エイリアン日記

雙六エクスタシー其ノ参 [2003年09月27日(土)]
彼女がデビュー当時から言っていたことの一つに「アルバム3枚作ったら椎名林檎は終わり」と言うニュアンスの言葉がある。そして3枚目のアルバムが出た。それが2003年上半期チキチキ1位の『加爾基 精液 栗ノ花』だ。いつチキチキしたんだ?と思った人はここの熱心な読者だろう(笑)。

普通はアルバム発売とタイミングを併せてツアーを行うのだろうが、何故か始まったのはラフォーレミュージアム原宿での椎名林檎博覧会「芽生えから実りまで」(通称「林檎博」)。数々の噂に包まれながらが全国ツアー「雙六エクスタシー」がスタートしたのは8月23日渋谷公会堂、果たしてこの後、椎名林檎はどこへ行くのか?その答を求める人でツアー最終日の日本武道館は満員の観客で埋め尽くされた。私が行ったLIVEでは初体験の北側開放の360度使用。立ち見席まであり13,000人を超える人が集まったらしい。

場内が明るいままSEが流れ、客電も落ちずにメンバーが登場する。そのままイントロが始まると場内がどっと沸く。オープニングは今ツアーでは一度も演っていない「幸福論(悦楽編)」だ。拡声器を持った林檎が飛び出してステージを右に左に駆け巡りながら叫ぶ。この1曲だけでもこの夜がスペシャルな日だと期待した。しかし、この後何が飛び出すか楽しみ!とわくわくしたのはこの後数曲までだった。客電が落ちてからはツアー用セットが淡々と続く。何も変わらない何も足されていない通常セット。武道館では演奏されるか!?と期待した最新アルバムからの曲も無し。本編でオープニング以外に違っていたのは、「依存症」の前にメンバー紹介用のフィルムが上映されたことと、「とりこし苦労」の前にアカペラでナンバーガールの「Delayed Brain」をほんの少し披露したくらい。少し肩透かしをくらった。

と不満点が先行してしまったが、LIVEそのものはとても楽しめた。席もアリーナのステージ前ブロックだったし、音も武道館にしては良い方だったし、演奏は1ヶ月間のツアーをしてきたこともあって抜群に安定していた。特にギターの平間幹夫が見違えるほど良くなっていたのが大きい。

アンコールはこれまたアカペラの「白い花の咲く頃」(今ツアーでは台風の影響で機材が万全でなかった沖縄でのみ披露された)を1コーラスだけ歌って、その後はツアー用と同じ。そればかりかそれまでは2回目のアンコール用だった「おだいじに」まで続けて演奏してステージを降りてしまった。マイクをステージに叩き付けるように落としたのも気になる。

2度目のアンコールを求めて拍手が鳴り始めたと同時に場内のスクリーンに誰も座っていない椅子が映された。場内が一転静まりかえる。そこにステージを降りた林檎が座った。スタッフと話すようなそぶりで汗を拭いたり飲み物を飲む様子が流れる。何かコメントするのか?誰もが思っただろう。しかし画面は別のフィルムに切り替わる。デビュー時から今回のツアーまでの衣装を着たマネキンが並び、時の流れを表すかのように次々とそれを映して行く。次は彼女の写真が同じように流れていく。どれも「あの曲の頃だ!」とわかるほど印象深い顔。何故か特徴的な左頬のほくろの位置を固定して写真が流れている。最後に今の林檎の顔がアップで映し出された。彼女の左手がゆっくりと顔に近づきほくろに触る。次の瞬間彼女の左頬からほくろが消えていた。呆然とする場内。次に生の映像になった時は東京事変全員が黒のスーツに身を包んでいた。ステージに戻ってくる様子が見え場内が再び沸く。

林檎の誕生日である11月25日に発売される「りんごのうた」でLIVEは終了した。雙六エクスタシーツアーの終了でもあるし、大袈裟に言えば第一期椎名林檎時代の終了でもあるだろう。筋目シングルと銘打たれた次作にはc/wで「リンゴカタログ〜黒子時代再編纂〜」なるトラックも収録されるようだ。終演後のスクリーンには今まで発売された3枚のアルバムに収録された35曲の頭文字35文字を使用した詩が映し出された。

足掛け一歩よおやく修めど
すべき擬態や小遊びも
誠を欲しつ

今年1月の活動再開シングルとDVDで「私の名前を呼んでください」と始まったところから、林檎博のお土産のわざとほくろの上に黒いシールが貼られた写真、そして武道館、最後にシングル「りんごのうた」。全てが緻密に計画されていたことがわかる。いずれにせよ「椎名林檎ほくろ時代」が終わったことは確かだろう。35文字の詩はその時代の曲への決別なのか?新たな誓いなのか?まだ当分林檎の動きから目が離せない。

幸福論(悦楽編)
罪と罰
真夜中は純潔
ドツペルゲンガー
おこのみで
意識
すべりだい
黒いオルフェ
依存症
丸の内サディスティック
警告
Delayed Brain
とりこし苦労
港町十三番地
ポルターガイスト
ギブス
歌舞伎町の女王
本能
迷彩


白い花の咲く頃
ミスターワンダフル
正しい街
おだいじに

りんごのうた