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− MOT THE MUSIC −
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10月20日(金)。この日は[東京都現代美術館]で面白いイベントが行われる。「MOT
THE MUSIC」と題したこのイベント、[東京都現代美術館]が所蔵する芸術作品と、プロのアーティストが演奏する音楽とのコラボレーションを図ると言うなかなか興味深い試みで、今回の「MOT
THE MUSIC」。なんとそのアーティストとして出演するのが高橋幸宏なのだ。
もともと美術館は好きだし、現代芸術作品とかには非常に関心のある僕。言うまでも無く幸宏さんは好きで好きでたまらないアーティストの一人。となればこれはもう、観ておくしかない。
当日、夕方17時過ぎに家を出る。バスに乗って[東京都現代美術館]へ。美術館には18時ちょっと前くらいに到着。夜の美術館と言うのは、普段なかなか訪れる機会の無い場所なのだけど、ライトアップされた建物がちょっと幻想的で、なかなかにイイ雰囲気。一体ここで今日、これからどんなイベントが行われるのか…。期待は高まる。
開場は18時半と言うことで、外でしばらく待つ。周りには、同じ様に開場を待つ人達の姿。閉館後の美術館の入り口付近に、何人もの人がいると言うのもちょっと不思議な光景だ。
18時半少し前になって、美術館へ入る。奥へ進むと常設展示場があって、その中に今日のイベントの会場がある模様。常設展示場の入り口で、チケットに付随のドリンクを貰う。
さすがに美術館、洒落ているなぁと思ったのが、このドリンクのチョイス。普通のクラブやライブハウスのイベントならばビールとなるところが、ワインにシャンパンがグラスで置いてあった。思わず手が伸びそうになったのだけれど、思い留まってノンアルコールのオレンジジュースにしておく。せっかくの幸宏さんのライブなのに酔っ払った状態で観るのは勿体ないし失礼。と言うか、少し前に引いた風邪がずっと治らず体調が悪いままなので、とても酒なんて飲めないのだ。
今日のイベントの会場となるのは、3階にある展示室の1室。とりあえず階段をあがって3階へと向かう。3階には何室もの展示室があって、どうやら一番奥の展示室が会場らしい。
演奏が始まるのは19時くらいかららしく、まだ時間もあるので、展示を観ながらゆっくり奥へ進む。この日は3階の展示室では「みんなのなかにいる私」と言うタイトルで展示をやっていて、なかなかに興味深い作品が色々と置いてあった。
一番最初に足を踏み入れた展示室にあったのは、天井からあたり一面見渡す限りにつるされた、色とりどりの灯りのついた無数の小さなハコ達。これは荒木珠奈と言う人の作品らしい。ちなみに床には小さなハコが幾つか置いてあり、天井からつるされたコンセントに自分でそのハコをくっつけることも出来る。最初の部屋にいきなりこんな大掛かりで型破りな展示があったものだから、これは度肝を抜かれた。こんな作品達の中で行われるライブ。…ますます期待が高まってゆく。
部屋を進んでいくと、見たことのある作品も幾つかあった。現代芸術作品の、有名な作品達が展示されているのだろう。
そして一番奥の部屋の前には、もう行列が出来ていた。皆、幸宏さんのライブをいい場所で観たくて、開場を待っているのだろう。
しかし思ったのが、せっかくの美術館×音楽のコラボレーションなのに、ここで早々と並んでいる人達はきっと幸宏さんの音楽にしか興味が無くて、美術館の作品達はどうでもいいのだろうな、と言うこと。なんだかそれは凄く勿体無い様な気がする。
とは言え、時間も19時近くになっていたので、僕のその行列の後ろの方に並ぶ。
19時少し前になって、会場の展示室へ入っていく。と、その展示室にあったのは、壁にかけられた、大きな電光掲示板。その電光掲示板には、無数の赤い数字が点滅している。そしてよく観ると、その数字達はどれも、1から9までの数字を永遠にカウントし続けている。この作品は宮島達男と言う人の作品。僕は昔、どこかで観たことがある。と言うか(恐らく)有名な作品なので、現代芸術とか好きな人ならば、きっとどこかで目にしたことがあるかもしれない。
そして、その電光掲示板の作品の前に造られたステージ。そのステージの前に並べられた椅子。今日のライブはどうやら、この椅子に座ってゆっくりと観るスタイルの様。
結構後ろの方に並んでいたのにも関わらず、なぜか前から2列目の席に座れてしまった。これはラッキー。しかし今回の幸宏さんのツアー。リキッドルームでは普通の立ち見のスタイルで、こないだの新宿でやったのは床に直座り。そして今日は椅子に腰掛けて…と、三者三様でこれもなかなか面白い。
19時を少し回った頃、ステージにはサポートメンバーの一人が姿を現す。まだ幸宏さんや他のメンバーは登場してこない。そして虫の鳴き声なんかの自然音が会場に流れる。
そうして5分くらい経っただろうか。幸宏さんが登場!! 湧き上がる会場。今日の幸宏さんはジャケットスタイルにハットで決めている。いつ見てもやっぱりお洒落でカッコいい。
自然音のSEからつながって流れ始めたのは、牧歌的なエレクトロニカ。ステージ上の幸宏さんは、真剣なまなざしで機材をいじり、次々と音を奏でていく。と言うか、憧れの幸宏さんをかなりの至近距離で観ていると言うその事実だけで僕はもう、失神しそうだった。
続いて、ハンドクラップの音が印象的な、明るめのエレクトロニカが流れる。さっきの曲もこの曲もアルバムには入っていない、知らない曲だ。今日のライブもこないだの新宿のと同様、アルバムとは一味違う、エレクトロニカ主体のライブなんだろう。
そして、それまで明るい音が流れてきたのを打ち消すかの様に音が一気に暗くなる。そう。3曲目に演奏されたのは[IN COLD QUEUE]。こないだの新宿のライブでも3曲目くらいにかかった曲だ。
オリジナルのシンセの暗く厚い音はそのままに、そこに原曲にはないエレキギターの音がアクセントとして加わる。この辺りのアレンジがどうしようも無くカッコイイ。それまでの2曲には無かった、ある種の緊張感が会場を包み込む。この感覚もなんとも素敵だ。
この後は、またちょっと明るい、ゆったりとした感じのエレクトロニカがかかる。
そして続く5曲目。踏切の警報機の「カン・カン」と言う音に似た音が流れ、そこにかぶさる様に、きちんと一定間隔のパターンでパーカスの音が聴こえてくる。そして生ギターの音を中心とした、暖かく優しいメロディが流れ出す…。
ああ、この曲だ。こないだの新宿のライブでも演奏された曲。曲名は分からないのだけど、とにかく印象に残ったあの曲だ。
曲名も分からない曲なのに、それなのに…。この曲のメロディが流れてきた時、僕の目からはふいに涙がこぼれそうになった。この曲にはまるでスケッチショウの[CHRONOGRAPH]の様な、そんな涙腺を刺激する作用があると思う。
そしてここで幸宏さんのMCが入る。メンバー紹介だとか色々と。そしてこの時、幸宏さんの口からとんでもない発表が…!!
「今日のライブも録音してるんですけどね。
(今回のツアーで録音した中で)いいものを使って、
作品出したいと思うんですよ。
ライブになると思うんですけどね。」
…つまり、ライブアルバムが出ちゃうってこと!?
これは凄い…。凄過ぎる。音楽作品になるのか映像作品になるのか、リキッドで観た時の様なアルバム中心のセットのものなのか今日みたいなエレクトロニカなものなのか、それはサッパリ分からないけれど、でもとりあえず何らかの形でライブ作品が出る。これだけは確か。
このMCの後、演奏された曲は、YMOの[LIGHT IN DARKNESS]を思い出させる、重く不規則なドラムの音が印象的なトラック。この曲も確か、新宿のライブで聴いた気がする。と言うか恐らく、今日のセットは、新宿の時とほぼ同じセットなんだろう。
そこに続くのは、なんとも牧歌的で北欧的な、まるでスケッチショウの[TRONIKA]の様な雰囲気のエレクトロニカ。これも確か新宿で聴いた。
そして最後に[CUE]。新宿の時と同様、ちょっとボサノバを思わせる、裏打ちのシンセが刻まれたアレンジに仕上がって、そこに幸宏さんのヴォーカルがなんとも気持ち良さそうに乗って、会場全体を柔らかく包んでいく。その歌声を聴きながら、きっと会場の誰しもが幸せな気分になっていただろう。
「ありがとうございました」と頭を下げ、ステージを去っていく幸宏さんとサポートメンバー。会場の誰もが惜しみない拍手を送る。いつまでも鳴り止まない拍手。でも今日はきっとアンコールは無いだろう。だってここで[CUE]をやってしまったのだから…。
そう思っていたら案の定アンコールは無かった。ちょっと残念(笑) でも逆に、凄く綺麗にまとまっていたセットだったから、下手にアンコールなんて無くてちょうど良かったのかもしれない。
にしても今日のライブ。現代美術品とのコラボレーションと言うことで、一体どんなものになるのだろうかと思っていたのだけれど、全く違和感無く仕上がっていた。
使われた作品が電光掲示板の作品だったから、まるでVJの様にステージとすんなり溶け込んでいた。エレクトロニカ主体のセットだったのも良かったのかもしれない。
時間は20時。ライブは終わってしまったのだけれど、20時半までは美術館の作品を見学できるとのことで、1階の展示室をぶらぶらと眺めて回る。非常に興味をそそられる、面白い美術品が幾つかあった。真っ白なキャンバスだけの作品でタイトルが「君主」だとか、意味深な様な全く意味が無い様な、そんな不思議な作品に出会えた。これだから現代芸術って面白い。
あと、[BLUE MOON BLUE]ツアー限定のTシャツを買ってしまった。今まで行った2回のライブの会場でも売られていて、その時は買わなかったし、こういうTシャツって買っても着ないの分かってるから、だから買わないって決めてたのに…。
でも結局買ってしまった。まあ、記念だし。一応幸宏さんデザインだし。何より首元の部分。幸宏さんのサインが書いてあったりするし。
これで(自分の中の)高橋幸宏追っかけライブツアーは終了。しかしこの一ヶ月の間に3回も幸宏さんのライブを観た形になるのだけれど、それにしても痛感したのが幸宏さんはカッコイイなぁと言うこと。
僕もあんなおじさんになりたいものだ。心の底からそう思う。 |
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