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SAINT-聖者-


Valentine D.C.:SAINT-聖者-




01, Sick of '90s
02, R.I.P
03, BLACK+BLUE
04, BRAND-NEW NIGHT
05, DAYS
06, N.J


世紀末に生まれたパンクチューン、SickOf'90sで始まるこのアルバムは、VDCの基盤を作った一枚だ。
アメリカンハードロックをベースに自分達のカラーを出している作品。

苦しげで切なげで哀しげなKen-ichiの歌声が聞き終わった後も耳に残る。

この作品で特筆すべき部分はギターとベースの自己主張である。
インディーズバンドにありがちな「自分の音で曲を埋めたい」とい気持ちがVDCにもあったのか?と思えるぐらい二人ともこだわりのフレーズを詰め込んでいる。
それは悪いことじゃなくて、ガムシャラ感を引き立てて、密度、濃度の濃い作品に仕上がった要因の一つだ。
パワフルながら未完成という言葉が似合うKen-ichiのヴォーカルだが、荒さは感じつつも歌の巧さはこの時から際立っていた。04,BRAND-NEW NIGHT、06,DAYSでの感情表現、ハードな曲でのバックに負けない強さ。
今聞くとなるとやはり最近のほうがいいなぁという感想になってしまうが、楽曲の質の良さは変わらず。ライヴでたまに聞くとそのよさを実感した。
R.I.Pのイントロのギターとドラムのツーバス音は圧巻で、気持ちのいいハードロックサウンドを叩きつけてくる。 CDでも凄いが、ライヴだと感覚がどこかにイッてしまいそうな轟音だった。

曲の良し悪し、好みというのをおいてもBRAND-NEW NIGHTのギターと歌は凄くいい情景を運んでくれる。歌詞の力も大きいけれども、夜のテールランプが美しい高速を、夜のオフィス街を横に見ながら走っていく、という景色が浮かぶ。
サウンドはインディーズにしたらかなりレベル高かったが、後期の、さらに凄くなったVDCがこの作品をセルフカヴァーしたら絶対おもろくなったはず。
それはもうかなわない願いだけど、想像したら楽しくなる。
6曲という中に「これでもか」という気合を感じる




パロディ


Valentine D.C.:パロディ


07, UNDER MY WILL
08, PUSH IT AWAY
09, ペンキ爆弾
10, SWEET PAIN OF LOVE
11, DAYS


01, KISSの真最中
02, Monochrome Sexuality
03, HAVE A GOOD DREAM
04, YOU WILL WALK
05, WINDS〜風にふかれ
06, SO GIRL SINGS


記念すべきデビュー作で、俺がはじめて手にとったアルバムでもある。
キャッチコピーは「参ったか!これがValentineD.C.だ」 まままま参ったか!?当時はラルクや黒夢の影響もあり、いわゆるヴィジュアル界では
美しいというのが大事だった中、(ルックスはみんなきれいだったけど)コピーにこういうありふれた日常的(?)な感じの言葉をいれてるのはちょっとした衝撃だった。

ナマエはよく聞いていたということもあり、このコピーで購入。そしてD.C.MANIAの道を歩みだす。

オープニングはコーラスからはいり、ムーディーなベースが聞こえてくる。
ディレイ等空間系のエフェクトを駆使して織り成す「KISSの真最中」、そして続く デビューシングルとなった「MonochromeSexuality」と、この2曲はまるで
ドラマを見てるかのような気分になってしまう。それほど曲の持ってる雰囲気がすごくいい。
ギターソロも「ギタリストの腕の見せ場」というより、曲に起承転結をつけるソロで、この人は多分曲が求めてなかったとしたらソロ弾かないんじゃないか?と思った。
当時速弾きがもてはやされてた中で、確実なテクをもちつつ必要がないから弾かないというスタイルは斬新だった。

04.YOU WILL WALKと06.SO GIRL SINGSは最初聞き分けつかなかったけど、両方ともメロディが凄くキレイな曲。
きらきら輝く前向きな気持ちが伝わってくる。バックがだいぶロックしてるけど、シングルになっても全然おかしくない。 俺の中では、特にYOU WILL WALKは隠れた名曲だと思っている。

「なんじゃこれ」とまで思ってしまったハードな07.UNDER MY WILLはイントロからものすごいギターが登場。
ライヴではイントロにコーラスいれたりしていたがオリジナルはこれ。そうとうマニアックである。
「Naoyaのギターはマニアック」と業界、またはバンド内(Junさん)に言われるだけの事はあると頷ける。
アルバム通してこんな曲がはいってるのも面白い。これがいいメリハリ、またはアルバムの起承転結の中で「転」になっている。

08.PUSH IT AWAYは曲が始まる前に小さい音で隠しトラック?面白いギターが鳴っている。これも巧くないとできないプレイで
カッティングやスケールの勉強になるフレーズ。
曲はライヴで盛り上がらないとおかしいというぐらいのタテノリ+ベースのスラップがいい感じ。これはぜひ大音量で聞いてもらいたい。
そしてライヴで重要なポイントとなった「PUSH PUSH」の掛け合い。 ファンとメンバーを繋いだ大事な大事な曲だ。

衝撃の問題作。09.ペンキ爆弾。最初タイトルきいたとき「は?」って思ってしまった。が、これがいい感じ。
モンキーダンスが似合うヴルーヴィーなリズムで能天気な歌。しかし歌詞はパンクしててすっごい好きになった。
ライヴで楽しそうに右へ左へ移動するKen-ichiが見ていて楽しかった。

一転してトレンディドラマのオープニングとかに使われそうな爽やかに疾走するチューン、10.SWEET PAIN OF LOVE
とにかくギターの音がきれいで、楽器隊が爽やかな風を送ってくれる。それに乗るKen-ichiの歌声もすばらしい伸びを見せる。

起承転結、バラエティに富んだ一枚で、当時はこれがデビュー作だとは思えないぐらいだった。




炎と宝石


Valentine D.C.:炎と宝石


07, STARS
08, ドライフラワー
09, 炎と宝石
10, LOVE MAKES ME BLIND
11, 紙飛行機


01, DANCEマテリアル
02, パントマイムは踊れない
03, しらけた楽園
04, クロックワークの少年
05, BRAIN GAME
06, Risk Your Life?Risk Your Pleasure?


前作がよかった為に過度の期待をもって手に取った作品だけど、最初は一瞬ひいてしまった。
濃い。とても濃い一枚だ。
聴きこめば聴くほど味がでて、捨て曲がない名作。名盤だ。これは問題作だ。ロック史上に残ってもおかしくない位の作品を20代半ばの ロックバンドが作ってしまった。しかもデビュー後2作品目で。
これは購入後、しばらくして思ったことだ。ここでValentienD.C.は最高だと確信して、俺の中のNo.1に輝くことになる。

ノイズから始まり印象的なベースで幕を開ける。口笛のような音が均衡を崩してメインリフが入り、メロディを無視するような歌が吼える。
居てもたってもいられないような衝動に駆られてしまう。
01.DANCEマテリアル、02.パントマイムは踊れない、03.しらけた楽園と、3曲が立て続けに叩きつけられる。
聴く者を置いていくかのようなスピード感がテクニックなのか若さなのか解らないがとにかく凄い。
あいかわらず弦楽器は自己主張しまくりだが、ここで気付くのがTakeshiの深みのあるビート。 どれだけ上であばれられてても自分のペースを崩さず、オーディエンスの体を上下させるリズムを出している。TakeshiのDrはどちらかというと「普通のドラマー」という感じではあるが、よく聞くとスゴクて、絶対にTakeshiにしか出せないビート、グルーヴってのを持ってる人。
手数や速さが凄い人も凄いんだけど、俺の中では「自分らしい」タイコが叩ける人が本当に凄いと思う。

曲のほうは04.クロックワークの少年で一転静かな雰囲気に。
いい曲なんだけど、Ken-ichiの歌詞は胸に痛い。無機質なコンクリートの建物と朝日。そういう風景が浮かんできた。ライヴではイントロが全然変わってたりして、ものすごい可能性を秘めた曲だ。

シングル作品とは思えない濃厚な05.BRAIN GAME。曲の間に爆発音があるってなんですか?
SEがふんだんに盛り込まれていて相当マニアックな作品である。装飾する音がたくさんあるせいか、ルートとなるJunのベースは必聴である。
サビの8ビートは心を、体を音が引っ張っていく。そのぐらいセンスのあるビートを刻んでいて、このサビは大好きだ。

Takeshi作曲の2曲が続く。07.STARSはなんとなくイメージになくて最初聞いてバラードだったからびっくりした。
情景がうかぶ。キレイな星空の下でまっすぐに空へ向かって立っているKen-ichi。少しだけ風が吹いている。そんな情景。一転、08.ドライフラワーでは乾いた風が荒れた街(北斗の拳のような…)を吹き抜けるイメージ。
アレンジの段階でNaoya、Jun、そしてKen-ichiの色が入るものの、Takeshiの曲は情景や色がすごく浮かびやすくていい感じだ。

08.ドライフラワーで加速して、09.炎と宝石へ。アルバムの看板でもあるこの曲は同期を沢山取り入れて面白い仕上がりになっている。無機質-そんなサウンドの中に熱い声が混じる。それこそ熱い炎と青い宝石。トゲトゲしく光る宝石の温度は?聴いて確かめてください。

10.LOVE MAKES ME BLINDは前作パロディ収録の「DAYS」とは少しイメージが違う雰囲気のバラードで、Junのフレットレスベースが優しさをかもし出している。
本当はこの曲で終わってよかったんだろうけど、俺のなかで「アンコール」的な捕らえ方をしているのがラストチューン11.紙飛行機だ。Ken-ichiの経験からくる(?)切ないながらも前向きな、本当に男の気持ちをリアルに表現している。泣ける。最後のシャウトは本当に身の毛もよだつような心の叫び。
俺の人生に影響を与えた一曲。

VDCの歴史の中でもこの作品は少し異色ではある。違う意味合いになるかもしれないが名盤である。




BRAND V.D.C.


Valentine D.C.:BRAND V.D.C.




01, HUSH DOLL
02, 下弦の月
03, 上を向いてた
04, とんがりたい
05, PIANO
06, 追い風
07, EASY ANGEL


バレンタインデイ・リリース作品。
ミニアルバムながら「VDCの核を刻む作品」というだけあって濃度の濃い作品に仕上がっている。 前作、前々作にプロデューサーとして関っていた(当時)DER ZIBETのHALとHIKARIは不参加。つまりセルフプロデュースだ。

再生ボタンを押すとTakeshiの勢いのあるロールから始まる。Ken-ichiの声をフルに生かしたパンクチューン01.HUSH DOLL。
各メンバーの音も聴きどころだが、この曲はKen-ichiの声が最大の魅力でしょう。王道の一つ。この曲は大好き。

続いてアルペジオから始まり叩きつけるようなイントロにつながる02.下弦の月。Ken-ichi作品で、「紙飛行機2のような感じ。ただしラヴソングじゃない」とはインタビューでの本人の弁。
曲は勢いがあってビート感が強いんだけど、どっかしら紅い、静かではないが、穏やかな雰囲気をもっている。(それが悪いことじゃなくて。)雰囲気のいい曲だ。

Naoyaの半生をKen-ichiが描いた03.上を向いてた。最初タイトルを見た時なんじゃこれと思ったけど、内容はすごく暖かくて、バンドをやってて、志すものがあれば本当に共感できる。いい曲だ。いい歌詞だ。以外にもライヴはアカペラから始まったりするバージョンもあったり、何故かすっごく盛り上がるぐらい迫力ある演奏も聞かせてくれる時もあった。 「生きている」曲である。
続く04.とんがりたいも内容は同じようなものなのかもしれない。すこしおどけながら「負けない」という意思が感じられる。ライヴでシャドーしながら前後に動くKen-ichiはかわいかった。いきなりこの曲から始まるライヴというのもあって、それだけですごくハッピーな流れが作られる。

05.PIANOはアイデアが活きている曲。PCの画像処理のモーフィングのような効果を曲でやったらどうなるか?というチャレンジ精神から来たアレンジで、音のクリア感、気持ちの高揚感がサビ前でグッと表現されている。内容も切ないが男として共感できる。

06.追い風は最後の最後まで名曲。ベースらしくないベースが当時は新鮮で、Naoyaの作る「風」サウンドもすごく凝っている。折れたスティックでギターを弾いたり、モニタやアンプの位置を考えたり、録音の仕方を普通じゃない撮り方でやってみたりと実験的要素がふんだんに盛り込まれている。CDは凄くてもまだ解るが、それをライヴで巧く表現するNaoyaに拍手。
ライヴの時に思うすばらしさ、それはサビ前のKen-ichiの声の伸びである。
'99年名古屋センチュリーホールで聞いた追い風はホールの大きさすら狭いと感じさせるぐらい遠く遠くまで風は心を運んでくれる。そんな気がした。毎回毎回サビ前、特に最後の所ではすばらしい声に酔える。

ラストはバラードで締める。07.EASY ANGEL。気楽な天使。わがままな、それでも自分にとっての天使に対する気持ちの苦しさと優しさが歌詞の節々から感じられて胸が締め付けられる。本当にいい歌詞だ。
エンディングでのNaoyaのソロとKen-ichiの叫びが絡み合いすごく気持ちが高揚してくる。バラードとは思えない気持ちの盛り上がり。こんなのがライヴで聴くと泣きそうになる。
Ken-ichiの強い目を見ながら、心の底から歌う唄。静かなステージから大きな波がくる。
ハジケて終わるほうが好きなんだけど、これだけいい曲がくると文句もない。

たった7曲だが、本当にメンバーの自信どおり、「VDCの核」がぎっしりと詰められた一枚である。




All is Vanity


Valentine D.C.:All is Vanity


07, 初恋
08, NEWS
09, LOVE HURTS
10, ガラスの頃
11, オアシス
12, 鎮魂歌(レクイエム)


01, パラシュートが必要だ
02, カセットケース
03, HARD LUCK MAN
04, Hear This Booing
05, 野良犬
06, 最後のShake Hand


業界内外ですごく評価の高いアルバム。・・・ながらしばらくは満足できなかった。
サウンド、外見共に今までの派手さがなく、ナチュラルになってきた。一番好きだった轟音ギターがクランチトーンがメインになり、物足りなさを感じたのは事実。
しかしVDCファンを続け、後に「いいアルバム」って言えるという理由は「楽曲のよさ」だろう。

クリーンなギターカッティングから歌がのり、激しいドラムとヴルーヴィーなベース、ギターはファズ系の音に変身する。そんなオープニングを飾るのは01.パラシュートが必要だ。メンバー三人が体を落とし、上下にうねるリズムを出してる中、Ken-ichiは淡々と歌いつづける。そしてサビにくると遠くまで目指すような伸びのある歌声をきかせてくれる。後のライヴヴァージョンは、間奏で一瞬だけブレイクはいったりしていた。その一瞬の空白がものすごくでかいように思う。この曲の持ってる緊張感というのはそれだけ凄いと思う。
途中でピピピというSEが入る。インタビューでNaoyaが「何の音だと思う?」と問い掛けてきていたが、結局答えはわからないまま。誰か知ってる人がいたら教えてください。

02.カセットケースは一番?オーディエンスとメンバーの間を繋いだといっても過言ではない曲。メンバーの強い意志が感じられる。間奏のベースフレーズ以外はわりと普通のロックチューンなので、誰もがあっさり聞けると思う。All is Vanityツアーでは、各メンバーが各会場でカセットケースを客席に投げていた。これにはメンバーが影響を受けた楽曲をいれているらしい。こんな演出の発想も面白かった。

03.HARD LUCK MANと、04.HearThisBooingはややダサめのカッチョイイロッケンロールだ。
05.野良犬は俺の中では新しいVDCの形の一つ。アコースティックギターとKen-ichiのハープがフィーチャーされていて、ストリートでもやれるような感じがする。素直に通じる気持ちを目指して作った形なのかなぁ?と思った。誰に対して言ってるのか、自分に対してたのか…歌詞もなかなかいい感じである。

06.最後のShakeHandと07.初恋は一転して軽快なロックチューンだ。両方ともシングルになってるだけのことはあり、メロディが凄くいい。しかしバックは「らしい」ロックしている。短いながらも初恋のギターソロはいい感じで好きだ。

08.NEWSは凄い内容である。ギターはヴァイオリン奏法を使ったり、ベースは太い弦が切れるんじゃないかと思えるほど激しく弾いたり、ドラムは取り付かれたようなフィルの連続である。曲のどこか一つだけを切っても絶対にバンドやってるやつはいい勉強になれると思うぐらいアイデアとテクニックが満載だ。
しかし、内容のほうはとてもヘヴィで、いいと思いつつ気持が辛くなるので、ライヴではあまり聞きたくないかもしれない。

09.LOVE HURTSも重い内容のラブソングだ。これはアメリカのナザレスというハードロックバンドのカヴァーだが、カヴァーとは思えないぐらいバンドにはまっている。インディーズ時代によくやっていたし、Ken-ichiが歌詞を日本語に書き換えたせいだろうか?'95年のD.C.MANIAでは、原曲のカヴァーを披露している。同じようなトーンながら、よく聞くとギターサウンドが本当に多彩なことに気付く。

10.ガラスの頃はきらきらした雨上がりの夜明け、というイメージがある。初めてライヴで聴いた時から好きだった。メロディだけだったらこの作品でNo1かも?と思える。青臭い、少年の笑顔が浮かんでくる。個人的にリフレインの最後の「きっと」「(突き刺さった)ままで」という掛け合いが大好きだ。

11.オアシス、12.鎮魂歌(レクイエム)と、スロウダウンでこの作品は終わりに向かう。オアシスはKen-ichiが事あるごとに「名曲、いい歌、いい歌詞」だということを連呼していた。本当にそうだと思う。心にじんわりくる。PVがまた素晴らしい出来で、暖かな雰囲気、それに包まれ演奏するメンバー、そして包み返す演奏。ライヴでもこんな雰囲気になる。大好きな一曲。
そしてKen-ichiが録音時にメンバーに「死んでくれ」といったらしいほど奥が深いラストナンバー鎮魂歌。この曲は歌を入れる際に、演奏のヴォリュームをOFFにして、Ken-ichi自身の歌唱力だけを頼りに歌ったらしい。この曲にかける意気込みが垣間見れる。
ここの歌詞で、「握りつづけた石」というのが、パラシュートが必要だの「手探りで掴んだ結晶石」につながっている。

All is Vanity−色即是空 そしてそこからつながるLOOP 輪廻転生。
ロックの真髄。




GENERATION


Valentine D.C.:GENERATION


07, ill
08, 二人の歌
09, MY GENERATION
10, ONE
11, Cradle


01, 空想世界
02, つぎはぎアンティックドール
03, カーテンコール
04, HAPPY BIRTHDAY
05, 奥歯を噛みしめろ
06, 扉


ロックの衝動がこもった名作。
俺の中ではBRAND V.D.C.の進化した形とも受け取っている。

01.空想世界は不思議なギターサウンドで幕を開ける。原曲Takeshi、アレンジNaoyaという少し変わった取り合わせ。ゆったりとしたミドルテンポから始まるのは意外な気がしたが、これがまたはまっているのである。
青い光を放っているようなギターの音色が耳に残る。Ken-ichiの声にかぶる弦楽器隊のコーラスは寒気するぐらいいい。

緊張感を持ったまま02.つぎはぎアンティックドールへ。これは「らしい!」と思ってしまう。イントロのTakeshiのフィルからNaoyaのカッコいいギターリフが乗り、Junのタイトなエイトビートが絡む。テンポダウンすることなくKen-ichiの歌が乗る。初めてライヴで聴いたときでも全然馴染みのある曲のようにすんなりノレた。
理屈とかじゃなくて。本当に「カッコいい」楽曲だ。

03.カーテンコールは先行シングルとして色々なメディアでかかっていた。そのせいもあり、この曲を聴いてファンになったという友人も多い。
パワーあるバラードだけど、ロックファンの心を掴むのは基礎だな。前作All is Vanityはナチュラルなギタートーンが大好きではなかったが、この曲ではすごくいい感じにメロディを弾いていたりバッキングを演奏していたりで、リズム隊もいい感じだけど、Naoyaのギターが素晴らしい。
ギターキッズはコピーしたらすごく参考になるシンプルな曲。
歌詞の面では、失恋してしまったが、それでも前向きに歩くために自分の中で決断をつけるという内容。やや切ないが、本当に共感できる。身近なテーマを形にしてる人は沢山いてるが、俺のバイブルになるのはKen-ichiの詩だ。

一転して04.HAPPY BIRTHDAYはパンクチューン。可愛らしいとも思える少年の、少年なりの愛情、嫉妬とかが不思議にも勢いのある曲にあっている。特筆するパートはないんだけど、3人の息が本当にあっていると思う。
05.奥歯を噛み締めろ、のイントロは「きたきたきたきた」と思ってしまう。なんてカッコいいんだ!これこそ「塊」だ!
間奏終了の時のドラムフレーズはメンバーでさえ「これ、あってるの?間違ってるの?」と思ってしまったぐらい面白いフィルが入っている。その直後のKen-ichiの「がーまーん」というフレーズは身震いしてしまう。

勢いが来たところでまたまた静かなトーンへ。06.扉、07.ill。
扉は日常の夕焼け、川原、川に浮かぶごみ。そういうのが浮かぶ。illはVDCの中で唯一うけいれられないヘヴィな内容の曲。NEWSのほうがかっこいい為か??

08.二人の歌はミドルテンポで聞いていて気持ちいい。ギターのフレーズが優しさを表しているようで、波乱を含むカップルも行き着く先が同じだったらそれでいい、と歌う。聴くと思わず笑顔になってしまう。某所のライヴではKen-ichiが辛い体験の後だということもあり、歌えないということも…
雑誌のインタビューを読むと、同じような経験もあるだけに辛いんだろうなぁと思った。それを隠さない不器用な男Ken-ichi、当人にとっちゃそれどころじゃないだろうけど、人間らしさに凄く惚れた。

09.はタイトルチューンともいえるハジケたナンバー。勢いの塊だ。ライヴではジャンプジャンプ!めっちゃくちゃ好きな一曲。

打ち込み(フルートのような音)とかを駆使した10.ONE Ken-ichiは「いつもどおりサビでガッていくんじゃなくておさえた」と言う。なるほど「おおおっ!」という迫力こそないものの、安心して聴ける曲。大事そうに見守るように歌うKen-ichiの姿がライヴでは本当にかっこよかった。ラストは3部のリズムを強調したようなバラード11.Cradle。Jun作曲にしては珍しく半音階とかも使っていて、新たな試みもみれる。間で一度とぎれて、再びはいる所では心をグッとつかれまれるような錯覚に陥ってしまう。

この作品では特筆する各パートの事がない。
それは一つの「塊」だから。バンドとしての作品が、ある意味で完成したように思う。
しかし、曲の並び方とか、バランスいいとは思うんだけど、どうも上行ったり下行ったりで…
バランスいいとは思うし、初心者にはGENERATIONをオススメしたいが、もう少しライヴを意識した曲順でもよかったのでは?と思う。←(文句ではない)




public address


Valentine D.C.:public address


06, 僕が僕のままでいたこと
07, ボーリング場を照らす夕陽
08, All about my life
09, atomosphere
10, 道に座って〜Go All The Way


01, SKYWALKER
02, ダストシュート
03, 春雷
04, I can see you
05, 世界を狙い撃て


前作から短いスパンでリリースされたアルバム。

01.SKYWALKERはひねくれたポップ感がある曲でどこもサビだという感じがする。舞い降りるようなNaoyaのギターアルペジオから始まり、加速していくリズム隊が加わる。いい曲だけど、もっとアレンジしたらもっといい曲になるのではないか?とも思った。
02.ダストシュート、これは王道。GENERATIONのつぎはぎアンティックドールや、HUSH DOLLに繋がるような楽曲だ。曲からイメージが湧くのはダストシュートよりもジェットコースター。下向きで旋回しつつ急スピードで降りていくジェットコースター。曲を聞いた瞬間にライヴでヘドバンの嵐になることは想像がついた。GENERATIONやAll is Vanityのようにスローだったりミドルで始まるのも悪くはないが、こんな始まり方のほうが「らしく」思える。

シングル曲の03.春雷は、Ken-ichi恋愛シリーズの一つ。やりきれない想い、複雑な状況、断てない関係。そんなのが混ざり合う男心。泣かせてくれる。
イントロ、間奏は7ビート?で中途半端な感じの小節だ。が、面白い。サビのところで吹き抜けるような風を止めるようなリズムはKen-ichi発案。これがあるおかげでせつなさというか、感情が一気に伝わってくるように思う。

アコースティックイヴェントで聴いた印象だと、それほどではなかったが、CDで聞くとザラついていて、焼け付く歯車、というイメージがある04.I can see you。少し聴いていて気持ちが痛い。
ベースが体を、気持ちを、フロアを上下に揺るがすほどの大きなヴルーヴをもった05.世界を狙い撃てはライヴでも定番となった。ベースもそうだけど、ドラムもなかなか熱くて「油断してられない」という気持ちにさせられる。「落とし前をつけてやれよ」「指をくわえてみてるなら歴史に残すのはただの戸籍だけ」というKen-ichiが常々思っていた(らしい)テーマが吐き出されている。夢を持ってる人や、立ち止まってしまった人は一度でもいいからこの曲を聴いて、意味をかみしめて欲しい。

Ken-ichiの自己確認、存在証明であるかのようなミドルテンポの06.僕が僕のままでいたこと、アットホームな雰囲気がある07.ボーリング場を照らす夕陽が続く。
その流れでこの作品で一番乾いてると思える曲08.All about my lifeへ。曲のテンポといい、内容といい、サウンドのカラーといい、何もかもが錆びたような茶色、もしくは黄色に見える。何かに焦ってるようにも思える。駆け抜けるような曲からは沢山の感情が流れ込んでくる。

バラードの09.atomosphereをはさんで、最後の曲はシングルにもなった10.道に座って。この曲は初夏の爽やかなリリースだったということもあるせいか、鮮やかな青空のイメージが強い。このアルバム通してKen-ichiのメッセージ性が強く前に押し出されているような気がするが、この曲はそれまでたまっていた各自の個性が強調されている。Ken-ichiはひさびさにハープを吹き、ベースはほぼルートを押さえていなくて動き回ってて、ギターもNaoyaお得意のカッティングが凄く活きている。ドラムもTakeshiらしい。「らしさ」が凄く出ているから、本当にいい曲だと思う。Ken-ichiの歌が、今まで吐き出した重いもの、痛いものをすべてさらっていって、「ハッ」と笑っているように見える。鮮やかな笑顔が。この曲をラストに持ってきた意味がそこにあるんだと思う。

このアルバムは痛い、辛いとざらつく感情が凄く大きく思える。しかし全てを乗り越えるラストチューンでバランスがよくなってると思う




YELL


Valentine D.C.:YELL


07, 見つめてほしい
08, Time For Ready To GO
09, 夕立
10, eternity
11, アリジゴク


01, 哀に
02, 夜光虫
03, Be a believer
04, DIVER
05, Yell Yeah !
06, JET BOY


結果的にラストアルバムとなってしまったYell。
リリース前にKen-ichiはしきりに「革命」という言葉を使っていた。残念ながらその革命は起こるところまで行かなかったようだ。しかし、聴いたものの中には確かなる革命が起こったはずだ。いいオンガク、いいロックを体感してきた。ここで大声でValentineD,C,に「ありがとう」を伝えたい。

再生ボタンを押すと、いきなりくるヘヴィなイントロ。01.哀に 。Ken-ichiがもってる哀しみと、そこから望むもの、乗り越えるものが凝縮された曲だ。インタビューでこの歌詞に至るまでの経緯を知ってただけに、一曲目に持ってくるのが本当に驚いた。…Ken−ichiさんの表現力はここまできたんだね。今まではアルバム一枚通して言っていた事が一曲に詰まっている。元々凄かったけど更に成長していた。嬉しい驚きを感じた。
大いなる夜の夜明け。朝の光の大事さを感じ、考えてしまう。

切ない内容ながらもシンセやホーンセクションを大幅に取り入れ、今までのVDCになかったカラーを放っている02.夜光虫。かつて炎と宝石で大胆な同期の導入をしていたものの、まったく異なったアレンジだ。Naoyaの音楽家としての大きな開花の一部となった曲じゃないかな?と思うほど素晴らしい出来だと思う。ライヴではギターのみで表現していた事も。そのときも物足りなさは感じなかった。ken-ichiのみならず、メンバーみんなが成長している。

03.Be a believerはシングルとなった曲で、歌詞の内容がまず凄くいい。前向きな、これ以上ないぐらい勇気付けてくれる応援歌だ。ノリもいいしライヴで聴いてもCDで聴いても心が弾む。裏ノリのギターとパワフルなビートをたたき出してるドラムが特にその要因か?(当然ベースもいいけど)
全部といってしまいそうだが、後世に残したいVDCの楽曲の一つだ。

04.DIVERは本当に深い曲。ギターが深海の荒さ、激しさを表してるように思う。深い、とにかく深い!Jun渾身のベースプレイも必聴だ。

そしてVDCの王道ともいえる雰囲気をもつ05.Yell YeahとJET BOYが続く。
GENERATIONの時に感じた「塊」がまたYellで感じる。ずばぬけてメロディがいいわけでもないのに、それでも凄く胸にくる。カッコいいナンバーだ。イントロのギターフレーズも「おおっ」と思わせてくれる。ビート感が強い曲。そして間髪いれずにJET BOY。
少し場違い?とも思えるTakeshiのタイコにギターがかぶり、歌がのる。「未完成」という雰囲気がした。しかし、サビ前で一気に加速し、怠惰な雰囲気など微塵もなく、とことん突っ走るような勢いのあるグルーヴが生まれる。Takeshiのタイコだ。物凄い存在感を放っている。ここにきて本当に衝撃を受けた。
オーラスの大合唱ではレコーディングでスタッフも巻き込みみんなで声を入れたそうだ。ここまで勢いを出すのは本当に凄い。
この二曲は俺のなかではセットになっていて、荒れた街、蒼い雰囲気の街に曇った空から一筋の光が差し込むような情景がある。

そしてVDCセンチメンタルサイドへ。07.見つめてほしい はサビのリフレインが後に強い印象を与える。ken-ichiの声がいい感じに映えている。
ワーミーを駆使してイントロを形作る08.TimeForReadyToGoは少しかわいげに歌い、ドラムがその背中を押す。間奏ではベースもギターもおのおの好きなことをやって空間を彩っているが、出来上がるものは一つの形。息を呑むような瞬間に新しい発見がある。
きらきらする音から、少年の淡い恋心を歌ったような09.夕立だが、ついつい聞いていて笑顔になってしまう。I JustFallInLoveというコーラスが凄くいい。みんないすに座り、丸くなって演奏しているような感じだ。

VDCにとって少し意外なバラード10.eternity、これも打ち込みを駆使してるのか?少し変わった音使いで、ken-ichiの声は「生」で映えると思っていたが、意外に無機質なもののうえでもバランスよく成り立っている。
本当はココで終わってよかったのかもしれない。しかし続く11.アリジゴクがこのアルバムを締めくくっている。
ラストにくるべき曲ではないのでは?という感じもしたが、聞き終わったあとは凄くすっきりした気分でいられた。
イントロからワウを多用し、コーラスも「VDCで、ちゅるっちゅーちゅー??」という意外なオープニングだが、意外にこのメンバーにはまっている。サビで歌っている残酷なマイライフ…結果的に胸に痛い内容になってしまったが、予感していたのかどうか…ただ、この曲をやったおかげでメンバーがだいぶ成長できたんじゃないかなぁと思う。洋楽的アプローチ、斬新な表現方法など。いい感じの楽曲だ。

結果的にラストアルバムとなってしまったが、良い作品です。音のクオリティ、彩度がすごくクリアで、楽曲もいい。声も艶があり聴いていて気持ちがいい。解散という結末は残念だが、最後に本当にいい作品を残してくれたValentineD.C.に感謝します。