日曜地学ハイキング記録


夏の秩父盆地で河原の石と化石採集





第341回日曜地学ハイキングを西暦2000年8月20日に実施しました。

 今回おとずれるた秩父市蓼沼は化石産地として有名なところで、地ハイでもこれまでに何度もきています(最近では、96.10.27.第302回)。さらに、10月に発行予定の新版「日曜の地学〜埼玉の自然をたずねて〜」(築地書館)でも紹介されている場所です。今回の見学地である、秩父市黒谷〜蓼沼周辺には、今から約1500万年前(新生代新第三紀)の地層が分布していて、それを荒川・横瀬川の流域でみることができます。今日はその新第三紀層の観察と化石採集、新第三紀のれき岩中のレキと現在の川原のレキとの比較、さらに荒川と横瀬川のレキの比較、などを行いました。
 レキの観察では、昨年出版された「地学ハンドブック・川原の右の調べ方〜荒川の石〜」を使いました。
 最近は『秩父』というと、50万年前とか、35万年前のことが騒がれていますが、もっと古い時代にもたくさん興味深いことがありました。地層の石をたたき、化石をさがしながら、はるか昔の秩父のようすに思いをはせてみました。


今回の見学コースの概要は次の通りです。

日時:8月20曰(日) 10:00  
集合:秩父鉄道「黒谷」駅   解散:「黒谷」駅 16:00頃
みどころ @荒川と横瀬川の合流地点で「河原の石」の観察
      A秩父盆地を埋めた「新第三紀の地層」(砂岩礫岩互層)
      B秩父盆地に見られる「いろいろな種類の化石」
コース:秩父鉄道黒谷駅→和銅大橋上流の川原→下小川橋下の川原→
    蓼沼→黒谷駅
主 催:地学団体研究会埼玉支部、日曜地学の会
案 内:岡野裕一(飯能高校)、橋屋功(伊奈学園高校)、力田正一(早稲田大学)
     松本昭二(所沢市在住)
地形図 国土地理院1/25,000「皆野」
持ち物:弁当、水筒、ハンマー、筆記用具、定規、新聞紙
参加費:100円(保険代・資料代・諸経費)


今回は案内者のご厚意により案内パンフをもってハイキング記録といたします。
ホームページ作成者は参加していません。ごめんなさい。


秩父盆地の地質

 秩父盆地には、今から約1700〜1400万年前(新生代新第三紀)の地層が分布していて、全体での厚さは約5000mにもなります。主に、砂岩・泥岩・れき岩からなり、一部に凝灰岩層もはさまれています。地層の走向は、盆地の西部と北東端で南北方向、中央部から北部では東西方向で、全体としては逆S字型、Z字型の構造です。
 多くの化石が含まれることなどから、秩父盆地の第三紀層はこれまでにたくさんの研究者によって調べられてきました。層序区分もいろいろなものがだされていますが、よく使われているのは1960年の新井・菅野(英文)のものです。それによると、秩父盆地の新第三紀層は下位より、彦久保層群、小鹿野町層群、秩父町層群に区分されています。今回の見学地周辺には、秩父町層群の奈倉層と鷺の巣層が分布しています。

第1ポイント 和銅大橋上流の川原

 和銅大橋を渡り終えたところから上流方向へ、川原におりる道を下ります。はじめは少しヤブがありますが、歩きやすい道です。
 ここの川原では、さっそく(地ハイ恒例の?)レキ調査を行います。昨年出版された「地学ハンドブック・川原の石のしらべ方−荒川の石−」を使って、班に分かれてどんな種類の石(レキ種)があるか、調べてみました。
 今回調べた場所は、ちょうど荒川と横瀬川の合流点にあたります。荒川のレキと横瀬川のレキのまざる部分になりますので、川に沿う方向で上流から下流へのレキ種の変化を調べてみました。
調査をした川原の対岸には、この付近に分布する新第三紀層がみられます。
 「地学ハンドブック・川原の石のしらべ方−荒川の石−」には、荒川沿いのレキ調査の結果がのっています(p 29)。荒川の川原のレキの傾向がわかります。ちょうどこの橋の下流約250mのところでのレキ調査のデータもあります。
 なお、ころがっている石をいくつか集めて持ち帰れば、レキの標本板をつくることもできます。


第2ポイント 下小川橋下の川原

 橋を渡り終えたところから川原におりる道(階段)があります。ここでは、今から約1500 万年前の地層(新第三紀層)が観察できます。砂岩と、それにはさまれる何枚かのれき岩層がみられます。砂岩とはいっても、砂の粒の細かい層、粗い層、小さなレキをふくんでいる層があり、互層状になっています。
 この付近に分布する新第三紀層は、秩父町層群の中の鷺の巣層とよばれている地層です。このあたりの鷺の巣層は粒の粗い砂岩やれき岩ですが、ここより南西の盆地中央部では、砂岩・泥岩の互層になっています。さらにその南西部の盆地の南縁に近い部分では、またれき岩や粒の粗い砂岩になります。黒谷付近も盆地の東の縁の部分ですので、そのようなところでは全体に粗い岩相になるようです。
 ここでは、横瀬川の川原のレキと地層中のれき岩のレキに注目して観察します。まず、ここの川原にもレキがたくさんころがっていますので、横瀬川のレキの特徴を鶴認します。そして、荒川のレキと比べてみます。ここの川原にはころがっていて荒川ではみられなかったものがあります。また、川原の石を地層中のれき岩のレキとも比べてみます。
 次に、ここのれき岩のレキがどこからきたのか(レキの供給源といいます)を考えてみました。それを考えることによって、当時(今から約1500万年前頃)のようす(古地理)を推測することができます。このように、地層の特徴からはるか昔のようすを想像してみるのは、地学の楽しいところです。



第3ポイント 蓼沼の川原

 田畑や雑木林の中を歩いて急坂を下ると、蓼沼川原の北の端につきます。この付近の荒川岸は、広く地層が露出しています。ここに露出している地層は、鷺ノ巣層の下位の奈倉層です。川原におりたら地層を観察しながら上流(南西)へ進みます。地層が見えはじめるところでは、レキをふくむ砂岩と泥岩の互層が見られます。地層の走向傾斜を測ってみました。
 地層を観察すると、太さが1〜2cmの生痕化石(生物が地層中につくった生活の跡などが残っているもの)がたくさんあり、生物によって地層がかき乱されていることが分かります。地層面に平行なものでは、ビーコニテス、規則的に枝分かれしたコンドリテスなどがあります。地層面に垂直なものでは、棒状のスコリトスとJ字型をしたプシロイクヌスがあります。地層面に垂直なものはカニ類の奥穴によく似ています。
 上流へ進んでいくと、灰色の砂質泥岩になります。この泥岩には1cmくらいの小さな貝化石がふくまれます。また、厚さ80cmくらいの緑灰色をした粘土質凝灰岩が2枚はさまれます。
 さらに上流に歩くと、少し緑がかった灰色の細粒砂岩が露出しています。この地層の中からは、パレオパラドキシア・クジラ・ウミガメ・海鳥などが発見されており、貝やカニ、サメの歯、魚のうろこもたくさん採集されています。
地層をよく見ると、直径3cm位の竹輪状の泥の模様が多く含まれ、直径1cm位の白いパイプ状の模様が集まっているのも見られます。これらも生猿化石で、竹輪状の模様はロッセリア、パイプ状の模様はシャウプシリンドリクヌスと呼ばれています。
 化石は一定の地層に含まれる傾向があります。化石が1カ所でみつかったら、そこから地層の伸びている方向を捜すとみつけ易いです。また、地層ごとに同じ種類の化石が集中する傾向があります。これは、化石も、堆積物としての性質をもっているからです。広くさがして、地層の重なりかたと化石の関係を調べてみます。





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