第2回公演

1993年4月17日(土)

浜離宮朝日ホール

<曲目>

(アンコール : セサミ・ストリート/鍵和田道男)


*1)ピアノ伴奏/伊藤康英
*2)バリトン歌手/今尾滋


プログラム ノート

「セヴィリアの理髪師」より序曲 / ジョアッキーノ・アントニオ・ロッシーニ →

 2幕からなるオペラ・ブッファ(opera buffa,喜歌劇)で、1916年ローマで初演されました(日本初演は1917年)。ボルマルシェの喜劇(<フィガロの結婚>の前編)に基づくステルビーニの台本によって書かれています。アルマヴィーヴァ伯が理髪師フィガロの協力を得て、美しい娘ロジーナの後見人医師バルトロの裏をかいてめでたく結婚するという物語です。この序曲は、<イギリスの女王エリザベス>にも用いられています。

ユーフォニアム・ショーケース

 さあ、ここでは、ショーケースの中の楽しい世界を覗いてみることにしましょう。

  • ヴェネツィアの競艇 / ジョアッキーノ・アントニオ・ロッシーニ

     ロッシーニは、イタリアの歌曲の諸原則をフランス的朗唱法と結合することに成功した作曲家でした。本日は、1930〜35年の間にパリで作曲された“音楽の夜会”(合唱とピアノの為の12のアリエットと二重唱曲)の中から、第1曲「ヴェネツィアの競艇」を演奏致します。船の漕ぎ手に「頑張れ、頑張れ」と声援を送っている様子が楽しく曲の中に盛り込まれています。
     また、ピアニストには、著名な作曲家であり、我々の仲間でもある伊藤康英氏をお迎えしてお送り致します。

  • 新ヴェニスの謝肉祭 / トーマス・スティーヴンス

     アーバンやクラークの編曲でよく知られている<ヴェニスの謝肉祭>ですが、この曲ほどさまざまな楽器で演奏される機会の多い曲はないのではないでしょうか。この曲は、4本のトランペットとピアノの為に編曲されたもので、最後の変奏曲ではアメリカの名優ダニー・ケイの為に書かれたスウィング調のものもあり、ソロの為の変奏曲とは一味違った演奏をお楽しみいただけると思います。

  • 「前奏曲第1集」より / クロード・アシル・ドビュッシー

     ドビュッシーのピアノ曲の代表作であるこの「前奏曲集」は、作品の中の1曲1曲に与えられた標題が、曲頭でなく、曲の末尾に控えめに記されていることから、標題は具象的なものではなく、漠然とした暗示やイメージにとどまっているという点において、もっとも印象主義的な作品の一つといえるでしょう。今回はその中から、同名の詩から題をとった<亜麻色の髪の乙女>と、アメリカの黒人の歌謡ショーの意味を持つ<ミンストレル>を取り上げ、ユーフォニアムの持つ淡く微妙な音色のヴォキャブラリーの拡大を試みています。

  • ある古い主題に対する4つの感性 / ウヴェ・ヒルプレヒト

    (Thema - Der Melancholiker - Der Sanguiniker - Der Phlegmatiker - Der Choleriker)

     この曲は、ドイツのテューバ奏者D. ウンクロト氏の為に書かれたもので、本来はFテューバで演奏されます。最愛の妻ウリディースを自分の過ちの為に殺してしまったオルフェがその悲しみを歌うアリア(C.W.グルックの歌劇
    <オルフェとウリディース>第3募の「私はウリディースを失った」)の冒頭が主題として使われています。これに対し対照的に性格づけられた架空の4人が、テーマをモチーフとして応答する形になっています(主題 - ふさぎこみがちな人 - 快活な人 - 無気力な人 - 怒りっぼい人)。この4人の微妙な心理状態の変化や性格的特徴の巧みな描写が、この曲の聴きどころと言えるでしょう。

  • 百煉の鏡 / 千秋次郎

     この曲は、ユーフォニアム・カムパニーの委嘱により、今年2月に完成した約9分弱の作品です。電話で三浦氏から「8重奏に歌のついたものを作ってほしい」と言われたときは、事実たいへん困惑しました。8本の同一楽器による作曲だけでも自信がないのに、しかもそれに歌を乗せるというわけですから。まずそういう特殊な編成が不自然に感じられないような詩(テキスト)の選択が、可能かどうか。---かなり考えあぐねた末、ふと思い出したのが、中国の詩人・白楽天(白居易)の漢詩をフリー現代語訳した「百煉の鏡」という、以前に知人から預かっていた詩のことでした(別掲の詩章参照)。これならいけるのではないかと思い、作曲に着手しましたが、やはりハードワークで予定よりも1か月も遅れてようやく完成した次第です。8本の楽器を2つの群に分け、主体とその反映(鏡)という比喩的イメージで捉え、これにメッセージ(声)を重ねました。ユーフォニアム・カムパニーによる今夜の世界初演のご成功を祈ります。また個人的にはこの作品を、<開かれた皇室>への一層の期待をもって、このたぴの皇太子ご成婚の記念にしたいと思っています。   (千秋次郎)

    ウェスト・サイド・ストーリー(ジェットVSシヤーク) / レナード・バ−ンスタイン/伊東明彦

     アーサー・ロレンツの台本によるこの曲は、1949年にジェリー・Rから「ロメオとジュリエット」の現代版をと、依頼を受けてから8年間にわたって構想が重ねられたのち、ついに1957年に完成され、同年8月19日にワシントンD.C.で初演されました。
    「ジェットとシャークという2つの不良グループの対立の中で、おたがいに惹かれあうトニーとマリア。2つのグループの決闘を止めに入ったトニーは、親友リフを殺されたことで、逆上してしまい、マリアの兄ベルナルドを殺してしまう。兄を殺し、追われる身となったトニーをそれでも愛するマリア。いつかどこかで結ばれようと誓いあう2人だが、最後にはトニーの死…」という物語ですが、ジェットVSシャークを2つのカルテットに置き換え、演奏で対決します。いったいどんな結末を迎えるのでしょうか?
    どうぞお楽しみに!

    レッド・フォックス / 鍵和田道男

     三浦先生はじめユーフォニアム・カムパニーの皆様、本日のコンサート誠におめでとうございます。今回も、三浦先生より作曲の依頼を承りまして、ご来場の皆様には、お耳汚しとなった次第でございます。
     Red Foxすなわち「赤いきつね」ということになりますが…。
     寝っころがりながらテレビを見るのが好きな(ダラシナイ)私は、その時もそんな格好でコマーシャルを見ていました(最近のコマーシャルは結構おもしろい)。トッ!突然電話のベルが鳴り、三浦先生の声がしたとき、テレビでは「某ウドンカンパニー」の「某俳優」による「赤いきつねを探せ」などという、そうです!マルチャンの赤いきつねでした………草々。
    (鍵和田道男)