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日曜地学ハイキング記録


春浅き山中に白亜の地をたずねて


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1 関東山地の地質の概説 

2 山中地溝帯  

3 白亜系の各層の特徴 









1 関東山地の地質の概説 

 関東山地は関東平野の西をかぎってそびえている山地で、群馬、埼玉、東京、長野、山梨の5都県にまたがっています。日本にはあちこちに火山がみられますが、関東山地では火山は一つもありません。火山がないことは関東山地の特徴の一つといえるでしょう。
 関東山地を上空からみたとすると、東西、南北方向とも約75kmの正方形に近い形をしています。そして、まわりの地域とは断層で限られており、この断層に沿って隆起したので、周囲の地域よりも高くなっているのです。これらの断層のうち、関東山地の北側をかぎる断層は中央構造線に相当すると考えられています。
 ところで、関東山地をつくっている地層や岩石についての研究は、19世紀末頃からなされていて、種類や構造および生成年代が同じ地層や岩石が、北西−南東方向にのびた、帯状に連なっていることがわかっています。このような状態を帯状構造と言います。この帯状構造は、西日本の九州−四国−紀伊半島−赤石山地にかけてみられる帯状構造とそっくりで、もともとつながっていたものが、現在では関東山地だけが離れていると考えられます。
 この帯状構造は、九州から関東山地まで共通の名称でよばれ、北側から南側へ、三波川帯、秩父帯および四方十帯と名づけられています。

 三波川帯 
 おもに結晶片岩が分布します。南線部には火成岩起源の、塊状で緑色の岩石がみられることが多く、御荷鉾緑色岩類とよばれています。これらの名称は、群馬県内の地名に由来しており、三波川は神流川の支流名、御荷鉾は御荷鉾山からとられたものです。この地帯の岩石は変成岩で、南側の秩父帯と同年代(ジュラ紀)に海中に生成した堆積岩が原岩であると考えられています。そして、地下の圧力6〜7kb(lkb=1×106hP=約1×103atm)、温度200〜300℃の条件で変成岩になったと考えられています。また、変成岩になったのは白亜紀前期頃と推定されています。

 秩父帯 
 石灰岩、チャート、泥岩、塩基性溶岩などが多く、いずれも海底で生成したものです。これらの岩石の相互関係や、含まれている化石からみて、ジュラ紀の海底でおもに泥質堆積物ができているときに、古生代後期(石炭妃〜二畳紀)の石灰岩や、三畳紀のチャートの岩塊がまざりこんだと考えられています。どうしてこんなことが起こったのでしょうか? 石灰岩やチャートは、もともとは日本からはるかはなれた南方の海底で堆積したもので、海底がしだいに日本の方へ移動して来て、ジュラ紀に日本付近で堆積した泥質堆積物とまじりあった、という意見が強いのが現状です。


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2 山中地溝帯 

 秩父帯の中ほどにみられる、周囲の山々から少しくぼんだ幅2〜4km、延長約40kmの地溝状の地帯で、長野、群馬、埼玉の3県にわたっています。その名称は、この地帯のかなりの部分が神流川ぞいにみられることと、群馬県万場町より奥の神流川流域が、かつて山中谷とか山中領とかよばれたことによります。ただし、この地帯が定義どうりの地溝ではないことから、山中地域とも言われます。
 埼玉県では、北側は二子山、白石山などの山々、南側は両神山につらなる山々にはさまれて、志賀坂峠から東方へ、主として赤平川ぞいの凹地に分布しています。志賀坂峠に立って東方をみると、この地溝状の地形がとてもよくわかります。
 この地帯は白亜紀の暖かい海の堆積物(泥岩、砂岩、磯岩)からできています。古くから、貝類やアンモナイト、植物(ソテツ類、シダ類)などの化石が知られていましたが、最近、恐竜の足跡や骨の化石が発見されて、話題になった地域です。

 山中地溝帯の白亜系は、全体として向斜構造を示し、南側と北側により古い地層が分布する傾向があります。南北両側の秩父帯の先白亜系(白亜紀より前の地層)とは断層(断層面は垂直に近い場合が多い)で接していることが多いのですが、不整合の場合もあります。東端では、秩父盆地の新第三系に不整合でおおわれています。その状態は、小鹿野町大木の赤平川左岸でよく観察でき、大木不整合とよばれています。
 山中地溝帯は日本の白亜系の模式地の一つであり、古くから研究されています。層序区分については、対比表のようにさまざまな見解があります。研究者ごとに、層序区分や年代だけでなく、各層の境界や各層の同定についても意見が異なるため、具体的な地質図や、地質構造の解釈の詳細は、さまざまです。

 この地帯の地層が堆積したころ(約4000万年間)は、山中地溝帯の北線付近が海岸線で、北側には陸地、南側には海が続いていたと考えられています。北側の陸地は、ジュラ紀に海底であった地域が隆起して陸になったものです。秩父帯の先白亜系は地表にあらわれていましたが、三波川帯の岩石はまだ地下にあった可能性が強そうです。南側の海では、山中地溝帯のすぐ南に島などがみられたことも、とくに初期の頃にはあったようです。


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3 白亜系の各層の特徴

 各層の特徴などを簡単に述べます。層序区分はTakei(1985)にもとづくことにします。それによると白亜系は北列、中列および南列の、たがいに断層でかぎられる地帯にわけられ、各列で層相などが異なっています。

 (1)石堂層 
 泥質の塊状細粒砂岩が特徴的です。暗灰色で、すこし紫色を帯びています。基底部に砂岩〜礫岩層があり、礫岩の礫はチャートが大部分です。中列では黒色泥岩が大部分を占めます。
 山中地溝帯白亜系のなかでは、もっとも化石の多い地層です。  層相と化石からみて、北列および南列の石堂層は海岸付近の堆積物、中列の石堂層は沖合いの堆積物と考えられます。

 (2)瀬林層 
 砂岩層が特徴的です。30〜100cmおきに、10cm以下の泥岩をはさみます。北列の砂岩は中粒ですが、中列では中粒〜粗粒で、級化成層を示すのが特徴的です。底痕がしばしばみられます。それらにもとづき、地層の上下を判定することができます。
 層相と化石からみて、北列の瀬林層は沿岸性〜潟性の堆積物、中列の瀬林層は沖合いの波浪限界以深の堆積物と考えられます。
 漣痕と恐竜化石--瀬林層の模式地である瀬林は、漣痕と恐竜で有名です。
 潮林の八幡沢人口の100mほど南の道路はたの砂岩の大きな崖に、大きな舌の形をした模様が一面についています。これは漣痕の一種で、舌状漣痕と言われるものです。漣痕という文字は、さざなみのあと、という意味です。しかし波とはかぎらず、水流も含めた水の運動によって水底にできる、波状の模様をいいます。漣痕から当時の水深を推定することは、一般的にはむずかしいことです。しかし舌状漣痕については、ひじょうに浅い(水深数cm程度の)水底で生成されると言われています。つまり、この垂直にちかい崖面は、かってはほぼ水平な地表面で、水も流れていた、ということです。
 付近には、植物化石が含まれていたり、シジミ類などの汽水(海水と淡水の中間の塩分量を含む水)生の貝化石を含んでいる部分もあります。地層の性質などもあわせて考えると、この付近にはかって河口があり、川で運ばれてきた砂や泥でできた三角州(デルタ)地域だったと推定されます。
 崖面をよくみると、漣痕のほかにもいろいろな模様がみられます。細くて、曲がりくねったり技分かれしたりしている、みみずばれ状や溝状の模様は、水底を小さな生物がはいまわった跡と思われます。また、雨痕ではないかと言われている小さなくぼみもたくさんあります。
 崖面の中ほどより少し上に、横方向にっらなる大きな穴が4個みられますが、これは恐竜の足跡と思われます。崖の下から右斜め上方にっらなっているいくつかの模様も、別種の恐竜の足跡とされています。
 この付近の山林では、ダチョウ型恐竜の仲間の椎骨が発見されており、サンチュウリュウと名づけられています。
 陸地にはソテツ類やシダ類が生い茂り、恐竜が河口付近に出没した当時の状況を思い浮かべてみてください。

 (3)下部三山層 
 細粒砂岩と泥岩が、各5〜15cm単位で互層するのが一般的です。
 厚い粗粒砂岩〜礫岩層を伴うことがあり、それらはとくに下位層準に多い傾向があります。砂岩には、底痕がしばしばみられます。礫岩には、花岡岩類をはじめ、火成岩その他、礫種が多いのが特徴です。
 層相や化石からみて、下部三山層は海岸近くから沖合いにわたる堆積物と考えられます。
 花崗岩礫を含む礫岩−−下部三山層には、礫の種類が多いことや、現在は周囲の山々に見あたらない礫を含むことで、たいへんめだつ礫岩があります。瀬林の南で高圧線の下にみられる礫岩はその一つです。礫種としては、テャ一ト、石灰岩、粘板岩、砂岩、礫岩などのほかに、現在では周囲の山々には見あたらない花崗岩類、花崗斑岩、安山岩、ホルンフェルス、酸性凝灰岩などがみられます。そのなかには、花崗岩類のように、途中でくずれて細かくなりやすく遠くまで運ばれにくいような岩石もあり、しかも20cmからそれ以上という大きなものさえあります。したがって、あまり遠くないところから運ばれてきた礫が多いと考えられます。
 当時、北側の陸地にこのような岩石が露出していたことは確かですが、それがどのあたりであったのかは重要な問題で、一つには古領家帯(三波川帯の北側にかって存在した地帯)である可能性がつよそうです。

 (4)上部三山層 
 塊状の泥岩が特徴的です。基底部には粗粒砂岩層があり、この砂岩には黒雲母片がめだつのが特徴的です。砂岩層には級化成層や底痕がみられます。
上部三山層は、層相や化石からみて、全体として波浪限界以深の堆積物と考えられます。

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