第319回 日曜地学ハイキング記録

日曜地学ハイキング記録

身近な湧水と井戸を調べよう

−−武蔵野台地の地質と地下水−−

第319回日曜地学ハイキングを平成10年6月21日に実施しました。

東武東上線 鶴瀬駅 改札前 午前10時集合

井戸の水位調査や湧水調査をしました。
今回の見学コースの概要
@ 武蔵野台地から湧き出す湧水
A 武蔵野台地の井戸の見学
B 簡単な道具を使っての地下水位の調査

日 程;10;30〜11;30 鶴瀬公民館にて周辺の地質の説明と測定道具の製作
     12;40〜13;10 崖線下の露頭 礫層の観察と湧水の流量や水質測定
     13;30〜14;10 氷川神社下の湧泉 地形と湧出状況観察 流量や水質測定
     14;20〜15;00 氷川神社付近の民家井戸2ケ所 水位測定と水質測定
     15;40〜16;00 鶴瀬公民館にてまとめ

持ち物;弁当、雨具、巻尺、カッター、マジック、筆記用具、画板
参加費;100円(保険代、資料代)
案 内;末永 和幸(応用地質研究会)、倉川 博(飯能高校)、松井 正和(富士見高校)




 井戸や湧泉の水位や水質を調べることによって、地下水の動きや地下の環境の状態を知る手がかりになりました。井戸や湧泉が周囲の地層と関係して地下で水の循環系を作りながら流れている様子が実感できました。地下水を守るといった場合、その井戸や湧泉の周囲だけではなく広い範囲の地下の地層構造と地表の雨水の浸透作用が影響していることがわかり、水質を保全するには周囲の広い範囲の自然環境を守らなければならないこともわかりました。
 井戸の水位を図る水位計も簡単に作れ、ビニール袋で流量が簡単に計れることもわかり、参加者それぞれが住まいの周囲で井戸や湧泉の調査が実践できることも知りました。皆さんも、住まいの周囲で井戸や湧泉の調査をやってみませんか。

1.井戸の水位計の製作と水位の観察

2.鶴瀬駅周辺の地形と地質

3.地層と地下水


   

井戸の水位計の製作と水位の観察

 フィルムケースとひもを使って簡単な水位計を作りました。ひもを垂らしていくと、急に重さを感じなくなります。水の入ったフィルムケースが井戸の水面に着いたことがわかります。ひもの長さを測ることにより水位が測定できます。但し、井戸枠の高さを加える必要があります。電池や豆球あるいはブザーを使って水位計を作ることも出来るそうです。トライしてみてください。、
    簡単な水位計の作り方
    1.フィルムのケースとひもを用意する
    2.フィルムのふたに穴をあける
    3.あけた穴にひもをとおす
    4.ひもが抜けないよう、裏側で結び目をつくる
    5.マジックでフィルムケースの中程に線をひく
    6.ふたをして、ひもに目盛りをつける
    7.線の位置までケースの中に水をいれて出来上がり
 測定した水位を他の井戸の水位と比較したり、湧泉の高度と比較をします。井戸の標高は井戸ごとに違っているので、井戸の標高から測定した水位を差し引きました。標高は地形図にある標高点の高さを読みとり、標高点と井戸の高さを比較して、読みとりました。井戸の水位は、地下水を含む地層の高さを示すことがわかりました。


鶴瀬駅周辺の地形と地質

 富士見市周辺の地形は、標高7〜10mの「荒川低地」と標高20〜40mの「武蔵野台地」の2段に区分できます。右の図は武蔵野台地から荒川低地にかけての断面図で、水位計を作成した鶴瀬公民館は台地上にあります。その下は東武東上線に沿った断面図です。台地も単なる平坦地ではなく、河川によって小さな谷が刻まれています。
 台地は関東ローム層と呼ばれる赤土(火山灰)に覆われていますが、その下には武蔵野礫層と呼ばれる5〜10万年前に河川(昔の多摩川)によって運ばれてきた石(礫)からなる地層があります。武蔵野台地の平坦面は、当時の河原の平坦面でその上に火山灰が降り積もったものです。それが段丘として残っていることから段丘面といいます。
 武蔵野台地には何段かの段丘面があり、低い面から立川面、武蔵野面、下末吉面、多摩面と名付けられています。降り積もった火山灰から、それぞれ2〜3万年前、3〜6万年前、6〜15万年前、25〜40万年前と推定されています。武蔵野礫層の下には、貝化石を含む主に粘土や砂、シルト(粘土と砂の中間粒度の砕屑粒子)からできた地層があります。この地層は東京層と呼ばれるもので15〜25万年前に海底や湖底にたまったもので、水を通しにくい地層です。
 荒川低地は、今から2万年前にピークを迎えた最終氷河期に河川に浸食されてできた谷の面(河川の氾濫面)を埋め立てている柔らかい地層です。新生代第4紀沖積世(現在の時代)にできたことから沖積層と呼ばれます。低地は、非常に傾斜がゆるく(2〜3km行って高度差が100mくらい)川は蛇行し、大雨が降ると氾濫を繰り返してきました。
 低地は水田として利用されていましたが、台地は畑として利用されてきました。


地層と地下水

 地下水は、地下にあるといっても地表を流れる水と同じように、より低いところに向かって流れやすい場所を選んで動き回っています。流れやすさは、地下の地層の状況によって決まってきます。右の図は武蔵野台地の典型的な地質断面と地下水、井戸、湧泉の関係です。地下水は礫や砂の層の中に含まれていますが、粘土のような層を通り抜けることはなかなかできません。このような地下水が通り抜けにくい地層を「難透水層」といいます。崖のどのあたりにどんな地層があるかによって、湧泉の位置が決まってきたり、地下のどの深さにどの地層があるかによって井戸を掘る深さも決まってきます。



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