いつからだろう、僕の掲げた自信がすべて崩れ落ちたのは。 ゆるぎないものであったはずの僕しか持っていない僕の色彩。 壁は大きく、強く僕の前に立ちはだかる。 僕の青、キミたちの青、どうしてそんな顔をするの? 「色弱」 その言葉は僕の世界から色を無くさせた。幼い僕にその言葉の意味が すべて理解できていたかと問われればそうでもないが、多大なるショック だったことに変わりはない。その日から全ての色が腐って見えた。色を使う 事に対する恐怖、周りの好奇に満ちた目。イメージなんて信じられない。 信用などするものか。僕はいるかもわからぬ神を恨んだ。 時がたつにつれ絵を描くことより音楽に、ギターにのめり込んでいった。 仕方なしに立ってみたボーカルというポジション。ギタリストに憧れていた 僕からしたらやりたくないパートだった。あれほど嫌っていたのにいざ立って みると思っていたよりずっと自由で気持ちの良い世界だった。 僕が一言歌えば世界は何色にだってなれるのだ。 ハッとして起きあがるとそこはおなじみのレコーディングスタジオ。ソファで 寝ていたせいか背中が痛い。んあーとうだうだしていると足早にテッちゃんが 部屋へ入ってきた。レコーディングも終盤に差し掛かりあと少々歌入れをすれば 完了!というところまで来ていた。終わったら終わったでマスタリング等があるが レコーディングさえ終われば気が晴れる。あとひとふんばり。 「お、ハイド起きたか。歌入れすんで!」 「ふぁい。なんか今、昔の夢みたー」 「昔の?小さい頃とか?」 「そう。色弱って知ったときのこと」 「あー、、、でもなんでイマサラ」 「さぁ?なんでやろねー。イヤな感じはせんかったよ」 「ふぅん。話変わるけどさー、、、、」 歌っている最中は自分の感性、感情をすべて歌に持って行かれるからわからなかった けど、きっとこのメンバーとこのバンドで歌っていられるうれしさが過去を肯定しようとして 思い出させたんだ。ソロもいいけどこうしてバンドをやってることに至上の幸せを感じる。 色彩は自分で与えてあげればいい。この歌のひとつひとつに、愛を込めて。 |