ミスターホンマル物語その4


 ピアホルテの去った岩手競馬。8歳となったホンマルは例年通りIBC杯から始動。
舞台は新装開店のオーロパーク。他馬より3〜5K重い59Kでの出走。5番手の位
置を進み、早めに抜け出したサバンナテイオーをエルデンライデンと共に追いかけ、
直線半ばでは先頭に立ち、2着エルデンライデンに1馬身の差をつけてゴール。IB
C杯史上初の3連覇を達成したのである。全日本2連覇に向け順調なスタートを切っ
たが、これが最後の勝利になるとは誰が想像したことか。

 第22回IBC杯〔特別〕 アラ・オープン 盛岡1800 12頭

 1着 ミスターホンマル    59菅原勲   1.56.7
 2着 エルデンライデン    56畠山信一  1.56.9 1馬身
 3着 サバンナテイオー    56小林俊彦  1.57.2 1馬身1/2

 前年、大波乱となった金蹄賞に予定通り駒を進める。IBC杯と同じ59K。しか
し、前夜から雨が降り続き、当日も益々強まる雨は極悪不良馬場へと姿を変えていっ
た。初馬場の後のホンマルは反動が出るので、嫌なコンディションである。何故かパ
ドックではいつもより大きく見せるホンマル。いつものようにチャカチャカと厩務員
を引きずるのは同じだったが何か変だった。5番手を進み4コーナー手前で逃げるラ
ンドアポロに急接近。2番手に上がったところで急ブレーキがかかった。後続馬の隊
列が大きく乱れる。すぐにその異変の主役がホンマルであることはわかった。ゴール
に辿りついたホンマルは無残な姿であった。折れた右前脚のままで必死にゴールを目
指すホンマルの意思に、菅原勲騎手も降りられなかったそうである。しばらくしてホ
ンマルは青いシートに隠され、馬運車に消えた。それがホンマルとの別れの瞬間であ
った。

                 さらば!ミスターホンマル!!

                − 完 −

   96年5月15日〜5月26日 Nifty Serve FHRACE 5番会議室に連載