【2001.07.30 渋谷ON AIR WEST】


M01. 412
M02. マシンガン・マッシュルーム
M03. ざわめく時へと
M04. PIERROT
M05. FAMILY 〜Dr.SOLO
M06. SWEET HARD ON
M07. RADIO MAGIC
M08. MORE
M09. WALL
M10. ありがとう君に
---Encore---
M11. 走り抜けた夜の数だけ

ON AIR WESTに向かう僕は激しく浮き足立っていた。完全に舞い上がっていた。

ことの発端は一通のメールだった。「シェイカーでギターを弾いてる石原です」メールにはそう書かれていた。メールを開いた瞬間、僕は自分の目を疑った。にわかには信じられなかったのだ。返事を出すことを逡巡しながらも、その夜、僕はシャラを名乗るその人にメールを出した。その後のメールのやりとりの中で、僕はその差出主が間違いなくシャラ本人であることを確信したが、あいかわらず妻は「こんなことがあるはずがない、イタズラに違いない」となおも訝っていた。そんな妻の疑念をよそに、僕はFUJI-Q Hard Rock SummitとON AIR WESTへ行く準備を始めていた。残念ながら富士急ハイランド周辺のホテルはすでにどこも満室で、僕もやむなく富士急行きを断念するのだが、それでも、「ON AIR WESTには絶対行く!」と息巻いていた。それは僕自身への宣誓にも似た言葉だった。

幸いなことにこの月曜日、いつもなら午後7時まで続く会議が延期となり、僕は午後5時には仕事場を後にすることができた。

渋谷駅で妻と合流し、道玄坂をのぼる。渋谷の街は月曜日だというのに人が溢れ、僕らはむせ返るような人いきれの中をかき分けて進んでいた。信号待ちで立ち止まったときに目にした、ショーウィンドウに映る僕の顔は怒ったような困ったような複雑な表情を浮かべていた。

昔から緊張するとよく腹痛に襲われ、中学入試の前日やテニスの試合当日には胃腸の調子を崩していたのを思い出す。
精神的ストレスが身体の症状となって出てくる疾患群を心身症と呼ぶ。精神防御機構が完成していない幼少時から思春期にかけては、むしろこれは好都合なことなのかもしれない。身体がストレスを肩代わりしてくれることで、心はダメージを受けずに済む。
だが今日は痛みよりもむしろ鳩尾(みぞおち)を中から突き上げるような圧迫感を感じていた。動悸というよりもドクンドクンという心臓の拍動そのものを自覚するような、そんな感覚だ。自分自身の著しい緊張を無視せずにはいられない状況だった。
こんなに緊張するのはいつ以来だろう。
僕は歩きながら何度も考えていた。結婚式のときも随分と緊張し、出席してくれた高校時代の友人たちが「あんなに緊張してるオマエをはじめてみたよ」と笑っていたけれど、あのときでさえ、こんな拍動は感じなかった。たまらず僕は傍らにいる妻に「なんだか緊張して吐きそうだよ」と呻いていた。

午後6時半、僕らはON AIR WESTの2階席にいた。それも最前列の真ん中だ。オープニングアクトと思しきバンドが演奏を始める。荒削りではあるが、一生懸命さがストレートに伝わってくる演奏だった。
ふと僕は高校1年のときの学園祭を思い出していた。クラスでやることになったライブハウスで、僕は机を組んで数段高くした位置から演奏者たちをカメラに収めていた。そのときの光景がなぜかオーバーラップし、一瞬、デジャヴを感じた。
その男は緩やかにウェーブのかかった髪を肩甲骨の下あたりまで伸ばしアックスマンと呼ばれていた。MOREのギターソロを一心不乱に弾ききった刹那、満足した面持ちで右手を高々と掲げる。
僕はそこで我に返った。

午後7時を廻り、第一番目のCloud nineが演奏を始めた。はじめて目にするバンドだった。ラウドネスのトリビュートアルバムに参加するというだけあって、二井原実を彷彿とさせる声質で、加えて風貌も若い頃の氏にどことなく似ている。今後の活躍を祈りたい。

アースシェイカーは3番手のトリとして登場した。場内の歓声がひときわ高くなる。待ちわびた僕らファンに対し、メンバーは非常にリラックスした面持ちでステージに現れた。
マーシーは飲みかけの缶ビールをドラムセットの前に置くと、挨拶をひと言ふた言と続ける。それだけで会場は一気に和やかになる。そんなところにもアースシェイカーの余裕と貫禄が感じられる。
舞台は懐かしい<412>で幕を開け、新曲<マシンガン・マッシュルーム>へと続く。はじめて聴くにも関わらず、気持ちよく耳に入ってくるメロディライン。それでいてストレートなハードさも十分。ニューアルバムへの期待が高まる一曲だった。
MCではクドーのFUJI-Qでのテーブル破壊の話が飛び出し、盛り上がりを見せ、その後、東京のライブでは初めてという<FAMILY>が演奏される。これはまさしく東京のシェイカーファミリーへのプレゼントだったといってもいいだろう。
ドラムソロ終盤ではクドー初の試みとなった <SWEET HARD ON>への前振り*1 があり、さらに笑いの渦が広がる。
<RADIO MAGIC><MORE><WALL>と初期の珠玉のナンバーが続き、ラストは<ありがとう君に>。アンコールは<走り抜けた夜の数だけ>で、今日のステージの幕は閉じた。

今回、非常に懐かしい曲構成で、和やかなノリと一体感の中でのステージだった。一方で、アースシェイカーの実力を再認識する鮮やかなライブだったようにも思う。
メンバーひとりひとりの笑顔はいつも清々しく--これは以前にも書いたことだが--ファンひとりひとりの笑顔を写す鏡であるかのようだ。2階席から見える観客たちは常に満面の笑顔でステージを見上げ、それに応える形でメンバーが笑みをこぼす。
こんな幸せな空間は他にあるだろうか。
僕はアースシェイカーのライブに来るたびそう思う。こんな幸せがずっと続けばいいな、といつも思う。次のライブも、そして新しいアルバムも本当に楽しみなライブだった。

(敬称略 記・波寧米兵衛 08/06/01)

#1 <SWEET HARD ON>のイントロ前には、マーシーのちょっと酔ったように戯けて唄う独唱部分があるが、これをクドーがちょっと外した感じで唄い出した。文字にするのは非常に難しいが・・・
クドー「けっけれっっけれっけぇ〜♪」(さぁ、皆さんご一緒に〜!の手振り)
多くのファンはこの曲を理解していたが、わざとわからないフリ。さらに繰り返すクドー。半ば自棄気味に絶叫クドー。そこへマーシー登場。で、ダメだし(一同爆笑)

■追記
今回はじめて楽屋にお邪魔させていただいた。あまりの緊張で何を喋ったか実はあまり覚えていないのだけれど、真っ直ぐに(いつもの!)優しい眼差しを向け僕の前後不覚意味不明な話を聞いてくださったシャラさんをはじめ、メンバー、スタッフの皆さんにはここで改めてお礼を述べたいと思います。本当にありがとうございました。今後とも(風貌に似つかわしくない名ですみません、の→)はにいべいべえをHPともども、どうぞ宜しくお願いいたします。

Posted: Mon - July 30, 2001 at 09:35 PM      
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