HARDCORE SUPERSTAR "no regrets" 2003
“完全メジャー志向”

 HARDCORE SUPERSTAR(以下、HCSS)のメジャー3枚目となるアルバム。
 HCSSは「もう完全にメジャー志向なんだな。」と思ったのが、や。の第一印象。

 HCSSは、荒々しいロケンローを身上としたサウンドをデビュー時から鳴らしていたため、いわゆる「北欧爆走ロケンロール」にカテゴライズされる。
 「北欧爆走ロケンロール」とは、要は、激しいまでに爆走する演奏、ヨーロッパ特有の“哀”のメロディーが乗るロケンロールことである。この類の音楽は、もともと“哀”のメロディーが好きであった日本でも大いに受け入れられた。バックヤード・ベイビーズ、ヘラコプターズの大成功を見ても明らかである。
 
 HCSSはそのカテゴライズされたバンドの中でも、もっとも“哀”を発散したメロディー、曲を提供してくれた。

 では、この“NO REGRETS”はどうだろう。


 確かに、デビュー・アルバム「BAD SNEAKERS AND A PINA COLADA」にあったような強烈な“哀”を発散していた名曲と同じような曲は、このアルバムには少ない。しかし、なぜだろう。やはり「いいバンドだ。」と思わせる何かがある。

 確かに、これまでのHCSSのファンが大手をふってこのアルバムを歓迎する、ということはないかもしれない。だって、“哀”のメロディーが明らかに減ってるんだ。その代わり、「メジャーの香り」がする曲が増えている。普通にラジオでかかってきても「あ、いいバンドだね。最近デビューしたの?」と思ってしまうかもしれない。それだけ、デビュー当時とは様変わりしたサウンドになっている。ま、デビュー当時のサウンドを維持しつづけているバンドの方が珍しい。デビュー当時とサウンドを変えてしまうことから、失速してしまうバンドも多いが、多くの成功を収めたバンドは、「核」となるものは変化しなくても、そのサウンドは多様に変化して変貌をとげている。エアロスミスしかし、アイアン・メイデンしかり、ジュダース・プリーストしかし、ボン・ジョヴィしかし、である。

 さてさて、くりかえし「メジャー志向」となったと、や。は書いているが、所詮、や。はしがない学生だから、正しい「メジャー志向」の定義から外れた考えでモノを考えてるにすぎない(爆死)。なので、ここで、や。の考える「HCSSのメジャー志向」いわゆる“NO REGRETS”のサウンドが具体的にどういったものなのかについて、ちょろっと書きたい。

 まず、「北欧爆走ロケンロー」とは、アングラな音楽である。それはかつての、デス/スラッシュ・メタルが、かつてアングラな音楽であったのと同様だ(そして、もうデス/スラッシュ・メタルはメジャーなものとなった。B!誌でアーク・エナミーがファン投票でTOPになることから、少なくともHR/HM界では動かし難い事実である。)。

 で、前作「THANK YOU」から、や。は感じていたが、もうHCSSは「北欧爆走ロケンロー」にカテゴライズできないな、ということが、本作で確信に至った。だってポップなんだもん。HCSSの今のサウンドを聴けば、やはり「北欧爆走ロケンロー」という音楽が、どことなくアングラで埃っぽい匂いも感じてしまう。
 ポップになった、とは幅のある解釈ができるが、まず、かつてのような荒々しいサウンドはナリを潜めた。そして、普通にラジオでポップ・ロックとして流れてもおかしくないサウンドになったと思うのだ。THE ATARISあたりと並べてラジオで流れても、さして違和感はないだろう(言い過ぎ?)。これが「BAD〜」のころの曲であれば、そうはいくまい。とにかく、以上のことからして、や。は、「HCSSはメジャー化した。」と言うわけである。
 強烈な“哀”を荒々しいサウンドに乗せた曲は影をひそめたものの、その“哀”メロは未だ健在だ。それはシングル“HONEY TONGUE”でもレビューしたように、#5,#13はHCSSのこれまでのサウンドの延長線上にある名曲だ。で、や。の心をとらえたのは“飴玉胸キュン哀愁ポップ曲♪”の#4だ。こりゃいい♪そんじょそこいらのアイドル・バンドもビックリの飴玉ポップだ。ちなみ「飴玉」という表現はRAMONESのVoを表現する時も使われる表現なので、「変なの〜」とか言って、笑っちゃいけないぞっ☆(←誰も笑わねぇよ

 ところで、「ポップになった」とか、「メジャー志向になった」とか言っても、HCSSのサウンドのパワーが落ちたわけでは、決して、ない。確かに、かつてのサウンドに比べれば、それぞれ楽器の音は隙間のある音になってるが、その分、バンド・アンサンブル、つまりはメンバーの演奏が上手く噛み合って、良いグルーヴを生み出している。

 とにかく、HCSSは変貌を遂げた。これがHCSSの今後の「顔」となるアルバムになるかもしれない。それは「BAD〜」との時代の二分化することになろう。以前のファンの中にはHCSSから離れるであろう。しかし、確実に新たなファンを獲得しうるアルバムである。


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