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ゲロン


nil:ゲロン




01.ゲロン
02.isolation
03.I'm OK
04.ワカンタンカ


発売前からライヴで既に披露されていた曲たちが詰まったミニアルバム。バンドは解散するまでは常に道の途中ではあるが、初期メンバーの音源と比べても重圧感がしっかりし、さらには楽曲としても「自由」をより手に入れたのではないかと思わせてくれる。
タイトルのゲロンやワカンタンカなど、独特の「哲節」もイカしてる。歌詞も曲も非常に完成度が高い。ミニアルバムだけど、これがもしフルアルバムなら相当な出来になったのではないか?
次作を楽しみにしてくれる名作集!
(2007/9/26)




ザ・ペインキラー


nil:ザ・ペインキラー


09.tonight,revolution
10.BORN SPECIAL
11.CANDY
12.遅れてきた男
13.Fighting Friday Night
14.ギタートスカート
15.Kill Your Pain


01.manwoman
02.my name is misery
03.TIVOLI
04.aria
05.Beautiful You
06.TEARS FOR KILLERS
07.room
08.HOTEL


先行シングルがぎっしり詰まっているとはいえ、15曲というボリュームは超満足!
初期メンバー〜マサル+フルトンの加入で、勢いで作ったとも感じ取れる名作「スケルツオ」「アガペー」があった。
が、飽き性のフルトン即脱退。これによりサポート〜正式参加したDr.KAZAMAの加入。ようやくガッシリ3人が肩を組んで、そして「一気にいくぞ!」という気合が感じられる。
必要な音が呼び合いこの形になったというような言葉が凄く似合う。物凄くあるべきものがソコにあり、不要なものは何もない。ソリッドかつ柔軟な名作である!

02.my name is miseryは印象的な裏打ちのリズムで爽快に流れる。高野哲名義で先行して発表されていた05.BeautifulYouが勢いを増して良いアレンジがされている!
11CANDYはnilらしいポップ感が詰められていて、12〜15まではアルバムを聞き終えるまでの流れとしては最高に良い。やはりアルバムの中でも埋もれない名曲14.ギタートスカートの流れを汲み、8分にも及ぶラストナンバー15.KILL YOUR PAIN。nilが一番得意とするような”世界”が見えるバラードで締めくくられている。
現在のnilの名刺代わりになっている普通のアルバムにしてベストアルバムでもあると言える名作!
(2007/9/26)




12 INPLOSION


nil:12 INPLOSION


07.garden
08.The pst inplosion
09.It’s a true is a true
10.烏の目
11.サーカス
12.Birthday


01.INPLOSION TEENAGE GIRL
02.It’s a blue is a true
03.Hate Beat!
04.金星
05.夜の色
06.(愛は)ミラーボール


雄大なヴルーヴをもった雰囲気の曲から始まる。アルバムタイトルと密接な関係を持つ「INPLOSION TEENAGE GIRL」
この軽快なドラムに乗って自由に歌いまわる"フリーマン"高野哲の歌声はすごく魅力的。哲さんらしさが十二分に出ている楽曲だ。
勢いに乗って3曲目まで。「HATE BEAT」はTV番組ヘキサゴンのテーマ・ジングルとして使用されているので聞いたことがある人が多いはず。
そしてまったりする曲が続く。
「金星」は歌詞の世界観も手伝い、まるで映画のラストシーンか、ゆっくりした旅立ちに使われるようなイメージ。 軽く刻まれるギターフレーズが軽い足取りをイメージさせ、笑顔にしてくれる。 一転、「夜の色」ではその軽い歩みを緩め、足元を見ながら歩いていく。マイナーコード中心の雨の空。グレーの世界。 アルバム中一番「色」としてはネガティヴさを感じさせる。 枯れた音のギターと憂いのある艶のある声がミスマッチでなぜかそれが心地よい。 同じメロディ、単調な繰り返しなのに世界観のある曲・歌の力でどんどん盛り上がりを見せるあたりは地味ながら名曲だといえる。 続いて雰囲気は底辺から盛り上がりを見せる。「(愛は)ミラーボール」は密室の中で孤独な強がりを見せている前半、そしてその世界が一気に広がってワールドピースな雰囲気まで与えてくれる。不思議だ。狭→広の雰囲気の転換を同じ曲の中でこれほど見事にやってのけるとは。さすがだ。

アルバム中一番"風"を感じるのは「Garden」。綺麗ごとだけじゃないけど、生きてくうえでの強さを感じさせてくれる。曲の雰囲気だけはアルバム中一番好きだ。

「烏の目」はライヴでも定評の高いロックナンバー。
コーラスとメインメロディが複雑に絡み合って、単純な構成のはずなのに飽きも来ないし、違和感もない。どこがそうなのかはぜひぜひ聞いてみて欲しい。
そもそも哲さんの作る曲はコード進行が微妙だったりする。普通は細かい区切りで3コードを中心とした展開でA-B-C(サビ)と続く事になるのに、そういう普通の定義を覆してくれる。個人的にはこの"微妙"はnilについては"絶妙"と読んでいる。他にもこの微妙な絶妙はZIGZOのFLOWやひまわりでも感じた。
終盤にさしかかってきて、最初に聞いたときはそのコミカルな曲の雰囲気に「え?」と思ったが、歌詞の世界とその背景にあるもの、そして極の展開を考えると切なくて、ポジティブで、苦悩があって、希望と絶望があって、光があって暗闇もあって。この曲の世界観はすげえ。ZIGZOのアジアンロックを思い出したが、それ以上に広がりを持っている。哲さんの人間性の広がりは止まっていないことを証明する名曲だ。
ラストは「BirthDay」。「n.i.l」「BabyBaby」等に続く大きな大きな名曲だ。この曲は「さよならダヴィンチ」から続くテーマ(?)のひとつの答えになっていると思う。1曲の中に短編ドラマ。アルバム1枚で映画。nilというバンドのDiscographyでひとつの人生を感じる気がする。




DOWN to DAWN EP


nil:DOWN to DAWN EP




01. 雨と無知
02. DOWN
03. 君のRIOT
04. PENGUIN JIVE


レッチリのByTheWayのような和音のストロークから入る「雨と無知」。トンネルの中を通り、オレンジの光だけが視界にあり、トンネルを抜けるとそこは激しい雨。日本人にしか出せないどこか独特の静と動がハジける。
ミニアルバムというかマキシシングルというか。4曲いりで少し物足りなさを感じるのだが、それでもnilらしさを4等分したバランスのいい出来になっている。
泣きのメロディ、雨という重い言葉があるけど、クリアな情景が浮かぶ「雨と無知」
nilのネガティブでダークな部分を前面に押し出し、その中から希望の夜明けの光を感じれる「DAWN」
スタンダードなロックンロールナンバー「君のRIOT」
高野哲というミュージシャンのルーツの一つでもある、ファンク・ミュージックが活かされ、「Yellow」「アジアンロック」にも通じるグルーヴをたたき出す「PenguineJive」という4曲。
よく言うと、nilの4つの大きな要素が入っているが、悪く言うとまとまりがない作品。
いい作品ではあるが、ミニアルバム3枚、アルバム1枚リリースされている現在では、nilを知らない人が買う順番としては一番最後にしたほうがいいかもしれない。




さよならダヴィンチ


nil:さよならダヴィンチ




1.さよならダヴィンチ
2.サマタイムクルーズ
3.ロマン・スカー
4.The end is near! The end is near!
5.モナリザ
6.n.i.l.


nilのセカンドミニアルバム。
ファーストの(nil)も少しおとなしめではあったが、それでもアレが動で、今作が「静」に当たる作品。
2枚同時リリース、または短いスパンで発売になるのはコンセプト的なものが多いが、その中でも群を抜いてバランスが良い。
しかし逆に言うと、(nil)がないと、少し寂しい気もする。購入する場合はぜひセットで購入してほしい。

冬の夜の空のような「さよならダヴィンチ」に始まり、ひんやりした空気は感じるものの、どこか安心できる「サマタイム・クルーズ」
研ぎ澄まされた紫の視界が広がる「モナリザ」、雄大で心が落ち着く曇った夕焼けのような「n.i.l」。
どれも少し暗く、少し冷たい空気がある曲ばかり。
しかし聴き終わると、冬の室内で暖炉に向かってのんびり幸せをかみ締めてるような気分になったりする。これは何だろう。nilのもつ懐の深さなのかもしれない。

バンド名をタイトルにした「n.i.l」は本当にいい曲だ。普段ライヴでもやらないのは何でだろ?たくさん聞きたいのにな。
この曲はすごいやさしくて暖かくて…これが上で書いた「暖炉」の温かみなんだろうか。
「家」「家族」「恋人」「愛情」「優しさ」「笑顔」「仲良く」「温もり」
吐く息が白くなるときに大事な人。恋人でも家族でも大事であれば誰でもいい。
その相手と一緒に歩いて。恋人なら手をつないで。少し寒くなった空気に身を震わせながら、でも会話を大事にして、ゆっくりと暖かい家へ帰る。BobDylanのFreewheelin'の絵を思い出す。

哲さんのギターはシャープでクリアになってきてて、クランチ系の音が増え、あまりディストーションサウンドは聴けなくなった。
それがこの世界観をかもしだしているスパイスになってはいる。が、キンキンしているともいえる。
そんな中、樫本のベースはゆったりとまったりと音空間の間を泳ぎ、サウンドの要を担っている。
(nil)では「FM」等に代表されるようなブリブリした腰にクるベースが多かったが、地味で、だけどでしゃばっていてギター・歌・ドラムをうまいことコントロールしている。前に出ない職人的なアプローチは作曲者・リズム担当者・雰囲気を大事にしたいバンドマンは必聴だ。
何しろすべての曲においてそれぞれの「情景」が目に浮かぶ。

nilの中では一番静か。それなのにライヴでやり続けられている曲が多いという事は、nilの中でキーになっている曲が多いという事だろう。




nil from hell


nil:nil from hell


04, PLACEBO
05, イエロー
06, BabyBaby


01, FM
02, バンビ
03, ランランラン


高野哲がZIGZO解散後に再起動させたnilの記念すべき初の音源。
ここには自由な60年代の自由なロックがあふれている気がする。このバンドはある意味60年代後半のアメリカに居て欲しかったかもしれない。そう思う作品だ。

1曲目。そもそも哲がこのバンドを作るきっかけとなったらしい曲。ほぼインストで、若干のシャウトがある。FM。ファッションモンスター。哲が「唄うベース」と絶賛していた樫本の歌うベースがカッコいい。堅い音でぐいぐい哲を追い上げる。土台を支える茂呂のドラムもなかなか。

ここから始まるnil。いいスタートだと思う。

しょっぱなのギターが格好いい「バンビ」。このミニアルバムの中で一番素直なロックチューンだと思う。Aメロのバックにある茂呂のハイハットの音が凄くきれいに聞こえてきてこのバンドは3つ+唄しかバンドだが、全てがしっかり主張してバランスがいい事を照明している。
哲の「まんま」なシャウトも健在でファンを安心させてくれる。
それにしてもこれほどソロらしきソロがないのに成り立つ曲というのはカッコいいと思う。ソロを否定しているわけではないが、シンプルイズベスト。この音はそう語っている。
フリージャムセッションのようなエンディングのリフレイン前後に「決まり事は何もない」と教えられる。

続くランランランは一度聴くとなかなか印象に残る。エイトビートニ始まったのに、途中サビで突然3連になったりする。軽く走っている時にゆっくり地面に足を下ろし歩き出す。そしてまた軽く走り出す。そんな感じがする。ギターリフに若干のヴィヴラートをかけているあたりさすがだ。
ここまで聴くとわかると思うが、樫本のベースは露骨に目立つことは最初だけ。後はしっかりボトムを支え、その上で主張してきて、茂呂のドラムもライドとハイハットの音が鮮やかで曲のカラーをきれいに仕上げている。
「バンビ」とは少し違ったスタンダードナンバー「PLACEBO」
これもギターソロ同様の意味だが、メロディパターンが少ない。だけどしっかり説得力がある。高野哲の何がスゴイかっていうと演奏力とかそんなんじゃない。素晴らしい曲が書けることで、ニヤリとしてしまう歌詞。そしてふざけてるような感じでありつつもストレートな唄。これにつきる。
ファンキー高野ファンには「まってました」といわんばかりのナンバー「イエロー」イントロからしてたまらない。唄が入るとワウがうねり軽めのギターサウンドが風を呼び、2度目のAメロではワウがさらに気持ち悪いぐらいに気持ちがいい。
掛け声とともにノリが少し変わる。曲が笑っている。こんな間奏も面白すぎる。歌詞の一番最後のワンフレーズはジャンキーの本音とも言えるのではないだろうか。こんなロックは辞めたくない、とも聞こえる。人を小馬鹿にしたようなギターサウンドとコーラスがなかなかの聴き所だ。
最後は「BabyBaby」。音で遊びつづけたnilがちょっと落ち着く。ミドルナンバーで優しい、そして大きな唄だと思う。これはもう目を閉じて聴くのが最高だ。大きな思いで。大事なものが見えてくる名曲だと思う。

泣かせてくれる。高野哲。あんたは最高にカッコいい。最後にそう思える。
歌詞に関しては本当に歌詞カードを見つめつつ、高野哲の言葉を聞きつつ見つつ音にゆれてくれ。その目で高野哲、そしてnilのメッセージを感じて欲しい。