−Dr.SHINGO 2ND ALBUM RELEASE TOUR−
 
 
2004年4月9日(金)。仕事を10時くらいに終え、一旦帰宅。そして着替えてすぐにまた家を出る。今日はこれから渋谷へと向かう。目指すは[WOMB]。DR.SHINGOのセカンドアルバムのリリースツアー。その東京編に参戦してくるのだ。
 
思えば、東京に来てから初のクラビング。いやそもそも僕は、東京のクラブ自体に行ったことがないのだ。例えば[WIRE]だとかの大型レイヴパーティには遊びに行ったことがあっても、純粋な「クラビング」を東京でしたことはなかった。
 
そんなワケで色々と楽しみなのだ。
 
 
渋谷に着いたのは夜中の12時ちょっと前。渋谷へと向かう銀座線の車内は、週末と言うこともあってか凄く混んでいた。そして渋谷の街も至るところ人だらけ。さすが眠らない街、渋谷。
 
[WOMB]を目指すべく、道玄坂を上がって行く。そして交番の辺りで場所を探し回る。ネットで地図を見るとこの辺りだったハズなのだけど…。
 
場所が分からないので、数少ない東京在住の友人エリちゃんに電話。そしてあちこちうろうろした結果、どうやら一本道を間違えていたことが判明…。これでは辿り着くワケも無い(苦笑)
 
[WOMB]はホテル街の一角にあった。周りはラブホや風俗店ばかり…。歩くだけで辺りの視線が気になってしまいそうな、ちょっとイヤなロケーションだ。おまけに看板も何も出てなくて分かり辛い。
 
 
店内へと入る。入り口からちょっと入ったところにセカンドフロアー(ラウンジ?)があって、まったり系の音が流れていた。そして更に奥。階段をあがったところがメインフロア。
 
フロアに入ると、爆音でテクノが流れている。…これ、この感じ。しばらく忘れていたこの感じ。家で独りまったり聴くテクノも大好きだけれど、でもこの、フロアで聴く…いや「感じる」大音量のテクノ。この感覚こそが今僕が欲していたものだったんだ。
 
今まわしているのはTORSTEN FELD。どんな人かよく知らないが、あのSVEN VATHのCOCOONでプレイしたりもしてる人らしい。音はダークでディープで、でもハードないかにもドイツぽい音。
 
 
この[WOMB]のメインフロア、広さは的には幅は大阪のロケッツ位で、縦をもっと長くした様な感じ。でも天井がもの凄く高い。名古屋のOZON並みに高い天井で開放感があってなかなかにイイ。音も悪くない。
 
東京のクラブはきっと満員で踊れないんだろうな…そんなことを思っていたのだけど、案外とそうでもなかった。かなり空いていて、ゆったりと踊れる。そして周りを見ると、結構ヘンな踊りをしている人がいるのだ。意外にも東京には変態ダンサーガシガシ踊る人達が多いことが分かりちょっと安心。そして僕もその人達にまじって踊ってみる。
 
 
しばらく踊ってビールをあおり、そしてちょっと涼もうとフロアを出て、入り口の方へ戻る。と、そこでエリちゃんに遭遇。そして彼女の友人達を紹介してもらう。そしてしばらくはラウンジの方でまったり。酒を飲みながら談笑。その時に話してて分かったのだけど、どうやら今日は[PLUS]と日がかぶっていたらしい。なるほど…道理でちょっと空いているワケだ。
 
 
またメインフロアへ戻る。TORSTEN FELDが、凄く上モノの印象的なトラックをかける。なんかロックぽい雰囲気のある歌モノの曲だった。そしていつの間にか時間は1時30分。続くはTHOMAS BRINKMANNのライブ。
 
ブースに現れたのは、短髪のイカツイ外人兄ちゃん。僕はこの人のこともほとんど知らない。でもライブはなかなか良かった。ノイジーで、ダークで、でもハードでガシガシ踊らされる。途中でリズムがなくなってうねった感じのノイズだけになって、それを更にひずませてみたり…ライブと言っても単に自分の曲を垂れ流すんじゃなくて、音の表情の付け方とかがとても上手い。
 
そしてBRINKMANNの一時間のライブのあと、ブースに登場したのはDR.SHINGO。(世間的には)今日のメイン・アクトの登場だ。
 
 
何やらオーケストラ風のオープニングで幕を開けた彼のライブ。それは僕の想像とはまるで違っていた。僕は以前に見た彼のDJや、有名曲[HAVE YOU EVER SEEN BLUE COMET]のイメージから、この人はトランシーで綺麗な上モノの、明るい曲を創る人だと思っていた。
 
しかし今日のこのライブ。音はもの凄くダーク。ディープ。なおかつガッシガシにハードでストイック。まるで一昔前のJOHANNES HEILみたいでカッコいい。そう言えば今日のパーティは、彼のセカンドアルバムのパーティのハズだけど、と言うことはもしかしてセカンドアルバムはこんな音なのか? いや、だったら僕買いますよ、マジで。
 
この人のライブは以前名古屋でも観たことがあって、その時はブース間近で観れてライブ中の手の動きだとかを細かく観ることが出来て興味深かった。今日のライブは、ブースがフロアよりもずっと高い位置にあってもちろんじっくりとブースを観ることなんて出来ない。でも、音で言えば今日のライブの方が断然にカッコいい。僕のもろ好みのツボの音だ。
 
途中で少しBPMが落とし目になる。でもハードさは変わらない。いや、もっとハードになる感じだ。そうして終始踊らされ放しのまま、45分のライブはあっと言う間に終了。素晴らしいライブだった。思うに、45分と言う時間もちょうど良かったと思う。ライブの場合、(WIREとかみたく)30分ではやはり短過ぎ、かと言って1時間だとネタが切れて締まりが無くなってしまう。45分がちょうどイイ。
 
 
時間は3時15分くらい。本日のトリを飾る、MARAL SALMASSIの登場。実は僕的にはこの人が今日のメインアクトなのだ。レーベル[KONSQUENT]や[ART OF PERCEPSION]のオーナーでもあるこの人、僕にとって一番印象強いのはKANZLERAMTからリリースされている、CHRISTIAN MORGENSTERNのアルバム。
 
[THE FUTURE IS ON FIRE PT.2]と言うタイトルのこのアルバム、実はCHRISTIANだけのトラックで綴られたミックスアルバムなのだ。そしてミックスを担当しているのがMARAL SALMASSI。
 
そんなワケでこの人、僕のもの凄い好みの音を出してくれるのでは?と期待大なのだ。
 
 
…結論から言ってしまおう。さっきのDR.SHINGOのライブは本当に素晴らしかった。でも、そんな素晴らしいライブも全て、この日のMARAL姐さんの前座だったのだ!!
 
 
ブースに上がったMARAL姐さん。彫りの深い、東欧系の美人と言った趣が漂う。そして早速始まったそのプレイ。時間も時間だし、まったり系の音かと思いきや、意外にもハードハード。ダークでディープ感漂うハードミニマルを次々とかけていく。彼女のレーベル[KONSQUENT]から出てるミニマルの様な、そんな感じの音が多い。アーティストで言うなら、PACOUとかそんな感じか。
 
この人のプレイは、曲と曲とを混ぜまくると言った感じではない。あまりロングミックスもせずに、さっと曲と曲をつなげていく。でも曲のツボをわきまえていると言った感じで、繋ぐタイミングが凄く絶妙なのだ。だから不自然さも全く無いし、ロングミックスじゃないからと言って不満に感じることもない。
 
プレイ開始後、30分くらいだろうか。何やら宇宙的なSEが印象的なミニマルトラックがかかる。そしてそのトラックに徐々に被さってきた「あの音」。聴き覚えのある独特のパーカッションのリズム…。こ、これはもしや…? そう…あの曲。WIREでPAUL MACがかけて、名古屋でFABRICE LIGもかけたあの曲。
 
 
−本日の壊れポイント(1)−
き、来たァァァーーーーー!!!! [STAR DANCER]だァァァァァーーーーー!!!!
 
思いっきり叫んで狂った様に最前列で踊り狂う僕。まさかいきなりこれ来るとは…。まだ開始後30分だと言うのに。MARAL姐さん、飛ばし過ぎてやしませんか? と言うか飛ばし過ぎだよ俺。周りを見るとこの曲でここまで反応してるヤツは他にいない。有名曲なハズなんだけど…なぁ。
 
しかしWIREのPAULさんと言い、ダークでハード系の人はこれかけたがりますなぁ。
 
 
そこからまた地味な音に落とし、エレクトロなんかも織り交ぜつつ展開されるMARAL姐のプレイ。そこからまた30分くらい経っただろうか。また聴き覚えのある音。そして今度は、フロアの反応も凄くいい。
 
 
−本日の壊れポイント(2)−
き、来たァァァーーーーー!!!! [BLUE MONDAY]だァァァァァーーーーー!!!!
 
まさかMARAL姐、[BLUE MONDAY]かけるとは…ちょっと意外だ。この曲がかかったことで、フロアの雰囲気をパッと明るくなる。更にここにVITARICの[PONY]、そしてURAL13とヒットトラックを大連発!!
 
…MARAL姐、さっきまでのダークな音は一体どうしたの? サービスし過ぎですぜ!! 
 
しかしこの人は、全体的にダークな雰囲気を漂わせたプレイをしながらも、決してマニアックになってしまうのではなく、何と言うか…ダークなのに分かりやすい、そんなプレイの人だ。思うに、ダークな音をここまで親しみやすく聴かせてくれる、そんなスタイルのDJて他にはなかなかいない。
 
 
と、またしばらくして聴き覚えのある音が入ってくる。このダークで変態的なベース音。これも色々なところで聴いた。名古屋でDJ KAORUがかけたし、WIREでMONIKA姐さんがかけた。そう言えばWOODYなんてアホな兄ちゃんもかけてたっけ…。
 
 
−本日の壊れポイント(3)−
き、来たァァァーーーー!!!! [PARANOID DANCER(HELL REMIX)]だァァァァァーーーー!!!!
 
MARAL姐さん、きっと何かしらKANZLERAMTはかけるに違いないと思っていたけど、これ来ましたか…。これは本当は原曲の方が好きなんだけど、でもみんなHELLのしかかけないんだよなぁ。でも、HELLのヴァージョンの方がタイトル通りの曲っぽいよな。なんか本当にパラノイドっぽい。
 
…とかこの時に頭の中で考えていたワケも無く、とりあえず無心に踊りまくりました。僕。
 
しかしこの人も色々とかける人だ。ミニマルからエレクトロまで本当に幅広く操る。でも、その音は一貫してひたすら「ドイツ」。もろにドイツテクノなのだ。ドイツまで行かずとも、充分にドイツな音を聴かせて、魅せてくれる。僕はもう満足しきっていた。今日、来て良かった…。
 
 
と、プレイも最終盤へと入ってきたところで、徐々に聴こえてくるあの聴き覚えのある音。よく響くパーカスの音にあの澄み切った綺麗な上音。そして永遠にループされるかの様なあのメロディー…。
 
 
−本日最大の壊れポイント−
き、来ちゃった……。来ちゃったよ。[HAWAII BLUE]だァァァァァァァァァァ!!!!(狂喜乱舞)
 
僕のもっとも好きな、フェイバリット・テクノトラックの一つの、MORGENSTERNのこの曲。澄み切った上音の綺麗さ、永遠に同じフレーズがループされている様で微妙な変化を魅せていくその表情…。構成も完璧な素晴らしいトラック。テクノ界の歴史に残すべき傑作トラック。まさか、それがここで聴けるとは…。
 
まあ、もしかしてかかるかな?と少しは期待もしていたのだけど、でも本当にかかるなんて…。
 
もう僕は、嬉しくて嬉しくて、ひたすら飛び跳ねていました。年甲斐もなく。
 
でも、聞いた話によるとMARAL姐さんってMORGENSTERN氏の恋人だったのだとか。仮にそうでなかったとしても、氏の曲だけでのミックスを創るほどだからよほどの親交があったことは確か。彼が亡くなってしまった今、その代表曲を一体どんな気持ちでかけたんだろう…。
 
そんなことを思うと、少しだけ胸が痛くなった。
 
 
のだけど、そんな事を思わせるヒマも無く、更に更に!!
 
 
−本日の壊れポイント(5)−
そ、それ繋いじゃいますか…。[TOTAL DESTRUCTION(JOHANNES HEIL REMIX)]だァァァ!!!!
 
[HAWAII BLUE]に姐さんが繋いだのは、なんとURAL13の[TOTAL DESTRUCTION]JOHANNES HEILのリミックスだった!! ま、まさかこれ来るとは…。この曲もかなり好きなのだ。実際にはもうこれ、URALの曲じゃなくってまるっきりJOHANNES。ダークでハードなジャーマン・ミニマル!!
 
実は僕、[TOTAL DESTRUTION]のHEILミックスから[HAWAII BLUE]へ繋ぐのは凄く合うなぁ、とか思って密かに家でやってみたことがあったのだ。でも姐さんはその逆をやってくれちゃいました。
 
 
もうここで僕は完全に壊れる。壊される。おかげであとはもう、何がかかったかなんてほとんど覚えちゃあいない。でも、何かロックぽい歌モノがかかったりしてひたすら楽しかったのは覚えている。あと、プレイしているMARAL姐さん自身も凄く楽しそうだったのも覚えている。
 
 
こうして、MARAL姐さんのプレイは5時過ぎに終了。アンコールで一曲だけ更にかけ、パーティも終了。
 
 
外へ出ると、もうすっかり空は明るかった。時間はまだ5時半。でも都会の街はすでに動き始めていた。