風に揺れるカーテン、シミ一つ見あたらない壁、リノリウムの床。
私には白い記憶がつきまとう。あの人も、まっさらなヒトだった。



これは終わったことと同じだ。彼の顔に張りついた困惑を笑顔で消し取る。
大丈夫、これは私にとってのハジマリだから。あの人はやさしすぎる。
そのやさしさに甘え、すがっているのは私。

救われない、と嘆いたあの夜を恥じた。愚かな私は気づいていなかった。
あの人はずっと同じやさしさをくれていたのに。


ただ守ろうと思った。前を見ることに絶望した彼女を。運命は繰り返す。
泣くばかりのあのこを救ってあげたかったんだ。

小さなその手を繋いだら、なんでも叶う気がした。
サイレンを鳴らしてくれ。いつでもすぐそばに行くから。


サイレンは鳴らせない。救われないことなど解りきっている。
あの人の笑顔を求めてしまう私が、恐かった。


どこまでも続く青い空。
今日はマーブルサンデー。想いを描いて、
風に乗せて、あのこの元へ。届け!僕の存在証明。
オレンジのガーベラがかわいらしく咲いていた。あのこの華になればいい。
心まで晴れてくれないかなぁ。笑ってほしいんだ。


近づくハジマリの日。
忘れものがまだあって、伝えようと思った。
今しかないから、笑顔を忘れたくないから。あの人はいつだってやさしく笑う。
悲しい顔をさせたらダメだって思った。マーブルサンデー、私の心を言の葉に込めて。


May Fair。
彼の作るやさしくてキレイなうた。今の私にピッタリだね。うたおう、全てをかけて。

Will be king。
つたなくても伝えよう。出会えたことを誇りに思うよ。僕の声で君を守るから。


天使が羽ばたく日。
真っ白なドレスを身にまとう。Since19710526、この出会いと、その心、笑顔に感謝します。
ゆっくり、ゆっくり、空へと。舞うしずくはキラめく星。



薄日がカラダを包み込む。起きあがれば見慣れた風景といつもの大切な人たちの顔。
俺はトリップしていたようだ。雑誌の無垢な笑みが思い出させたのかも知れない。

まだ少女のような人だった。淡い笑顔に、救われた。


「たくろー、おなかすいたー」 20年来の友は子供のように言う。
「じゃあどっか食いにいくかー」 俺も年取ったな。
「あー!」目ェ輝かせちゃってどうしたの。


「たくろー!ハッピーバースデー!!」


時刻は2004年5月26日0:00。何気ないヒトコトがすごく嬉しかった。
全てを抱きしめていこう。喜びも悲しみも、すべて。
そして朽ちるときには花束を、永遠を捧げよう。