核融合

 「いきなり物騒な...」と言われそうですが、核融合は次世代の期待のエネルギーとして注目されているもののひとつです。 海水などに含まれる重水素(D)や3重水素(T)等の原子核を融合させ、新しい原子核を生み出すことにより、莫大なエネルギーを発生させることが出来ます。 核融合の原料は海水です。ほぼ無尽蔵であるこの資源を使うことにより、核融合では海水1リットルで、石油約70〜80リットルに匹敵するエネルギーを生み出すことが出来ます。

核融合プラズマ

 原子核を融合させ核融合を引き起こさせるためには、一億度K以上の温度が必要となります。その温度では物質はイオンと電子に分かれ、「電離気体」、いわゆる プラズマという状態になります。しかし、一億度もの高温になると、そのプラズマを閉じ込めておくことのできる「入れ物」が存在しなくなり、プラズマを安定して 存在させることが出来なくなります。核融合を起こすためにはプラズマを極めて安定した空間に閉じ込めておく必要があります。そこでそのプラズマを閉じ込める方法として 現在様々な方法が研究されていますが、そのうちの一つに超伝導を用いたものがあります。
 超伝導は金属などの物質の温度を下げていき、ある温度(かなり低温、物質によっては絶対零度付近)に達すると電気抵抗がゼロになるという現象です。 この超伝導現象を利用し、大電流を流すことにより超強磁界を発生させ、その磁場によりプラズマを閉じ込めようというのです。そして、その閉じ込められた 気体(もしくはプラズマ)に一斉にレーザーを照射することにより一億度K以上に温度を上げようというのです。

核融合の安全性

 核融合は、その発生する莫大なエネルギーから「非常に危険である」と思われがちです。現在地球上で最も大きなエネルギーを発生させられるものは原子力発電所 等でおなじみの核分裂です。これは、ウランやプルトニウムという核燃料といわれる物質に、高速な中性子をぶつけることにより原子核を分裂させることで起こります。 核分裂の最も恐ろしいことは連鎖による反応です。中性子がぶつかり分裂した原子核からは新たに中性子が放出され、核分裂がどんどん広がっていきます。
 原子力発電所などでコンピュータシステム等が破壊され、核分裂の連鎖反応が暴走しだすと、それを止める術はありません。原爆以上の爆発と大量の放射能により まさしく「死の大地」となってしまうでしょう。しかし、核融合ではこういったことは物理的に起こりえません。核融合は発生の前提として、「きわめて安定した空間」 の中で「温度を一億度以上にする」という条件を満たさなければなりません。この条件を満たすことがあまりにも難しいため、今日でも様々な研究がなされているわけです。 仮に核融合反応時にシステムが異常をきたし暴走したとしても、その時は「きわめて安定した空間」というものがシステムの暴走により失われ、温度も急速に下がるため 核融合は自然に止まります。

少ない放射性廃棄物

 核融合反応により放射能を帯びた中性子が発生し、周囲の壁などを放射化します。これを誘導放射能といいます。これを防ぐためには炉等の材料を適切に選ばなくてはなりませんが 核分裂反応のような長寿命の高レベル放射性廃棄物は発生しません。また、二酸化炭素のような温室効果ガスも発生しないため、実は環境にもやさしいのです。
 しかし、核融合以外にもその過程で用いる超伝導から発生する超強磁界が人や環境へ与える影響や、大出力レーザー装置にかかる巨額の費用などクリアしなければならない課題が 山のようにあると聞きます。研究者ってすごいですね。私には到底向いてなさそうです(−.−)。
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