|
|
|
|
|
|
− HUMAN AUDIO SPONGEのスペシャルライブ −
|
2007年5月19日(土)。この日は、待ちに待った−そう、あの再生YMOHUMAN AUDIO SPONGEの一夜限りのスペシャルライブの日。HUMAN AUDIO SPONGEとは、言うまでもないあの三人。そう、今はSKETCH SHOWとして活躍する高橋幸宏・細野晴臣の二人に、坂本龍一を加えたユニット。つまり、言ってみればそう。YMOの再来と言っても過言では無いユニットなのだ。だから意図的に再生YMOと間違えてもオッケー。
今日のスペシャルライブの存在を知り、チケットの早期予約を申し込んだのが早二ヶ月前。いろんなチケット会社に予約を申し込んでは外れ、四社目か五社目にしてようやくゲット出来たこのチケット。それからずっと今日の日を、どれだけ待ちわびたことか。そしていよいよ…「その日」がやって来たのだ。
今日のこの日のライブ。夕方5時に開場で6時から開演と言うことで、開場前に早めに行こうかと思いながらも結局、色々なんだかんだとしているうちに出るのが遅れ実は着ていく服を選ぶのに時間かかっただけ、結局会場に辿り着いたのは夕方5時半過ぎ。
今日の会場は横浜・みなとみらいにある「パシフィコ横浜」と言う施設内にある「国立大ホール」。このパシフィコ横浜の施設がとにかくデカイ。海沿いにあってオーシャンビューになっていたりとロケーションもなかなか良い感じ。
しかし、開演までの時間が押し迫っているのであまりのんびりしているヒマは無い。会場の周りにはもの凄い数の客。その列に並んで会場へと入り、先へ進む。一階のロビーでは飲み物の販売をやっていて、大勢の人が飲んでくつろいでいた。YMOの三人にちなんでかラガービールが売っていたが僕は買わず。時間が無いからと言うのもあるが、せっかくの再生YMOHUMAN AUDIO SPONGEのライブ。酒なんぞ飲んで観てしまうのはあまりに勿体無い。
今日のライブ、チケットは全席指定制となっている。僕の席は三階とある。ホール内をエスカレーターで上へ上へと進み、ようやく自分の席に辿り着いた。今日のこのライブ、椅子に座ってゆっくりと鑑賞するスタイルの様。ライブと言えばスタンディングが当たり前だと思っていたので、これはこれでまた新鮮。
会場のホールは、これまたとてつもなくデカイ。一体どれくらいの人数を収容出来るのだろうか…しかし時間が開演に迫るにつれ、その無数にあると思える座席も全てが埋まっていく。
そして開演時間の6時をちょっと過ぎた頃、会場内の盛大な歓声につつまれて、HUMAN
AUDIO SPONGEの御三方がステージ場にその姿を現した。向かって右から順に細野さん・幸宏さん・坂本教授と並んでいる。三人の前にはそれぞれ機材が置かれ、教授はシンセに囲まれ、細野さんはベースを手にし、幸宏さんはキーボードとリズムマシーンにスタンバイ。そして、幸宏さんの隣には生ドラムが置いてある。もしやどこかで使うのだろうか…。
ところで僕はSKETCH SHOW・幸宏さんのソロライブと観ているから、細野さん・幸宏さんはその姿を拝見済みなワケだけど、実を言うと生の坂本さんを観るのはコレが初めてなのだ。なんとも言えない不思議な感動を覚える。
ところで僕の座っているこの三階の席からは、ハッキリ言ってステージがもの凄く遠い。だからアーティストの姿は見えても、細かい動きやましてや表情なんて分かるワケが無い。だが、そこはもう事前に策を練ってある。こんなこともあろうかと、今日は双眼鏡を用意してきたのだ。
周りの客を見渡すと、オペラグラスを持参している準備のいい人達もちらほら見受けられる。なるほどそれも良かろう。だが僕の道具はそんなチャチなオペラグラスなんかじゃあないぜ。ニコン製の32ミリレンズにして8倍望遠の本格的な双眼鏡だぜ!!
実際、双眼鏡でのぞいてみると見える見えるよく見える!! どの位良く見えるかって言うと、それこそ幸宏さんのおヒゲの本数まで数えれちゃう位(←なワケは無い)
それはともかく(苦笑)、とりあえず幸宏さんはジャケットスタイルながらも白いレザースニーカーを履いていることが判明。ダークなジャケット+パンツに白いスニーカー…やっぱこの人本物のお洒落さんだ。かっこいい。あと教授はニューバランスの黒いスニーカー、細野さんは普通に黒い革靴履いている。…て、足元ばっか眺めててどうするオレ。
しかしやはり双眼鏡はよく見える。持ってきて正解だった。と言うかまさか、昔趣味にしてたバードウォッチングがこんな形で役に立つとは思わなかった。
さあ。いよいよ開演。
まず、最初に演奏された曲はなんとYMOの[以心電信]!! い、いきなりこれキター!!! と言うかいきなりこんなん演っちゃいますかね!! いきなりの展開に面食らつつも異様なまでの盛り上がりを見せる会場。と言うか盛り上がるなと言う方がムリ。この[以心電信]は、全体としてはSKETCH
SHOW風…と言うか2007年風の音に仕上がりながらもブラスやストリングスの音なんかは原曲通りの雰囲気が残っていて、そのバランスがなんとも素敵だった。
この一曲を終えたところで最初のMC。幸宏さんが喋っているのだけど、「このメンツでMCやるのは緊張します」とか何とか言って会場内は大ウケ。開演前まで漂っていた、興奮と緊張感とが入り混じった会場内の異常な雰囲気はこれですっかり吹き飛んで、なんとも和やかでいいムードに。
続く二曲目はこれまた意外な選曲。アコースティックギターの音で始まり、最初は何の曲なのか全く分からなかったのだけれど、メロディーが入ってきて唖然。なんと細野さんの[SPORTS MAN]!! それがアコースティックヴァージョンでしかもヴォーカルが幸宏さんと言うなんとも凄いアレンジ!! この曲はマイナーなせいなのか会場内の反応はイマイチだったけど、僕はもの凄く心に響いた。元からイイ曲だとは思っていたのだけれど、こんなアレンジで聴かせるのもアリだったとは。
続いてはSKETCH SHOWの[FLY ME TO THE RIVER]。アルバム[LOOPHOLE]収録の曲で、釣りにちなんだ歌詞(いやもっと意味深な歌詞か?)が特徴の、どこか細野さんの趣味っぽい雰囲気のトラック。まあ釣りが趣味なのは細野さんじゃなくて幸宏さんなんだけど(笑)
続いてこれまたSKETCH SHOW[LOOPHOLE]から[MARS]。この曲から、ステージ上の大きなスクリーンにVJ映像が映し出される。曲ごとに、それぞれの雰囲気に合わせた映像が流れていく。
次は同じく[LOOPHOLE]から[FRAKES]。この三曲はかなり原曲通りの雰囲気で演奏されていた。原曲の雰囲気を大事にしながら、音の広がりと重なりだけがもっと豪華になっている様な感じ。しかしこの[FRAKES]は生のマンドリンの音が加わって、それがとても素晴らしく聴こえた。どこか暗い感じの、そしてストイックな雰囲気の曲で、[LOOPHOLE]の曲の中では元々凄く好きな部類の曲なんだけど、今日のこのアレンジでその良さを再認識させられたと言う感じだった。
続いて一曲、アコースティックな歌モノの曲が入る。爽やかで明るい感じの曲。僕の知らない曲だった。そしてここでMCが入る。幸宏さん曰く「次はバルセロナのライブで盛り上がった曲をやります」と。
一体何が来るのか…。会場の誰もが固唾を飲んで見守る。
そして…。
[RIOT IN LAGOS]キターーー!!
なんと坂本教授伝説の名曲[RIOT IN LAGOS]が!! 初期YMOのライブでも欠かさず演奏されていたあの曲が来ちゃいましたよ!! 勿論会場皆大興奮!!! 僕も教授の曲の中では大好きな曲の一つだ。そしてこの曲はこれがまた泣かせることに、全く原曲通りのアレンジ。SKETCH
SHOW風な解釈も2007年テイストも何も全く加えずに原曲の雰囲気そのままと言うのがただただ泣けた。やっぱり本物の名作と言うのは、時代に合わせて作り変えずとも、普遍的に素晴らしいものなんだなぁ…。と言うか、今の時代の近代的な機材を使ってあの音あの雰囲気を創り出していたと言うのが逆に凄い。
続いて今度はYMOの[音楽]!! なんか今日はもうファンサービスのオンパレードですか!!(笑) もう再生どころじゃないサービス精神旺盛っぷりが本当に凄い。この[音楽]は、若干SKETCH
SHOW風味を加えつつも原曲の雰囲気もきちんとあって…と言う、冒頭の[以心電信]みたいなアレンジだった。
続いて、英語詩の知らない曲が演奏される。何の曲が分からないのだけど、なんとなく誰かのカヴァー曲なんじゃないだろうか、なんて思ってみたり。
そして、ピコピコした電子音が鳴り出す。この時点では何の曲か分からなかったのだが、続いて裏打ちのリズムが入ってきて気が付く。
[TURN TURN]キターーー!!!
SKETCH SHOWのファーストアルバム[AUDIO SPONGE]の一曲目を飾るこの曲。僕の凄く好きな曲の一つだ。そしてこの曲、ファーストの一曲目と言うこともあってか、僕の中ではSKETCH
SHOWのデビュー曲にして代表曲みたいな、そんなイメージの曲だ。
そして、この日のこの[TURN TURN]が、本当にシビれる程にカッコ良かったのだ!! 過去にSKETCH
SHOWのライブで演奏されたのとは全く異なるアレンジ。ソリッドな切れ味の電子音に、ハードなギターソロ。テクノとロックが美味く融合した、言ってみればデジロック的な味わいの素晴らしくカッコ良い仕上がりだった。
SKETCH SHOWの[LOOPHOLE]と言い、幸宏さんの[BLUE MOON BLUE]と言い、最近はすっかり大人の音に落ち着いちゃってるなぁ…と言う気がしなくも無かったのだけど(でも勿論こういう路線も大好きだけど)、でも未だにこんな前衛的な鋭い音も創れるのだなぁ…やはり天才は凄い。
この[TURN TURN]は会場内の反応はイマイチだったけど(と言うか基本的にYMOの曲以外は反応薄い)、でも僕の中ではこの日一番のヒットだった。
ここでMCが入り、そしてなんと幸宏さんが生ドラムにスタンバイ!! どこかで使うのかと思っていた生ドラムがここで来た!!
そして演奏されたのはSKETCH SHOWの[SUPREME SECRET]。アルバム[AUDIO SPONGE]収録の曲だ。それにしても生ドラム使うのはてっきりYMOの曲だろうと思っていたから、SKETCH
SHOWの曲だったのはなんか意外にも思えた。でもまあ、[AUDIO SPONGE]の曲は、YMO直系のテクノポップっぽい雰囲気も備えているからこれもアリなのかもしれない。
続いては同じく[AUDIO SPONGE]から[WONDERFUL TO ME]。二曲とも、原曲に近いアレンジだったけど、生ドラムが加わったことでか迫力が増した様に感じた。そしてこの二曲では、幸宏さんだけじゃなく、細野さんに教授がかなりヴォーカルを務めていた。
次に演奏されたのは知らない曲。シリアスな雰囲気のインスト曲で、そこにメッセージ性の深い、英語の詩が次々に読まれていく。「戦争」と「愛」についての詩の様だった。VJに映し出される映像と詩が、胸に深く響く。「WAR
IS BEST GAME BUT WORST LIFE」だったか。そんな言葉が心に痛く刻み込まれた。
会場内も少ししんみりとしてしまった模様。しかし、たまにはこういうのもいいだろう。音楽を聴いてただ楽しむだけじゃなく、色々と深く考えてみたり…そんな時間も必要だと思う。
さて。まだまだライブは終わらない。
ここで、遂にあの曲が、会場内の誰もが恐らく待ちわびていたあの曲が…!!!
[RYDEEN 79/07]キターーー!!!!!
ラガービールのCMで一世を風靡したあの曲が、遂に遂に来た!!! 会場はもう大興奮!! 僕は実を言うと生ではこのCM観ていないのだが(テレビほとんど観ない)、でも勿論ネットではチェック済みだし、曲もしっかりフルコーラスでダウンロードしている。しかし今日のこの生で聴く[RYDEEN
79/07]、ダウンロードしたものよりもずっとずっと素晴らしい!! アレンジはほとんどそのままなのだが、この音の深みと厚み、そして臨場感はやはりライブならではのもの!! 素晴らしい、本当に素晴らしい一曲だった。
そしてここで一旦ライブは終了。ステージ上から立ち去るメンバー達。観客の惜しみない拍手。
…だが勿論、これで終わるワケが無い。鳴り止まない観客の拍手に誘われるかの様に幸宏さんがステージへと舞い戻る。そしてメンバーを呼び寄せる。最初に入ってきたのは三人のサポートメンバー達。幸宏さんのソロライブやSKETCH
SHOWのライブでもサポートを務めていた人達だ。そしてなぜか、このサポートメンバー達がYMOシャツを着ていたのがおかしかった。
幸宏さんが続いて教授と細野さんを呼び寄せる。そして再び始まる演奏。
曲はなんと…。
[CHRONOGRAPH](号泣)
SKETCH SHOW の[TRONIKA][LOOPHOLE]に収録のこの曲。僕の大大大好きな曲なのだ。SKETCH
SHOWの中で一番好きなのかもしれない。思えばこの曲、初めて聴いたのはもう5年近く前のSKETCH
SHOWのライブ。その時はまだ発表前で、知らない曲ながらもいい曲だと思ったものだ。そしてミニアルバム[TRONIKA]で再会したのだけど、その時はオーディオで独り聴きながら知らず知らずのうちに目から涙がこぼれていた。
そして今日…。やはり僕は、目からこぼれる熱いものを抑えることが出来なかった。この曲のメロディには人を感動させて止まない何かがあると僕は思うのだ。切なくも美しいメロディに、幸宏さんのはかなげな歌声がよく合い、それが絶妙なコーラスとなって会場内を包みこむ。
今日、ここに来て…本当に良かった。アンコールで僕の大好きなこの曲が聴けた、ただそれだけでも本当に僕にとっては価値があるものだった。
続いてはやはり[TRONIKA][LOOPHOLE]に収録の[EKOT]。先ほどの[CHRONOGRAPH]もこちらも、アレンジは原曲通りながら、音の厚みと広がりが増して、それが会場内に素晴らしく響き渡るのだった。
これで、今日のライブは終了。再び会場を去っていく幸弘さん達。しかし最後が[CHRONOGRAPH]に[EKOT]では少ししんみりし過ぎなのでは…。
などと思っていたら、もう一度戻ってきてくれた!!!
そしてなんと今度は…坂本さんが生ドラムに座ってる!!!
まさか教授がドラムとは…。そう言えば昔のYMOのライブだか何かで、一度演ったことがあるとか何とか聞いたことはある気がするけど…まさかそれがこの目で拝めるとは!!
そして演奏されたのはYMOの[CUE]。去年の秋の幸宏さんソロライブでもアンコールの定番だった曲だ。アレンジはやはりSKETCH
SHOW風…と言うか2007年風。でも幸宏さんのライブの時とは微妙に違う感じか。
これで、全て本当に終了。ステージを去っていく幸宏さん・細野さん・坂本さん。三人に惜しみない拍手を送る。いつまでもいつまでも鳴り止まない会場内の拍手。本当に、本当に素晴らしいライブだった。
もう観れるハズが無いと諦めていた生のYMOの御三方の演奏。それを、こんな形で観られたのは本当に幸せだったと思う。いわゆる再生YMOのライブよりも(僕は勿論それをCDでしか聴いたことは無いのだけど)、むしろサービス精神に溢れていたライブだったのでは。そして、御三方の間になんともリラックスした和やかなムードが漂っていたのが本当に嬉しかった。過去のYMOについては色々とファンの間でも憶測が飛んでいることだけど、でもそんな過去を全て(いい意味で)振り切って現在のYMOがあるのだと。そう思った。
ホールを出て、帰りがてらにロビーで売ってたTシャツ購入。買うまい買うまいと思っていたのに…結局買っちゃった。何種類か売られてたけど、僕は勿論、この[HUMAN AUDIO SPONGE]ロゴのをゲット。一応着ることも想定してSサイズで買ったけど、でもやっぱり着るのは勿体無い様な、記念にそのままとっておきたい様な…迷うところ。
それにしても今日のライブでも思ったのがやはり、高橋幸宏はカッコいい。御三方それぞれに渋い味があって素敵なのだけど、僕にとってはその中でも幸宏さんが一層際立って輝いて見えるのだ。
僕もあんなおじさんになりたいものだ。心底そう思う。 |
|
|
|
|
|
|
|