdの発売も遅れていた。この時期、山野楽器はより日本市場に的を絞ったレスポールのバリエーションをオーダーし、日本限定発売とすることで並行輸入への対策を講じたが、Firebirdについても本国では下火になってきたカラーバリエーションモデルをオーダーし、YCSとして発売した。90年代前半のカスタムカラーモデルと同様、色以外はレギュラーモデルと同じで、カスタムショップのデカールが張られているのもといないものがある。
・アイボリーホワイト SN93167753 CSデカールなし
・レッドメタリック SN93167760 CSデカールなし
・ブルーメタリック SN93287723 CSデカールあり
・ゴールドメタリック
・シルバーメタリック
・パープルメタリック


Historic Collection
98年、開発が遅れていたFirebirdのHistoric Collectionモデルがいよいよ発売されることになった。同年本国で制作されたカタログにはスタンダードカラーであるVintage Sunburstと11色のオプショナルカラーと共に、I、III、V、VIIの4機種が紹介されたが、そのカタログを飾ったモノクロの写真はすべてきわめて程度のよい60年代のヴィンテージギターで、その時点ではまだプロトタイプが完成してなかったことが伺える。

生産は98年から開始されたが、各モデルともそれまでのレギュラーモデルやカスタムショップ製モデルとは異なり、ボディシェイプ、ネックシェイプも、よりヴィンテージに近づいた。特に木部に使用されたマホガニー材は40thレスポールのバック材同様導管のはっきり見えるものが選ばれ、ヘッドの一段高くなった部分もオリジナル同様マホガニーの削り出しとなった(レギュラーモデルはプラスチックのつき板。重量も軽めのものが多く、レギュラーよりも太くなったネックとあいまって、よりファットでアコースティカルな音色となった。

ハードウェアはPUやペグといった主要パーツを含めレギュラーモデルからの流用が多いが、レギュラーではクロームメッキだったメタルパーツはすべてニッケルメッキとなる。VとVIIのボディを飾るデラックスバイブローラもメダリオン以来はじめて型起こしされたものだ。IIIにもオリジナル通りショートバイブローラ(ただしアームはVと共用で樹脂製のグリップ付)が装着された。Iにはバイブローラ付きの設定はない。またIとIIIのテイルピースブリッジは60年代以来はじめてスタッガードサドル(ギザギザの出っ張り)付のものが復刻されたが、3弦にプレーン弦を使用する現代のニーズに合わせて、3弦のサドルがエンドピンよりにセットされた。レギュラーモデル同様ヒール部にストラップピンが追加されているのもオリジナルとは異なる。

レスポールではHistoric CollectionにVintageパーツを装着するユーザーも多いが、FirebirdではPU、ペグ、ピックガード、ロッドカバーなどの取り付けビスの位置がVintageとは微妙に異なり、ビス穴を開け直さないと流用はできない。また両者はPUのサイズも異なるため取り付けには注意を要する。

カタログ上は12色だったが、製品化されたものはVintage Sunburstが中心で、カスタムカラーモデルはオーダーがまとまり次第製作するというアナウンスでにもかかわらず、実際はランダムに制作されているようである。発売から4年経ち一通りのカラーが制作されているようだが、Golden Mist Polyだけは確認されておらず、12色以外ではピンクが存在する。またカスタムカラーモデルでは、ヘッド全面がすべてボディカラーと同色に塗られたいわゆるマッチングヘッドになっている。(60年代のカラーモデルは、ヘッドの一段高くなっている部分がサンバーストモデル同様黒の場合もある)。

Historic Collectionには大きな仕様変更はなく現在も制作されているが、アームを固定するボルトをロックするためのナットが、初期のものは緩んで脱落しやすいのに対して、01年以降のものは緩まない構造に改良されている。また黒のメタルトップノブ1種類だったコントロールノブに、01年よりゴールドのメタルトップノブが装着されるようになった。


02 Firebird VII
レギュラーモデルのFirebird Vがカタログ上サンバースト1色となり、Historic Collectionも充実し、これ以上のヴィンテージスタイルのバリエーションはあり得ないと考えられていたが、突如02年になってレギュラーラインとしてFirebird VIIが発売された。オリジナル同様Vとの基本的相違点はブロックインレイの入ったエボニー指板、3PU、バイブローラの装着であるが、V同様マホガニー&ウォルナット9プライのネックスルーボディが使用されるのはCherryとVintage Sunburstの2色のみ。Blue Mist、Copper 、Red Metallicのメタリックカラーのモデルはオールマホガニーネック&ボディとなっているが、セットインネックなのかどうかなど詳細は確認されていない。ハードウェアにもクロームとゴールドの2種類が存在し、CherryとRed Metallicにはゴールドパーツ、Vintage Sunburst 、Blue Mist、Copperにはクロームパーツが装着される。複雑な組合せではあるが、全品ゴールドパーツであるHistoric CollectionのVIIとはボディカラーが重複せず、一見して見分けることができる。

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