殿の新譜?“NUCLEAR COWBOY”?クールなタイトルじゃねーか。

 もう聴いたかって?ちっちっち。わかっちゃいねーな。俺をどこの誰だと思ってんだよ。ふん、俺はよう…。

 てな、無意味な前フリは、どうでもよくて、僭越ながらも、私やっち。が、全曲紹介(ただの感想文ですが…)をしたいと思います。

@INTRO
AWE WILL


 いきなりへヴィなリフで始まる。シリアス&スリリングでなかなか良いカンジ。殿のVoもクールなカンジで○。曲全体は暗い、というよりもクールかつ、BLUE MURDERの1stのような緊張感の張り詰めた雰囲気がする。
 いよいよ待ちに待ったGソロ。渋く短くまとめているが、やはり、もっと聴きたいなぁ。こんな欲求不満はファンならば随分と長い間感じているのではないだろうか?殿には曲を練れば練るほど良くすることができる才能があるのだから、頑張って欲しいところなのだが。。。

 曲全体に色々な効果音、サンプリングが入ってたりするけど、うまく曲の雰囲気を引き立てている。イントロから曲の最後までうまく演出してる。

BNUCLEAR COWBOY

 もうタイトルトラック。
 これまたヘヴィなリフで始まる。まるでPRONGみたいだ!
 Voは静かに始まるが、押さえ込んでいたものが段々こみ上げてきて、一気に爆発!して、ヘヴィなリフに突入する。縦ノリ!グルーヴィー!頭振れ!といったカンジだ。

 ソロはキレた(!?)カンジ。ファズってる。やっぱりもっと聴きてーよー!と思ってしまう。

 確かにPRONGみたいなモダンなヘヴィさがあるけど、途中途中に殿のいつもの声があるから、そんなに重さは感じない。

CARC ANGEL

 今度はダンス・ミュージックっぽい曲。
 アルバムを通して、デジタル&ヘヴィな曲調の中で、ポップかつキャッチ−、爽快で、スカッとするような曲。ん!?BLUE MURDERの2ndの“DANCE”に似てるかも!?
 リフはヘヴィ、かつシャープ。これはやはりギターがブラック・ビューティーだからか?

 曲の終わりの方もオシャレで、垢抜けたカンジがする。

DNOTHING MEANS NOTHING

 BLUE MURDERの2ndやSYKESの「OUT OF MY TREE」っぽい。ブリティッシュなカンジ。アップテンポだけど、速くない曲。
 中間部のGソロは前作の「20th CENTURY」ぽい(汗)。これまた短すぎる(泣)。
 曲終盤のGソロはライブのときの殿みたいな、弾きまくり!!ライブ録音か?

ETALKING ‘BOUT LOVE

 ミドルテンポのパワー・バラード。
 なかなかムードある歌い出しで、デイビッド・カヴァデールを意識しているかのよう。やはり「LOVE LAND」でヴォーカルとして成長したのだろう。


 余談だが、音楽関係者の中では依然として殿に再びデイビッド・カヴァデールと組むことを望んでいる人がいるようだ。ファンとしてはどうなのだろう?ファンは案外、「殿の好きにやったらいいんだよ。」と見る人が多いのかもしれない。
 この二人の素晴らしい才能が再び重なり合うことがあるのだろうか・・・。


 さて、中間部のストリングスも効果的だ。モダン・ミュージックとの融合が素晴らしい。
 しかし、Gは‘80年代スタイルそのままのバッキングだから、これまた素晴らしい。

FONE WAY SYSTEM
 おお、来た来たってカンジのスピード・チューン。前作「20th CENTURY」を彷彿とさせる、ロック・チューン。この曲はあんまりデジタル色が濃くない。前作に入っていても違和感ゼロだろう。
 中間部でのVoの畳み掛けもcool。

GINTERLUDE “ALL GOOD PEOPLE”
HDEGRADED


 これは今っぽい(?)始まり方。なんか面白いイントロ。
 緩急のコントラストでぐいぐいと聴く者を引き込んでくるような迫力のある曲だ。
 この曲のGソロの始まり方は今まではあんまり無かった感じで、曲の雰囲気をそのまま引っ張っていって、それで早弾きでキメル!って感じだ。

ISICK

 不思議かつ怪しいイントロで始まる。今っぽいヴォーカル(ヒップ・ホップっていうのかい?)で始まる。

 この曲のGソロがまたシブイ。ブルースゥゥゥッッ!!とろけそうだ!!!

 曲の最後はオルゴールのサンプリングが入ってる。アルバム全体を通して緩急をつけようっていう意図が良くわかる。

JI WISH IT WOULD RAIN

 全体としてデジタル&ヘヴィな雰囲気でありながら、それに似合わないような、心に染みるホッとするようなバラード。アルバムの中で浮いてしまっているといえばそれまでだが、やはりファンは殿にこういうバラードを期待しているし、そういったファンの期待を心得ている殿もサスガである。
 曲調はやっぱ「LOVE LANDに入っていてもおかしくない曲」というカンジ。

 この曲はここ最近の殿の曲とは違って、Gソロの泣き、メロディーがイイ!!素晴らしいっ!!!これだよ!これ!これを待ってたんだよ!!このむせび泣くギター!!ああ、もう終わってしまう。短い。もっと聴かせておくれよぅ(号泣)。

 曲全体としては、スケールの大きなバラードに仕上がってる。殿のVoが◎。

KRAINING THE DEVIL

 トリの曲。もちろんこのアルバムのトリなんだから、デジタル、リズム、‘80年代G、殿のVo、これがうまく融合した曲じゃないとね。

 イントロはこのアルバムの顔とも言える攻撃的なリフ&Vo。
 モダンになることで、よりHMらしい硬質な歌い方に近づいたとも言えるだろうか。
 ソロはお約束通り、弾きまくり!ちょっと小技も利かせてピロピロ弾いてる。
 
 曲の終盤は、2000年版「SOUL STEELER」か!それを彷彿とさせるエンディング。大きなエネルギーの塊が、エネルギーを吸収しつつ、発散し、全てを破壊していくような、そんな迫力を感じる。






<アルバム全体の感想>
 「デジタル&ヘヴィ」というのは殿のこれまでになかった方向性であった。殿の今回の方向性は90年代に多くのHR/HMバンドがグランジ・オルタナティブのブームに流されて、いっせいにただヘヴィになったという短絡的な流れとは無関係であろう。なぜならこの新しい方向性のアルバムの中でも殿はその持ち味を全く損なうことなく、素晴らしいメロディーを創り上げたからである。
 しかし、このアルバムは一般受けしないであろうし、万人に薦められるアルバムではない。いや、残念なことにHR/HMファンの多くにも受けは良くないであろう。
 思うに、やはりまだギターリフ、ソロ、曲構成の“練り”が足りない、と言わざるを得ない。やはりTHIN LIZZY、WHITE SNAKE、BLUE MURDERの1stのようなHR/HM特有の構築美を殿は自身の作曲に呼び戻さねばならない。
 はやく殿はHR/HM界を揺るがすようなアルバムを創らなければならない。期待しているファンがいる。ファンが「温かく見守っている」間に、そのファンすらも殿に期待しなくなってしまう前に。