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自傷少女の歌
ある少女からメールが届いた。
正確には、その少女の父親から。
娘のパソコンに遺されたアドレスから、
今、こうしてお便りしています。
貴方の曲を、よく聴いていたようです。
娘は、自ら命を絶ちました。
貴方は娘のことを知らないでしょう。
せめて、知っておいて欲しいのです。
絵を描くのが好きな、静かな子でした。
娘が、繰り返し聴いていた曲です。
もしも、私が似非だとしても、
流れ出る血の色は同じ 赤。
たとえ、それすらも似非だとしても、
この痛みだけは本当なの...助けて!
そのメールの真偽の程、
確める手段は無い。
…その勇気も。
ただ、
WEBの向う側の生身の人間を初めて現実として感じた。
それは恐怖であり、
同時に畏怖であり、
存在するに値する動機の源泉として、
今に至る。
生まれてから一度たりと 誰からも愛されないまま
他人の視線ばかり伺って生きてきたの
思い出は傷つかない 初めからそんなモノは無い
誰も私の事など要らないと解っていた
肉ってホントは白いんだ。
脂肪かもしれないけど。
切ってから血が出るまで、
少し、時間があるんだ。
ダメな自分に今すぐ 重い罰を与えなくては
冷たく光るナイフ 握りしめて震えたけど
眼を閉じてすっと引いたのは 一筋の赤い傷跡
今は何も躊躇わずにできる 何度だって
一度は黒歴史として葬った曲。
自ら、信用していなかった曲。
それが、この曲、
「自傷少女の歌」。
それらしい言葉を羅列して作った、
魂の入らない曲の一つ。
似非 なのは、自分の方だ。
それでも、
被造物が創造主の意に反して、
一人で 歩きはじめて、
不出来な創造主に刃を向けるのだ。
「私だって、存在したんだ」と。
その動機も尽きかけた頃、
初音ミクという福音を得て、
再び、三度、
この曲を作り直す。
こうして、
作品内にて自作を語るという、
作り手として恥ずべき、
禁忌を犯す。
否定に否定を重ねた その果てに、
何か、残るものがあるなら、
それこそが、
彼女が見出したものなのだろう。
きっと生まれてきたことが 何かのマチガイだから
自分の手で正すの ここから立ち去らなくちゃ
これが最後になるの いつの日か救われますように
祈るように刻んでいた 「私は生きていた」と。
狂気を抱いたままで
在り続けるしか ない
役立たずの命が流れ出しても 何一つ
変わらず世界は回り続ける
硬いベッドの上で目を醒まして 辺りを 見回す
カラダよりココロが壊れていた
英題 Songs for her self-destruction
命名 ATARAXIA
DNA shinoda,Jane_Na_Doe
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