< 無 難 禅 師 語 録 >
おのが身にばかさるるをば知らずして きつねたぬきをおそれぬるかな
本来の悟りのしるしあらわれて 身さえ残らず消えはてにけり
主ありて見聞覚知する人は いきちくしょうと是をいうなり
主なくて見聞覚知する人は いき仏とは是をいうなり
身の業のつきはてぬれば何もなし かりに仏というばかりなり
身の咎をおのが心の知るときは 仏とならんしるべなりけり
生きながら仏となれるしるしには 坐禅の床に居らぬなりけり
生きながら畜生となるしるしには 坐禅の床に居られざりけり
ころせころせ我身をころせころしはてて 何もなき時人の師となれ
世の中の人はしらねど罪あらば わが身をせむる我がこころかな
千代ふべき心をおもひすてぬべし 月日はいつもおなじ事なり
道という言葉にまよふ事なかれ 朝夕おのがなすわざとしれ
さとらねば仏の縁はきるるなり 一切経をよみつくすとも
色このむ心にかえて思えだに 見る物は誰ぞ聞く物は誰ぞ
何もなき心を常にまもる人は 身のわざわいは消えはつるなり
心にはたしかに入りし法の道を いくたびけがすわが身なるらん
いきながら死人となりてなりはてて おもひのままにするわざぞよき
ひたすらに身は死にはてていき残る ものをほとけと名はつけにけり
慈悲はみな菩薩のなせるわざなれば 身のわざわひのいかであるべき
心よりほかに入るべき山もなし しらぬ所をかくれがにして
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