第1回公演

1991年11月23日(土)

セシオン杉並

<曲目>


*)ピアノ/渡部正子


プログラム ノート

パッサカリア ハ短調 / ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685-1750) →

 本日の演奏会の開幕は、教会音楽やオルガン曲などのバロック音楽の大作曲家、J.S.バッハの「パッサカリア ハ短調」です。オルガンの為に書かれたこの曲は、すぐれた作品の多くが書かれた「ケーテン時代」の作と考えられています。
 "パッサカリア"というのは低音で持続的に繰り返される主題を持つ3拍子の変奏曲です。今回は、この低音パートが舞台中央にて着席して演奏し、他のパートはすべて立奏することによって、主題の安定感とアンサンブルの立体感を演出するという試みが行われています。

ユーフォニアム・ヴァリアンツ

ここでは、ユーフォニアム・ヴァリアンツと銘打ってユーフォニアムの様々な顔をご覧に入れましょう。

この世の全ての魂 / ガブリエル・フォーレ(1845-1924)

 ドイツにおいて、シューベルトがリートというジャンルを開いたように、フォーレはフランス歌曲の分野を確立した最初の作曲家の一人です。
 本日演奏いたします「この世の全ての魂」は、本来ソプラノ二重唱とピアノの為のもので、フォーレならではの均整のとれた美しいメロディーと深い抒情を秘めたハーモニーを持つ名曲です。歌える楽器ユーフォニアムの二重奏の表現力の豊かさをお楽しみ下さい。

熊蜂の飛行 / ニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844-1908) →

 この曲は、歌劇「皇帝サルタンの物語」の中で--海を越えて飛来した熊蜂の群れが、白鳥のまわりを飛び回る--という場面で演奏される曲で、始終ブンブンという羽音を模倣した楽想で貫かれる常動的な曲です。熊蜂の華麗な飛びっぷり(?)にご注目ください。

歌の翼に / フェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)→

 ドイツの作曲家で、指揮者、ピアニストでもあったメンデルスゾーンは、裕福で教養あふれる、ユダヤ系のブルジョワ家庭の第二子として生まれました。
 この「歌の翼に」は、1834年に作曲された「6つの歌曲」の中の1曲で、彼の作品の中でも、最もポピュラーな曲といえるでしょう。作風の上では、1780年頃のドイツで好まれていた単純なリートへの愛着がうかがわれます。

舞踏組曲 / ブライアン・イズラエル(1951-1986)

 B.イズラエルは、1975年より35歳の若さで白血病で亡くなるまで、米国ニューヨーク州シラキュース大学音楽学部の教授陣の一人でした。彼は、管楽器の為の多数の作品を含め87曲の作品を残しています。
 この「舞踏組曲」は、ポルカ、ワルツ、タランテラの3つの楽章から構成される無伴奏ユーフォニアムの為の独奏曲です。それぞれの楽章はタイトルが示す通り舞曲の要素を持ち、また、無伴奏とは思えないほど、色彩感や量感の変化にあふれています。


歌って、飛んで、 踊るユーフォニアム・ヴァリアンツ・・・
お楽しみいただけたでしょうか?

ユーフォニアム・コンペティション / 金田潮兒

 この曲は、ユーフォニアム・カムパニーの委嘱により、今年の7月に書いたものです。Bb・C・Db・E・F#・G・Aの7音階が曲を支配し、大別して5つの部分([A]+[B]+[C]+[D]+[A])から出来ています。[A]はIntroductionで演奏者が順番に登場します。全員が登場したら[B]になります。ここでは第1奏者がBbのBaritoneに持ち替えます。この部分の最後には次の[C]の為のファンファーレ的なものが現れます。[C]は曲名にもなっている「Euphonium Competition」です。審査委員長(後で指揮者になる)の指示に従い8人の名奏者達がその腕を競うのです。さて、どういう事になりますでしょうか?次の[D]は、自由で且つ動きのある部分です。発展的であると同時に経過的でもあります。最後には、また[A]が出て来ますが、ここでは奏者が順番に登場してきた初めの[A]とは逆に第1・第5奏者、ピアニスト、指揮者を残し客席に移動し全体を取り囲むようにして曲を閉じるのです。   (金田)

カルメン in15 minutes / ジョルジュ・ビゼ−/伊藤康英

 「カルメンに目を付けられたドン・ホセ。彼の乳兄弟ミカエラは彼との結婚を望んでいるのだが、いつの間にかドン・ホセはカルメンのあやしげな魅力の虜となってしまう。一方カルメンに惚れた闘牛士エスカミーリョは、カルメンを絶対に自分のものにすると宣言。次第にカルメンはエスカミーリョに引き寄せられて行く。一途なドン・ホセは、彼女を締め切れない。エスカミーリョが闘牛場で勝利を収めたその時、ドン・ホセはカルメンを刺し殺してしまう。」‥‥‥というオペラ「カルメン」の話を(いやいや本当はもっとあるんだけどこの際カット)、あっ!という間にお聴かせしましょう。   (伊藤)

フリーダム・サウンズ / 鍵和田道男

 作曲者からのメッセージ
「ユーフォニアムって何?」
三浦さんをはじめ、御出演の皆様、本日の演奏会、誠におめでとうございます。ところで、私も含めていま管楽器を演奏している人達は、どうやって自分の専門の楽器を決めたのでしょう?
   例えば「K君」がブラスバンド部に入る時
  K君「ぼくは、かっこいいトランペットが吹きたい」
  O先輩「今、トランペットは7本いるから、
     1本しかいないトロンボーンをやってくれ‥‥たのむから!」
などというケースは多々有る訳で、「おまえは体がでかいから○○○をやれ」とか「君は手先がキヨウだから」「おまえはボーッとしているから」などと果ては性格まで決められたりして‥‥。
 我ままで協調性のないトランペット、ワケも無いのにグチャグチャ集まっているトロンボーン、やたら無神経なサックスだとか、私達の性格は、こんなにカンタンに作られてしまった。  一般に、大変めずらしく感じられるユーフォニアムが、こんなに大勢集まってしまって、いったいどんな事が起こるのか楽しみですね。
 というところで、今日はユーフォニアムの性格を見てみましょう。
 最後に一句
ユーフォニアム
知ってる人は
知っている 字余
かしこ      (鍵和田)